【努力が裏目?】野球熱心な親ほど見えていない? ”危険な盲点”が子どもの上達を阻む…

今回お伝えする内容です
【努力が裏目?】野球熱心な親ほど見えていない? ”危険な盲点”が子どもの上達を阻む…
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
お子さんの野球、最近こんな変化を感じていませんか?
「以前よりプレーにキレがない」
「練習しているのに上達しない」
「すぐに集中が切れる」
これ、重大なサインです!
こんな時、「気持ちが足りない」とか「やる気がないなら、野球やらなくていい」などと言っても、全く効果はありません。
練習量を増やすのも逆効果です。
実は、お子さんの野球に対して「一生懸命な人」ほど見えていない落とし穴があります。これには、お子さんの野球への情熱さえ失わせてしまう可能性があるのです。
ということで、今回お伝えするのは「正しい疲労管理」です。といっても、おそらくはじめて聞く内容です。
たとえば、疲労には2種類あるのをご存じでしょうか? また、単に繰り返す練習は、効果が低いことがわかっています。その理由を知っていますか?
さらに、練習量を増やすほど、お子さんの長期的なスキルアップにデメリットがあるという研究報告があります。これについても、科学的根拠をもとに解説していきます。
もちろん、これらは私の35年以上の研究と指導の中で実証されている内容です。
ぜひ、最後までお付き合いください。
脳の燃料切れが練習効果を奪う!
お子さんの練習量は、適切ですか?
もっと上手くなるために、今より練習量を増やす必要がありますか?
ちょっと待ってください!
今のお子さんには、「練習量」ではなく、“脳のガソリン”が必要かもしれません。
お子さんの野球の上達に重要なのは「疲労管理」です。特に「脳の燃料切れ」による精神的疲労は見落とされがちです。
疲労について正しく知らないと、お子さんの野球にとって長期的に悪影響を与えてしまうのです。
漠然と繰り返す練習は逆効果!
「野球の上達のためには、地道な繰り返しが必要」
きっと、そうお考えですよね。
確かに、繰り返すことはとても大切なことです。でも、この重要なポイントを忘れないでください!
野球のスキル習得は、「単に繰り返すだけでは効率が悪い」のです。
お子さんが新しいスキルを学ぶとき、脳には大きく二つのことが必要です。最初の段階では、一つ一つの動きに意識を集中させる必要があります。つまり、意識的な努力が必要です。
このときは、「注意や集中」を司る脳の領域が特に活発に働きます。でも、これには脳に大きな負荷がかかるのです。
あなたにも、きっと経験があると思います。仕事で新しいことを覚える時は、いつも以上に注意と集中が必要で疲れますよね。
野球を始めたばかりの子どもは、たくさんのことを集中して覚えて行かなければいけません。
ノックでゴロやフライが上手に捕れないと、大人はついつい時間を忘れてしまいます。気づいたら1時間経ってたなんていうことがありませんか?
ところが、ここが重要ポイントです!
意識的な努力が必要なときの長時間練習は、逆効果なのです。決して、「漠然とした長時間練習」はさせないでくださいね。
なぜなら、お子さんの脳に「精神的疲労」が蓄積してしまうからです。反応速度を低下させ、プレーの正確性を損なう可能性があるのです。
言い換えれば、間違った動きを繰り返してしまうということです。脳が間違った動きを、正しいと勘違いしてしまう可能性があるわけです。
このようなことが続くと、お子さんの野球スキルの習得にとって、長期的な悪影響を与えてしまいます。これは、複数の研究で指摘されていることなのです。
そして、新しいスキルを習得するときに、もうひとつ重要なことがあります。

