4. 成長期に野球センスを向上させるための手法

4-1. 野球センスとは?

あなたが【野球センス】をひと言で表すとしたら、どんな表現になりますか?

野球のセンスには【調整能力】と【判断能力】が必要です。でも、センスは「持って生まれた才能」ではないことがわかってきました。

今回のレクチャーは、あなたのお子様が試合状況を的確に読み、迅速で正確な判断を下すことができる、お手伝いになるかもしれません。

まずは、日頃の練習で判断力を高められるように意識して、失敗を恐れずチャレンジしていきましょう。

パフォーマンスアップに必要な野球の能力の高め方

4-1-1. 野球センスの定義

野球センスとは、ひと言で表すと【調整能力】です。
以前のセクションでは、運動センスという点での【敏捷性】【巧緻性】【平衡性】それぞれの能力のお話をしました。

じつは、野球センスには、もうひとつ重要な要素がありますが、何だと思いますか?

それは、【判断する能力】です。

試合状況を読み、的確に判断をする能力であったり、直感力であったり、そして野球に関する知識が多い選手ほど、判断する能力は高いと言えます。

野球センスは、選手がグランドで、迅速かつ正確な判断を下すために不可欠です。

4-1-2. 野球センスが発揮される例

野球センスのある選手は、次に何が起こるかを察知して、瞬時に判断することができます。

例えば、野球センスのある外野手は、バットにボールが当たった音や、ボールの軌道、他の野手との位置関係などを瞬時に判断して、フライを正確に捕球することができます。
同様に、野球のセンスがある選手は、バッティングのときに球種を予測して、それに応じてスイングを調整することができます。
また、プレッシャーのかかる場面でも、冷静に判断することができます。

こういった野球センスを身につけるには、やはり、日頃の練習から判断することを意識して、それを繰り返すことが大切です。
もちろん、判断が間違っていても問題はありません。失敗から学ぶことは貴重な経験です。

失敗を恐れずにチャレンジできるように、お子様を励ましてあげましょう。

4-2. 成長期における野球センスの高め方

4-2-1. 状況認識の練習をする

野球は、一瞬の間に状況を判断しながら、根拠のある予測や判断が求められます。
ですから、経験値の低い選手が野球センスを高めるためには、状況判断の練習が必要です。そのとき、お子様には、失敗を恐れずにチャレンジできる環境を整えてあげましょう。

もちろん、チームの練習や試合だけでなくても、状況判断の練習は可能です。たとえば、テレビでプロ野球を観ながら、状況判断をしてみることも効果的だと思います。
お子様とゲーム感覚で楽しみながら、好きなチームの次の作戦を考えたりしてみましょう。

また、チームの練習では、試合形式の練習メニューも用意されているはずですね。
繰り返し状況判断の練習をすることで、野球センスを高めていきましょう。

ポイントは、失敗を恐れずに判断をすることです。

プロ野球選手であっても、ミスを繰り返すことから学び、センスを日々高めているのです。
つまり、成長期の子どもが、たくさんミスをすることは当然なんです。

周りの大人は、そのことを理解してサポートしていきましょう。

4-2-2. 試合映像を分析する

お子様と試合の映像を分析することでも、野球センスを高めることができます。

お子様の試合の映像を一緒に見ながら、プレーごとにお子様がどんな判断をしたのか聞いてみるのもいいでしょう。

ただし、失敗を責めるようなことはしないでください。

お子様と同じ目線になって、純粋にお子様がどのような判断をしたのかを聞きながら、次はどんなプレーをしたいのか、聞いてあげましょう。

自分の結果を見直すことで、お子様自身が改善点を見つけ、次の試合でより良い判断が下せるようにサポートしましょう。

仮に、お子様が試合に出られなかったとしても、試合の映像を一緒に見ながら、いくつかのプレーについて、お子様の考え方を聞いてみるとよいと思います。
それが、次へのステップになるはずです。

また、映像を見ながら相手の作戦のパターンや、傾向を把握することからも学ぶべき点は多いはずです。

4-2-3. 経験豊富なコーチから学ぶ

実績のある、経験豊富なコーチから学ぶことは、お子様の野球センスを高めることにつながります。

経験と実績のある指導者であれば、野球センスを磨くのに役立つ知識や、見識をたくさん持っていることでしょう。よく「あのコーチはたくさんの引き出しがある」って聞きますね。

でも、勘違いして欲しくないのは、お子様に必要なのは、指導者の選手としての実績や経験ではありません。

指導者として、トップレベルの選手を育成した経験と実績を重視しましょう。

しかし、特に小学生の場合は、入団できるチームは、自宅近隣のチームに限られると思います。たとえば、入団したチームの指導が、お子様に合わないこともあるでしょう。
だからと言って、チームをいくつも変わることは、お子様にとってもよいこととは思いません。
私の経験上、チームをいくつも変わった子は、結果的に早い段階で野球を辞めています。

