【野球力は遺伝?】「うちの子、才能ないかも…」そう思った時に見てください!科学が示す最新の事実

今回お伝えする内容です
【野球力は遺伝?】「うちの子、才能ないかも…」そう思った時に見てください!科学が示す最新の事実
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
今回は、野球と遺伝の意外な関係について解説します。
あなたも、「運動神経は遺伝だからどうしようもない」と考えるお一人ですか?
では、お子さんの身体活動に、あなたの遺伝がどれくらい影響していると思いますか?
50%くらい?
いや、80%?
おそらく実際の数字を聞くと、きっと驚くと思います。そして、明日からは遺伝のことを気にすることなく、お子さんの野球に期待が高まるはずです。
ただし、遺伝が全く関係ないわけではありません。お子さんの野球の上達には、遺伝は確かに影響します。
肝心なのは、遺伝が野球の能力アップにどのように影響しているのかを知ることです。それを理解し、明日からの生活をガラッと変えられれば、お子さんは必ず変わります。
これは、私の35年以上の研究と指導の実績で実証している事実です。
「そう言うけど、やっぱり遺伝は大きいでしょ?」と疑うのなら、ぜひこの先を最後まで確認してみてください。
お子さんの野球人生を劇的に変える一歩、実は驚くほどシンプルなんですよ。
野球に才能の壁はあるのか?
「やっぱり野球って才能がないと…」
「運動神経は遺伝だから、仕方ないのかな…」
お子さんの上達が思うように進まないと、こう感じるかもしれません。
実は、最新の研究で、子どもの運動能力に対する遺伝の影響は、限定的だということがわかってきました。
そこで、才能と遺伝の気になる関係を科学的データで解き明かしていきます。
遺伝で決まるのは何?
お子さんの野球で「才能の壁」を感じることがありますか?
なかなかうまくならないと、それを「遺伝」のためだと感じてしまいますよね。でも実は、遺伝の影響は思っているほど絶対的ではないのです。
アスリートを分析した研究では、約66%が遺伝的要因だという結果が確かに存在します。この数字だけを見れば、「やはり遺伝の影響は大きいんだ」と、少し落胆してしまうかもしれません。
しかし、これはあくまで大人のアスリート全体的な話なのです。子どもの場合は、話が変わってきます。
遺伝学の権威、ヘウス博士らの研究から、たとえば次のようなことがわかっています。
赤ちゃんが「寝返りを打つ」「ハイハイをする」「座る」「立つ」「歩く」といった基本的な運動の発達のスピード。これらは、遺伝子の影響を受けます。
つまり、子どもの成長スピードが人それぞれ違うのは、とても自然なことなのです。
また、ケガをしやすい体質かどうかも、遺伝子が大きく関係していることがわかっています。同じ練習をしていても、ケガをしやすい子がいる理由もそのためです。
でも、だからこそ、科学の力で対策ができるわけです。
その傾向があるとわかれば、ケガをしにくい運動方法や、効果的な準備運動を教えてあげることができますね。特定の筋肉の強化トレーニングも取り入れられます。
つまり、遺伝的傾向を知ることは「諦める理由」ではなく「対策の手がかり」なのです。
現在の研究では、遺伝子検査だけで「この子がプロ野球選手になる」と正確に予測できるほどの証拠は、まだ見つかっていません。
今、「才能がない…」「遺伝の影響かも…」と思っていても、希望を持ってお子さんをサポートしてくださいね。
次は、その理由を説明します。