ミスをするのが正しいステップ
スキル習得の初期段階で必要な「もうひとつのこと」とは何でしょうか?
ズバリ! それは、ミス(間違い)を経験することなのです。逆にいうと、ミスをしないと脳は活性化されないのです。
もちろん、単にミスをすればいいわけではありません。重要なポイントがあります。
それは、ミスの後で脳が正しく情報処理をし、適切な記憶として定着させることです。
練習中のミスを見ると「またやってる…」と思いがちですね。でも実は、この間違いこそが、お子さんの上達のカギなのです。
ミスは、脳に変化が必要であることを伝えます。ミスによる「焦り」や「ストレス」といった感覚は、「神経可塑性」のきっかけになります。
その点については、【初公開】科学的野球指導!小中学生は「脳」を鍛えて、野球センスを劇的に伸ばすべしで詳しく解説をしました。
「うちの子、同じミスを繰り返すけど…」
そんな場合は、漠然とした長時間練習が影響しているのかもしれません。つまり、パフォーマンスが低下した状態で練習を続けても、スキルアップにはつながりにくいのです。
結果的に、お子さんは同じミスを繰り返すサイクルに陥りやすくなります。

2つの疲労でパフォーマンスが低下
脳の燃料切れは、野球のパフォーマンスに影響を与えます。
実は、疲労は単に体がだるく動きにくくなるだけではありません。
- 集中力
- 意思決定能力
- 反応時間
疲労は、お子さんの考える力(認知機能)まで大きく低下させてしまうのです。これは、脳神経科学の研究から、明らかになっていることです。
だからこそ、疲労状態は、脳と身体の両方を適切に管理することが不可欠です。
ここで覚えておいてほしいことがあります。
疲労には2種類あります。ひとつが身体的な疲労、そしてもうひとつが精神的な疲労です。
精神的な疲労とは、先ほど説明した認知機能が低下する「脳の燃料切れ」で起こります。集中や緊張する時間が長くなると、パフォーマンスに影響を与えるのです。
一方、身体的な疲労は、練習によって筋肉が疲れる状態です。たとえば、下半身の筋肉が疲れてスイングが乱れるようなことを指します。
「集中力が続かない」というのは、単に気持ちが弱いということではありません。脳の燃料切れにより、機能が低下していると考えられるのです。
つまり、身体的疲労も精神的疲労も、どちらにも適切な休息が必要だということです。
なお、休息とパフォーマンスアップに関しては、【野球センスを意図的に作る】”5分ボーっ”で脳の配線工事!最強の反復&休息法も参考にしてください。
ところで、身体的疲労については、ある誤解をしている人がいます。
あなたはどうですか?

乳酸についての誤解
「あ、乳酸がたまって体が動かない」
こんなことを耳にしませんか?
乳酸を「疲労物質」だと考えている人が多いですね。でも、それは誤解です!
最近の研究で、今までの常識を覆す事実がわかってきました。
実は、乳酸は単なる疲労物質ではありません。むしろ脳にとって非常に重要な「エネルギー源」なのです。
言い方を変えると、「脳の隠れた充電器」のようなものです。
たとえば、脳内のアストロサイトという細胞から作られる乳酸は、激しい運動中に脳に燃料を供給します。これにより、思考力が維持されると示されています。
つまり、これまで「悪者」だった乳酸は、実は「味方」だったのです。
お子さんの集中力や意思決定能力を支える「貴重なエネルギー源」なのです。

集中切れのサイン
お伝えしたように、漠然とした練習では効果が上がりません。
お子さんの「脳の燃料切れ」を見極めて、適切な練習量と休息を確保しましょう。
「脳の燃料切れ」を示すサインは様々ですが、代表的な例をあげます。
「 パフォーマンスの低下とミスの増加」
- 送球のコントロールが乱れ、暴投が増える
- 簡単なゴロやフライを捕球ミスする
- 同じミスを繰り返してしまう
「 判断力・反応速度の低下」
- 守備や走塁の一歩目が遅くなる
- ボーっとしている時間が増える
- 指示を聞き流してしまう
「やる気・意欲の変化」
- 練習中や試合中に活気がなくなる
- すぐ諦めてしまう
- 「疲れた」「しんどい」と頻繁に口にする
「身体的・精神的な変化」
- 些細なことでイライラする
- あくびを頻繁にする
- 動きがぎこちなくなる
これらのサインは、お子さんが「やる気がない」わけではありません。脳が疲労している「燃料切れ」の可能性を示しているのです。
このようなときは、適切な休息を与えましょう。
そして、疲労の回復には睡眠が大切です。