ですから、そのような場合は、チーム外で優れたコーチやトレーナーを見つけるのもよい方法だと思います。

4-2-4. 異なるポジションでプレーする

様々なポジションでプレーすることは、野球センスを高めることにつながります。

特に、成長期の選手の可能性は未知数です。多くのポジションでプレーすることは、試合に対する幅広い理解を深めることにつながります。
それが、試合の状況を読み取る能力を向上させるのに役立つはずです。

また、いろいろなポジションを経験できることは、お子様にとっても楽しいことだと思います。
あなたのお子様が、すでにチームに所属していて、ポジションをある程度固定されているようでしたら、チームの指導者に他のポジションも経験させてもらえるように、相談するのもよいでしょう。

また、これからチームを探すようでしたら、チームの練習への体験を申し込んで、その際に指導方針をしっかり確認してみましょう。

いずれにしても、成長期の子供にとって、たくさんのポジションを経験することは大切なポイントです。

4-3. 野球センスを磨くために考えられること

4-3-1. 状況をよく観察する

常に状況をよく観察することで、野球センスを磨くことができます。

野球には、プレー毎の状況判断が必要です。たとえば、あなたのお子様が、1点差で負けている最終回の先頭打者だとします。

その場面では、何が求められるでしょうか?

また、その場面でやってはいけないことは何でしょう?
そういった状況を的確に把握することで、適切なプレーができるようになります。
当然ですが、状況把握能力が高い選手ほどパフォーマンスが向上するはずです。

そういった状況判断もそうですが、打者であれば、相手投手の癖や球種の配分を観察してみましょう。
ピッチャーやキャッチャーであれば、相手のバッターボックス内での立ち位置など、細かい状況を観察してみましょう。
その情報をもとにプレーすることで、よい結果が得られる可能性が高まると思いませんか?

状況をよく観察することで、適切な判断を行い、野球センスを磨くことができます。

4-3-2. 自己分析を行うこと

自己分析を行うことで、自分の弱点を見つけ、それを克服するアイデアを考えてみましょう。
それも、野球センスを向上させるヒントになります。

お子様自身で自己分析することが、より効果的ですから、お父さん、お母さんは、そのサポートをしてあげましょう。

たとえば、

  • 運動能力の面で、走るタイムを具体的に何秒にしたいか書いてみる。
  • 技術的に改善したいことを3つ書いてみる。
  • メンタル的に改善したいことも3つ書いてみるなどです。

そうすることで、次に取り組むことも明確になりますね。

肝心なことは、自己評価が正確である選手ほど、パフォーマンスの向上につながるということです。

プロ野球のピッチャーは、自分の投球をビデオで確認し、フォームや球速、球種などを分析しています。
その結果から、投球の改善点を見つけ、より高いレベルでのパフォーマンスを発揮しています。

もちろんプロ野球選手は、専門のスタッフからサポートを受けているのですが、自己分析を行うことで、自分の弱点を克服し、野球センスを向上させる努力をしているのです。

お子様の場合、そこまで専門的にはできなくても、自分の目の前にある課題を見つけて、達成可能な目標を設定する習慣は、将来の成功につながるはずです。

さっそく、今日からやってみましょう。

4-3-3. 繰り返し練習を行うこと

成長期の子どもの場合、繰り返し練習を行うことで、できなかったことができるようになります。

人によって成長のスピードは違いますが、繰り返しの効果は、全ての選手に平等に与えられています。
繰り返し練習して得た技術の定着は、脳から筋肉への司令の通り道ができあがったことを意味します。

あきらめず、繰り返し練習することによって、技術の定着や神経回路の強化が行われることが知られています。
地味な練習メニューであっても、繰り返し繰り返し練習することが、野球センスの向上につながっています。

プロ野球選手の多くは、試合の後や練習の合間にも個別練習を行っています。
たとえば、メジャーで活躍している鈴木誠也選手は、広島時代、ナイトゲームの後にバッティング練習をしていたことで有名です。
もちろん、強靭な肉体をつくりあげているプロの選手だからできることですが、一流のプロ野球選手でも、課題を持って繰り返しの練習をしているのです。

繰り返し練習を行うことで、技術の定着や野球センスの向上が期待できるというお話でした。

ただし、成長期の子どもの場合は、【ケガ】の心配がありますから、その点は最大限の注意が必要です。

4-3-4. 野球以外のスポーツも取り入れてみる

野球以外のスポーツをすることで、総合的な身体能力や、新しい神経の通り道をつくることが期待できます。それが、野球センスを磨くことにもつながります。

異なるスポーツを行うことは、野球とは違う体の使い方を経験できます。動きの幅も広がりますから、運動能力が向上することが研究でも示されています。
また、多様なスポーツ経験を持つ選手は、野球においてもパフォーマンスが向上すると報告されています。

