【最新研究】野球肘・成長痛の危険度を5分で判定する3つの科学的指標

【最新研究】野球肘・成長痛の危険度を5分で判定する3つの科学的指標

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

大事な試合の朝。

お子さんが伏し目がちに「また痛いんだ」とつぶやく。
その瞬間、親の心はざわつきますよね。

「無理をさせて、一生残るケガになったらどうしよう」

そう思う一方で、この日のために泥だらけになって練習してきた姿も浮かんでくる。

「なんとか出させてやりたい」という気持ちも湧いてきます。

実は、この葛藤には理由があるんです。

こんにちは。ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

子どもにとって野球は、ただの習い事ではありません。「自分が何者か」を決める軸(アスレティック・アイデンティティ)そのものだからです。

「チームを裏切れない」そんな責任感から、お子さん自身も出口の見えないジレンマの中にいるかもしれません。

でも、この判断を感情や「今日だけなら大丈夫」という根性論で下すのは危険です。

そこで今回は、私の、35年以上の研究と指導の中で実証してきた、「3つの基準」をお伝えします。

これを知っておけば、わずか5分で答えが出ます。

そして、お子さんの10年後を守りながら、目の前の試合にも後悔なく向き合える判断軸が手に入ります。

ぜひ最後までご覧ください。

感情ではなく「3つのポイント」で判断する

試合の朝に「痛い」と打ち明けられたら、プレーさせるべきか休ませるべきか?

そう迷われることがあるかもしれません。

最新のスポーツ心理学と医学によって、わかってきたことがあります。

試合直前の判断は、親の感情ではなく「3つの科学的な指標」で下せるようになってきています。

それでは、詳しく見ていきましょう。

情報がないまま決めることの怖さ

親が判断に迷う最大の理由は、お子さんが「本当の状態」を隠そうとすることがあるからです。

なぜなら、成長期の子どもにとっての野球は、「試合に出られない」は、自分には価値がないのとイコール。

だからお子さんは、痛みというSOSを「大丈夫」の一言で上書きしてしまいます。

最新の研究では、若いエリートアスリートは、不快感や苦痛を外に出さない傾向があることがわかってきました。

専門的には「表出抑制(エクスプレッシブ・サプレッション)」と言います(Regborn et al., 2025)。

お子さんは、普段から弱音を吐かない「強い子」でしょうか。そうだとしたら、その「痛い」の一言は、限界に近いサインかもしれません。

そして、怖いのは痛みがない「無症状」の状態でもリスクは潜んでいるということです。

研究によれば、超音波検査でヒジに異常が見つかった選手は、その後のシーズンで負傷するリスクが約2.5倍高まるとされています。

ただし、異常があっても71.9%の選手は、痛みを発症せずにプレーを続けられるというデータもあります。

大切なのは、お子さんが今、刺激に対して過敏な状態なのか、そうでないのかを客観的に見極めることです。

無理をすると、ヒジの「離断性骨軟骨炎(かんせつネズミ)」などの重症化を招く恐れがあります。

2ヶ月以上の長期離脱や手術という、お子さんが最も恐れる事態を引き起こす可能性があることを忘れないでください。

なお、お子さんが「大丈夫」と言いながら本当の状態を隠してしまうメカニズムについては、こちらの記事で脳科学の観点から詳しく解説しています。

関連記事:【思春期の野球指導】なぜ急にアドバイスを嫌がる?子どもの脳で起きている科学的反応の秘密

心配するのは正しいけど感情で判断してしまうと…

お子さんの体を心配して迷うのは、親として当然ですよね。

でも、その判断の根拠が「感情」になっている場合があるかもしれません。

「気持ちの問題のような気がする」
「いや、やっぱり心配だから休ませるべきかも」

ただ、揺れたまま決めてしまうと、どちらを選んでも後悔が残ります。

根拠のある判断基準を持たず感情のまま決めると、「無理させたせいでケガが悪化した」と親子ともに傷が残ることにもつながります。

ですから、ここで視点を切り替えてみてください。

最新のスポーツ心理学と医療的知見を凝縮した「科学的指標」に切り替えてみましょう。

わずか5分で後悔しない判断が下せるようになります。

ちなみに、試合当日の判断に限らず、親の感情がお子さんのプレーに与える影響については、こちらの記事でくわしく取り上げています。

関連記事:子どもの野球の上達に感じる親のストレスと対処法

「出すか休ませるか」の判断は、3つの情報で決まる

プロの現場でも重視される判断軸は、たった3つです。

「どこが」「どれくらい」「今、何がおきてるか」

この3つの視点があれば、ケガのリスクをほぼ正確に見積もることが可能です。

①部位(どこが痛いか)
場所によって緊急度がまったく違います。

かかとやヒザは「骨端症(こったんしょう/成長痛の一種)」の可能性が高く、安静にすれば回復することが多いです。

一方、ヒジの場合は選手生命に関わる「投球障害(野球肘)」のサインです。

ここは絶対に見逃してはいけません。

②強さ(どれくらい痛いか)
主観的な痛みだけでなく、客観的な数値を見ます。

投手の場合、75球くらい全力で投げた後は、自分で感じる筋肉の張りや痛みが出ることが多いでしょう。

③成長段階(今、体で何が起きているか)
今、お子さんの身長が急激に伸びていませんか?