最適な睡眠時間は?
ここまでお伝えしたように、「脳の燃料切れ」が野球のパフォーマンスに影響します。
集中力や反応時間の低下、意思決定能力の低下など、その影響は広範囲にわたります。もし、「脳の燃料切れ」の可能性があるなら、睡眠習慣を見直すことからはじめてみましょう。
あなたのお子さんの睡眠時間は、どれくらいですか?
最近の研究では、特に成長期の選手に必要な睡眠時間は「最低9時間」とされています。
睡眠が不足すると、身体的な回復が遅れるだけではありません。感情のコントロールや、学習能力にも悪影響が出てしまいます。
実は、短い「昼寝」がパフォーマンスアップに効果的だとご存じですか? これは、あまり知られていないかもしれませんね。
たとえば、複数のプロ野球選手が、試合前に昼寝(仮眠)を取っています。野球以外のスポーツでもいくつかのエビデンスが報告されています。
サッカー、ラグビー、ハンドボールの選手は、40分間の昼寝で集中力が回復し、5mシャトルランのパフォーマンスが向上しました。
ただ、昼寝といっても、小中学生の場合、平日は学校がありますね。土日はチーム練習や試合があります。そのため、昼寝の時間を確保するのが難しいかもしれません。
でも、昼寝は毎日習慣化する必要はないのです。
研究によると、疲労を感じているときに20分程度の昼寝をすると、お子さんの脳を充電できるという報告があります。
練習の合間に5~10分間、目を閉じたり静かに座ったりする時間を作ってみましょう。これも、脳のリフレッシュに効果があると記されています。
平日の練習前に20分程度の昼寝をしてみて、その日の練習の質がどう変わるのかを実感してみてください。
これからは、練習量よりも「いかに体と脳を休め回復させられるか」を考えて練習計画を立てる時代です。
これが、お子さんの野球のパフォーマンスアップにとって、とても重要な要素なのです。
ちなみに、分散練習が野球の上達に効果的です。野球がうまくなるはずの長時間練習は逆効果! それ知らないと危険ですで解説しましたので、チェックしてみてください。

今回のまとめ
疲労には、「身体的疲労」と「精神的疲労」の2種類があります。
漠然とした長時間の練習は、身体的な疲労だけでなく「脳の燃料切れ」という精神的疲労を蓄積させます。
「脳の燃料切れ」では、集中力や判断力を奪い、間違った動きを記憶させてしまう可能性があります。
成長期には9時間以上の睡眠や、短い昼寝といった質の高い休息で脳を回復させることが大切です。
今回の内容を参考にして、科学的なアプローチで練習を進めてください。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
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Barbosa BT, de Lima-Junior D, Moreira A, Nakamura FY, Batista GR, Faro H, Fortes LS. Mental fatigue and sleep restriction effects on perceptual-cognitive performance in trained beach volleyball athletes. Front Psychol. 2025 May 9;16:1537482. doi: 10.3389/fpsyg.2025.1537482. PMID: 40417017; PMCID: PMC12098282.
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Behrens, M., Gube, M., Chaabene, H. et al. Fatigue and Human Performance: An Updated Framework. Sports Med 53, 7–31 (2023). https://doi.org/10.1007/s40279-022-01748-2
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1School of Competitive Sports, Shandong Sport University, Rizhao, Shandong, China, 2School of
Physical Education, China University of Mining and Technology, Xuzhou, Jiangsu, China, 3Graduate
Program in Health Sciences, School of LifeSciences and Medicine, Pontif´ıcia Universidade Cato´ lica,doParana´ , Curitiba, Brazil, 4Faculty of Sports Science, Ningbo University, Ningbo, China
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