野球選手が体を大きくするための正しい「食トレ」〜ジュニア期編
今回お伝えする内容です
野球選手が体を大きくするための正しい「食トレ」〜ジュニア期編
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
昔から、野球界では「たくさん食べて体を大きくしよう」という考えが定着しています。
最近では少なくなっているとは思いますが、ほんの数年前まで、2リットルのタッパーにご飯を詰め込んだ弁当を、無理やり食べていた中学生、高校生がたくさんいました。
そして、小学生球児たちも、体を大きくしてほしいと願う親が、間違った方法を選択してしまうケースが多いようです。
あなたは、大丈夫でしょうか?
そこで、今回はジュニア期の「球児の食事」について考えてみたいと思います。ジュニア期の食事で注意したいことや、投手が試合に備えた食事法などの情報をお伝えします。
ただ、今回お伝えする食事についての考えは、中学生や高校生にとっても通じる大切な内容です。
おすすめのレシピもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ジュニア期の野球選手に適した食事とは
ジュニア期は、年齢としては6 歳から14 歳の子どもになります。この時期に、強い体をつくるためには「トレーニング」「食事」「休養」の3要素のバランスが重要です。
ジュニア期の小学生は、野球をはじめて間がない子が多いと思います。そのため、多くの親は、野球の技術的な上達に目が向かいがちです。ですから、休養日をつくらずに、毎日練習をしている子どもがいるようです。
ただし、それでは子どもの成長にとってはマイナス効果です。
休養については、今回のテーマからずれますから、以前にお伝えしているこちらの情報を、チェックしていただければと思います。
いずれにしても、「食事」と「休養」をおろそかにしてはいけません。トレーニング、食事、休養の3要素 がバランス良く揃うことで相乗効果を生み出します。そのバランスによって、トレーニングのレベルも上がり、強い身体に進化していきます。
しかし、たくさん食べた次の日に、急に体が大きくなるようなことはありません。つまり、「食事」の効果はすぐに現れるものではないんです。
子ども自身もそうですし、親から見ても効果を感じにくいものです。
ですから、我が子の体を大きくしたいと願うお父さんの中には、お茶碗三杯などと食べる量にノルマを与えたり、寝る直前にお餅を食べさせているという話を聞いたこともあります。
特に、小学生のジュニア期の子どもの場合は、内臓も未発達ですから、無理に食べさせることはしないようにしてください。
それについては、詳しくまとめたオンラインコースがありますので、ぜひ、どんな内容かだけでも確認してみてください。
今回は、投手と野手それぞれに、どのような栄養素が必要なのか。どんな料理が適しているのかを紹介します。
ジュニア期から「食事」 の重要性を具体的にしっかり理解できる選手になりましょう。
投手に必要な栄養
野球は攻撃と守備を交互に繰り返すスポーツです。ですから、常に激し く動き続けることはありません。しかし、投手のピッチングの繰り返しは、瞬発性の動きを繰り返すことになります。
先発投手が、最後まで投げぬくためには、かなりのエネルギーと集中力が必要になります。
そのための投手の食事のポイントは何だと思いますか?
それは、最後まで集中力を切らさずに投げ切れるエネルギー源を確保することです。
投手特有の、瞬発性を繰り返す動きに必要なエネルギー源は糖質です。そして、脳の唯一のエネルギー源も糖質となります。糖質を摂ることで、様々な状況に合わせて、常に適切な行動を考えることができます。
糖質は、グリコーゲンとして肝臓と筋肉に貯蔵されています。この貯蔵量を試合当日に増やす方法をカーボローディング、または、グリコーゲンローディングと言います。
この方法は、マラソン選手のように、主に持久性の高い競技の選手が用いる方法です。
投手も投球動作を繰り返しますから、高い持久力が必要なポジションです。ですから、カーボローディングが必要といえるでしょう。
また、トレーニング後や試合後は、30分以内に糖質を補給するようにしましょう。鮭おにぎりかハムサンド、オレンジジュース、バナナでも構いません。
30分以内に糖質を補給することで、エネルギー源が枯渇せずグリコーゲンの補給ができ、筋肉の修復にも効果があります。
投手に適したレシピ
投手には糖質が必要ですが、糖質のみを補えば良いわけではありません。糖質をエネルギー源に変えるために必要な、ビタミンやミネラルなども大切になります。また、常に考えている脳の働きを助ける、タンパク質や脂質も必要になります。
そこで、オススメのレシピは、「簡単、あさり・じゃこ・枝豆の炊き込みご飯」 です。
いつもの夕食の主食を変えてみましょう。
白米を胚芽米に変えることがポイントです。糖質をエネルギ ーに変えるときに必要となるビタミン B₁を補えます。
野手に必要な栄養
野手は、守備や走塁、バッティングといった瞬発性とパワーを発揮する ためのエネルギーが必要です。そのため、必要なエネルギーを確保した上で体をつくる材料である、タンパク質の摂取がカギになります。