家庭環境が8割を決める
私が相談を受けるとき、こんなことを言う人がいます。
「うちは、母親が運動神経が悪いから子どもも…」
でも実は、お子さんの身体活動に遺伝が与える影響は、驚くほど限定的です。
運動能力は、遺伝的要因と環境的要因が複雑に影響していることが研究でわかっています。普段の生活で、どれくらい体を動かすか(身体活動)で大きく変わってくるのです。
ヘウス博士の2023年の報告を含む複数の研究によると、興味深い事実があります。
12歳未満のお子さんの日常的な「身体活動」の個人差のうち、遺伝の影響は平均でたったの約19%程度。
この数字は、体を動かす量を計測器(デバイス)で測った場合の結果です。つまり、お子さんが「普段どれくらい体を動かすか」の残りの約8割は、特に「環境」が影響しているということになります。
お子さんの身体活動レベルは、あなたがつくり出す「家庭環境」で大きく変わるのです!
具体的には:
- 運動する機会をたくさんつくってあげる
たとえば、一緒に公園へ出かける、家の中で安全に体を動かせる遊びを取り入れる、家族で散歩に行くなど。 - 親が運動を楽しむ姿を見せる
親が楽しそうに体を動かしていると、お子さんも「やってみたい!」という気持ちになりやすいものです。 - 健康的な食習慣や生活リズム
バランスの取れた食事や十分な睡眠は、お子さんが元気に体を動かすための大切な土台となります。
野球のスキル練習だけではなく、普段から多様な運動機会をつくることをお勧めします。これはお子さんの基礎的な体力や健康的な身体活動レベルを高めることにつながります。
「運動神経は遺伝だから仕方ない」という思い込みは、お子さんの成長期には当てはまりません。家庭環境が、お子さんの身体活動に圧倒的に大きな影響力を持っているのです。
成長期はまさに、お子さんの可能性を最大限に引き出す「ゴールデンタイム」なのです。
ちなみに「運動神経」については多くの人が誤解をしています。あなたは【運動神経】について、勘違いしていませんか?でその誤解を解消してください。

才能を伸ばすのは今
ここまでのお話しで、野球の「うまさ」は、生まれつきの才能だけではないことがわかったと思います。
専門家は、「才能が100%を決めるわけではない」と明確に述べています。アスリートの競技力の34%以上は、環境や練習の工夫で決まることがわかっているのです。
これからのあなたの工夫が、お子さんの未来を大きく変える可能性があるわけです。
もちろん、成長とともに遺伝の影響が強くなる部分もあります。思春期には、42%に上がるという報告もあります。これは、幼少期の遺伝的影響(デバイスベースの身体活動で19%)の約2倍になります。
その理由は、子どもの頃の身体活動の習慣は、環境の影響を大きく受けるからです。それが、成長するにつれて変わってきます。
自分自身で環境を選ぶことや、身体の変化に伴い遺伝子の活動も変化します。これらによって、生まれ持った遺伝的要因がより強く表れるようになるのです。
つまり、思春期に入る前が「ゴールデンタイム」だと言えます。
言い換えれば、「運動を好きになる環境」で育つことで、「運動が得意な子」になる。生まれつきの才能だけでなく、環境がつくり出す結果だと言えます。
研究者は「正しい頻度と方法で練習を積めば、遺伝の壁は十分に乗り越えられる」と断言しています。
小中学生のうちは、野球の技術練習だけに目を向けるのではなく、さまざまな運動で、体を動かす習慣をつくってください。
ポイントは、お子さんが「楽しい!」と感じる運動の機会をつくってあげること。その積み重ねが、運動能力だけでなく、健康な体と心をつくる大きな力になるのです。
なお、運動能力を効率よく伸ばす方法を【野球センスを意図的に作る】”5分ボーっ”で脳の配線工事!最強の反復&休息法で解説しています。

才能を高める練習とは
お子さんが小学生や中学生であれば、まさに脳と身体が劇的に成長する大切な時期です。
この時期の経験が、その後の運動能力全般の基盤となります。
実際に、中学・高校・大学・プロ野球選手を比較した研究があります。そこで示されているのは、中学生の筋力や専門的スキルは、一流選手の約50~60%程度に過ぎないということです。この先、年齢とともに大きく発達するのです。
お子さんが一流のアスリートを目指すなら、小中学生の時期は、複数のスポーツを経験することをお勧めします。野球に特化するのではなく「多様化」が推奨されています。
他のスポーツチームに所属するのは難しくても、日頃の練習にサッカーやテニスなどの動きを取り入れるのも効果的です。
また、反復横跳びが、投球スピードを高める効果があるという報告もあります。野球の専門的な動きに限らず、多様な動きを経験することで、幅広い運動能力と状況判断能力が育まれます。
将来的に野球の専門性を高める「才能の器」が大きく広がるのです。
小中学生の運動能力アップについては、【あなたは知ってた?】野球の”伸びしろ”は数値化できる!子どもの未来を変えるFMS評価とはも参考になるはずです。

今回のまとめ
子どもの身体活動における遺伝の影響は限定的で、約8割は家庭での過ごし方といった環境が影響します。
特に、遺伝の影響がまだ小さい思春期前は、環境がお子さんの能力を大きく左右する「ゴールデンタイム」です。
この時期に野球の専門練習だけでなく、多様な運動を経験することが、将来の「才能の器」を大きく広げます。
わからないことがあれば、いつでもご相談ください。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
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