メジャーリーグで活躍する前田健太投手は、少年時代には、水泳選手としても高い評価を得ていました。

野球以外のスポーツを取り入れることで、総合的な身体能力や運動センスを向上させ、野球センスをさらに高いレベルで磨くことができます。

4-4. 年齢別、野球センスの発達のしかた

4-4-1. 小学生の場合

小学生の場合、基本的な運動能力(基礎体力)を高めながら、基礎的な技術の習得をはかりましょう。

ポイントは、楽しみながらプレーすることが、野球センスの発達に重要だということです。

小学生は、身体的な発達が進んでいないため、まず基本的な技術を身につけることが大切です。また、楽しみながらプレーすることで、やる気を維持し、継続的に取り組むことができます。

親子でキャッチボールをしたり、バッティングセンターに行くのもよいでしょう。

そのとき、何かゲーム性のあるルールを決めるのも、いいかもしれませんね。たとえば、10往復ノーミスでキャッチボールできたら、何かゲットできるとかいうのはどうでしょうか?

イチロー選手は、小学生の頃から毎日バッティングセンターに行っていたという話は有名ですね。もちろん、バッティングセンターだけが、イチロー選手を大打者にしたわけではないでしょう。
でも、間違いないことは、小学生のときの日々の練習によって、基本的な技術を習得したということです。

小学生の場合、基本的な技術の習得を、楽しみながら行うことが、野球センスの発達に重要です。
さらに小学生は、いろいろなポジションを経験することで、野球のセンスを磨くことができます。

異なるポジションを経験することで、野球の理解が深まり、選手としての視野が広がります。

4-4-2. 中学生の場合

中学生の場合は、技術の向上と共に、状況の観察や自己分析を行いながら、野球の戦術的な理解も深めていきましょう。
それが、野球センスの発達に必要です。

そして、メンタル面のトレーニングも、野球のセンスを磨く上で重要です。プレッシャーやストレスを上手くコントロールし、自己肯定感を高めることで、試合でのパフォーマンスが向上します。

中学生は、身体的な発達が進みますから、運動能力も一気に伸びる時期です。ケガに注意をしながら、運動能力と運動センスを向上させて、野球のセンスを磨きましょう。

基本的な技術の向上はもちろんですが、中学生になると、野球の戦術的な理解が求められる年齢です。失敗を恐れず、状況判断をしながらプレーをする習慣を身につけましょう。

また、チームプレーを学ぶことで、コミュニケーション能力やリーダーシップが育まれます。
しかし、中学時代は、まだ体の成長スピードに差がある時期です。あなたのお子様が、なかなか大きくならないとしたら、親としても気になるところだと思いますが、バランスの取れた食事と睡眠をしっかりとるようにしましょう。

そして、お子様の得意な部分を伸ばすような声かけをおすすめします。たとえば、守備に自信がある子でしたら、守備を褒めてあげましょう。それが、次へのモチベーションにつながるはずです。

中学生の場合は、まだ成長スピードに差がある時期ですが、次のステージである高校野球で輝くために、技術の向上と共に戦術の理解やチームプレーを学ぶことが、野球センスの発達に重要です。

4-4-3. 高校生以上の場合

高校生以上の場合、個々の特長を生かしたプレーと戦術の研究が、野球センスの発達には重要です。

高校生になると、技術は一定程度身に付いているはずです。自分の得意な部分や課題となっている部分も、自分自身で判断しているはずです。

しかし、高校生になると、中学までとは違って、少しだけお子様との距離感が広がることになると思います。野球については、学校の指導者にお任せしましょう。
ただ、試合を見ているときなど、お子様の特長を活かせる方法が思いついたとしたら、側面からサポートしてみましょう。
そして、高校野球になると、今まで以上にチームに貢献できるプレーが求められます。また、戦術の研究や相手チームの分析を行うことで、試合での判断力が向上します。

お子様には、自分自身の特長を生かしたプレーをすること。状況の判断力を高めること。指導者の戦術を理解すること。そして相手チームの研究が、野球センスの発達に重要だということをアドバイスしてあげましょう。

【まとめ】

  1. 野球センスを高めるためには、【調整能力】と【判断力】を高めるように意識しましょう。
  2. 野球センスには、【瞬時判断】が必要ですから、日頃の練習で失敗を恐れずに、素早い判断を行いましょう。
  3. 試合の映像をお子様と一緒に見ながら、お子様の改善点を見つけるサポートをしましょう。
  4. たくさんのポジションを経験して、将来につながる野球センスを身につけていきましょう。
  5. 自己分析をして目標を具体的に書き出しましょう。それを日々の繰り返しの練習でクリアしていきましょう。
  6. 野球以外のスポーツにもチャレンジして、野球にはない運動動作を取り入れてみましょう。
  7. 小学生、中学生、高校生それぞれに野球センスを段階的に高めていきましょう。

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