タンパク質は、筋肉、内臓、血液、皮膚、爪、毛髪など、人の体をつくるために必要な栄養素です。特に選手にとっては、トレーニ ングで傷ついた筋肉や細胞を修復する働きがあります。そして、筋肉を大きくするためにもタンパク質が必要です。
しかし、よく勘違いされていることですが、単にタンパク質をたくさん食べれば良いわけではありません。
体に入ったタンパク質には、窒素が含まれています。窒素は、代謝をする際にアンモニアを生じ、それを解毒、排泄するために肝臓や腎臓に負担をかけてしまいます。
野球選手のタンパク質の目安量は、体重あたり1.4~1.7g(kg/日)が必要です。ジュニア期の場合は、1.5~2.0g(kg/日)を目安にするといいでしょう。たとえば、体重が30kgの場合、1日あたり45〜60gのタンパク質を摂るようにしましょう。
ジュニア期の選手は、体もまだ発展途上です。つまり胃や腸などの内臓が未発達です。ですから、一度にたくさん食べることができない子が多いですし、無理に食べさせることは、成長にとって逆効果です。
ですから、1日3回の食事で、肉や魚、卵などの一般的な食事をしていればタンパク質が不足することはありません。つまり、プロテインなどのサプリメントを過剰に摂る必要はないのです。
重要なことは、体のエネルギー源となる糖質をきちんと摂ることです。エネルギー源の糖質を摂らないでタンパク質ばかり食べても、逆に体に負荷をかけます。それは、糖質が足りないとタンパク質を分解してエネルギーに変えてしまうためです。
日本食の基本である一汁三菜の規則正しい食生活で、しっかり栄養を摂りましょう。
野手に適したレシピ
タンパク質だけに目を向けるのではなく、食事にはバランスが必要です。
食事によって、トレーニングでダメージを受けた筋肉を修復し、再合成して太くて強い筋肉をつくることができます。そのためには、食事のタイミングとタンパク質と糖質のバランスが重要になってきます。
トレーニング終了後 30 分以内に、糖質とタンパク質が3:1になるように補食を摂りましょう。補食には、鮭おにぎりやハムサンドなどがおすすめです。
補食を摂ることで、トレーニングで消費したエネルギーを補充し、タンパク質を分解することを防いでくれます。そして、一汁三菜と果物を揃えた夕食を摂りましょう。
ここでは、夕食のメニューの一例として、「豚の梅生姜焼き」のレシピをご紹介します。
カーボローディングと休養の関係
カーボローディングとは、試合の2〜3日前からトレーニング量を少なくしながら食事を調整し、試合当日のエネルギー源となる糖質を体に蓄える方法です。
カーボローディング以外に、グリコーゲンローディングとも言います。
人は食事から摂った糖質をグリコーゲンという形で蓄えます。それを、エネル ギー源として利用します。貯蔵できる量はとても少なく、肝臓に100g、筋肉中に250〜300g蓄えられるとされています。
激しいトレーニン グや練習で疲労困憊すると、急に体が動かなくなることはないでしょうか? それは、一定限度以下にグリコーゲンが減少すると、筋肉はそれ以上運動を続けられなくなるからです。
グリコーゲンは、貯蔵量がゼロになることはありません。しかし、 試合当日にグリコーゲンが枯渇することなく最後まで戦い抜くためにも、カーボローディングは必要な方法だといえます。
カーボローディングや高糖質な食事と聞くと、ジュニア期の子どもには難しいと思うかもしれません。
ジュニア期でしたら、試合2〜3日前から普段の食事にお餅や芋類などを加え、食後にオレンジジュースを飲むような簡単な方法でも十分です。そして、食事で摂った栄養を吸収するために、しっかり「休養」させることが必要になります。
ここで「休養」させないと「トレーニング」と「食事」の効果は出ません。
「トレーニング」、「食事」、「休養」のバランスを整えることで相乗効果を生み出し、試合で戦える強い体になっていきます。
今回のまとめ
いかがでしたか?
今回は、ジュニア期の野球選手に適した食事について考えてみました。
野球選手として実力を高めるためには、トレーニング、食事、休養のバランスが重要だとお伝えしました。
そして、体を大きくしようとして、タンパク質の摂取に意識が向きがちですが、糖質とのバランスが必要だと説明をしました。また、1日に必要なタンパク質量についてもお伝えしました。
投手と野手の違いについてもお伝えしましたね。
野手は、瞬発的なパワーを発揮するためのエネルギーが必要です。また、投手は投球動作を繰り返しても疲れない持久力が必要です。そのためにカーボローディングという方法をお伝えしました。
そして、食事のタイミングも重要でしたね。お伝えしたレシピも、ぜひお試しください。
今回お伝えした内容を繰り返し確認して、お子様の成長と健康をサポートしていきましょう。
今回は以上です。
次回もまた、野球の上達につながるエビデンスに基づいたアイデアをお伝えします。
それでは、またお会いしましょう。
参考文献
・石橋秀幸、マー君をめざす最新トレーニング、廣済堂出版、2014 年
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