予測身長の87〜95%に達している時期(PHV:身長スパート期)は、骨の成長に筋肉の柔軟性が追いつきません。

最もケガのリスクが高い「レッドゾーン」です。

そして、医学的指標と同じくらい大切な視点がもう1つあります。

それが、「情熱のタイプ」です(Braz et al., 2025)。

– 調和的情熱: スポーツが生活の一部で、純粋に楽しんでいる状態
– 強迫的情熱: スポーツをしないと不安、周囲の期待を裏切るのが怖いという状態

強迫的情熱が強すぎると、「休んだら周りをガッカリさせる」「レギュラーから外される」と考えてしまいます。

そういう強迫観念から、自分の体の限界や痛みを無視して無理をしてしまうのです。その結果、大ケガや心が燃え尽きてしまう危険性が著しく高まります(Braz et al., 2025)。

また、成長期になぜ特別な注意が必要なのかについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

関連記事:【まだ信じますか?】たくさん練習すれば野球が上手くなる!それは成長期には通用しません

試合直前5分間チェックリスト

ここからは、あなたがその場で確認できる、具体的なチェック項目です。

順に見ていってあげてください。

【部位の特定とセルフテスト】
カカト(シーバー病) 男子8〜15歳、女子7〜12歳に多発します。

カカトの後ろの方を、両サイドから指でギュッとはさんだときに痛がりますか?片脚でつま先立ちをして、痛みで姿勢が崩れませんか?

ヒザ(オスグッド病など) 成長スパート期に集中します。ヒザのお皿の下の骨(脛骨粗面)を押したときに痛みがありますか?

ヒジ(投球障害) ヒジの内側の状態から「野球ヒジ」のリスクを確認します(内側上顆炎)。ヒジの内側を押したときに痛みがありますか?投球動作で痛みが出ますか?

【急性疲労の確認】
握力の測定 利き手の握力が、普段や反対側と比較して12%以上低下していませんか?

筋肉の張り、筋肉痛の確認 自分で感じる強い張りや痛みはありませんか?

【機能の確認】
肩の柔軟性(腕を外側にひねる動き)が、約6.7度良くなるだけで、ヒジのケガのリスクを22%も減らせるという報告があります(Shitara et al., 2021)。

だからこそ、常日頃のストレッチが大切なんです。

それでは次に、そのまま使える声かけを3つご紹介しますね。

「今日、試合に出ても出なくても、お父さん(お母さん)があなたを一番に応援している気持ちは1ミリも変わらないよ。だから、今の本当の体の声を聞かせてくれるかな?」

「無理をして今日出るのと、しっかり治して次の大きな大会でエースとして活躍するのと、どちらを選びたい? 選んだ方を全力で支えるよ」

「休むのは『逃げ』じゃなくて、次勝つための『戦略』だよ。今の痛みは、戦略的に休むべきレベルかな?」

この3つの言葉は、お子さんに「自分で決めた」という感覚を与えます。

なお、日頃からお子さんの「動きの質」を数値で把握しておくことも、ケガを防ぐ上で効果的です。

関連記事:【あなたは知ってた?】野球の”伸びしろ”は数値化できる!子どもの未来を変えるFMS評価とは

今回のまとめ

5分間チェックで「根拠のある判断」をすると安心できるとおもわれたのではないでしょうか。

無理に強行出場してケガを悪化させれば、数ヶ月グラウンドに立てないリスクがあります。

適切に休養し、心身ともにリフレッシュした状態で最高のパフォーマンスを発揮できるようにしてください。

試合前の朝、もし判断に迷ったらお伝えしたポイントを思い出してくださいね。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡くださいね。

あなたからのご連絡をお待ちしています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参照文献:

Shitara H, Tajika T, Kuboi T, Ichinose T, Sasaki T, Hamano N, Endo F, Kamiyama M, Miyamoto R, Kakase K, Yamamoto A, Kobayashi T, Takagishi K, Chikuda H (2021). Asymptomatic Medial Elbow Ultrasound Abnormality in Youth Baseball Players Is an Independent Risk Factor for Elbow Injury: A Prospective Cohort Study. Orthop J Sports Med 9(4):2325967120986791. doi:10.1177/2325967120986791

Nweke TC (2025). Conservative Management of Sever’s Disease (Calcaneal Apophysitis): A Comprehensive Review of Treatment Efficacy. Cureus 17(7):e88779. doi:10.7759/cureus.88779

Tremblay M, Anderson Sirois S, Abboud J, Descarreaux M (2025). Grip strength, muscle soreness and pain threshold perception evolution in baseball pitchers in a simulated 75-pitch game: a repeated measures study. BMJ Open Sport Exerc Med 11(1):e002146. doi:10.1136/bmjsem-2024-002146

Davis J, Doyle B, Ishii H, Jayanthi N (2023). S.P.O.R.R.T.—A Comprehensive Approach to the Assessment and Non-Operative Management of Overuse Knee Conditions in Youth Athletes. Curr Rev Musculoskelet Med 16(12):627–638. doi:10.1007/s12178-023-09874-8

Hoang LN, Joshi P, Patel DR, Apple RW (2025). The Psychology of Sports Injuries in Children and Adolescents: Psychosocial, Developmental, and Recovery Aspects to Injury. Int J Environ Res Public Health 22(10):1509. doi:10.3390/ijerph22101509

Braz D, Maia C, Gouveia É, Monteiro D, Couto N, and Sarmento H (2025). Passion, motivation, and well-being in young footballers: a systematic review. Healthcare 13, 3273.

Chen D-T, Nien J-T, Geng X, Yu J, Singhnoy C, and Chang Y-K (2025). Relationship between ruminative dispositions and perceived sports performance in young elite athletes in Hong Kong: the role of problem-oriented coping strategies. Front Sports Act Living 7:1513277.

Regborn FF, Holmström S, Svensson M, and Sjögren M (2025). Emotion regulation and mental health in young elite athletes. Sports 13, 284.

Zhang N, Du G, and Tao T (2025). Empowering young athletes: the influence of autonomy-supportive coaching on resilience, optimism, and development. Front Psychol 15:1433171.

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