【落とし穴】少年野球で「もっと積極的に!」が逆効果になる2つの本当の理由

【落とし穴】少年野球で「もっと積極的に!」が逆効果になる2つの本当の理由

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

「質問はありますか?」
「…大丈夫です」

そう即答して下を向いてしまうお子さんが多いかもしれません。

監督の問いかけにも、ただうなずくだけ。グラウンドでいつも一歩引いて、仲間の出方を待ってばかり…

もっと積極的に行きなさい!」と何度声をかけても、なかなか変わらない。

そんなもどかしさを、感じていませんか?

こんにちは。

ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

「うちの子は性格がおとなしいから」とあきらめている保護者の方に、ぜひお伝えしたいことがあります。

お子さんの「受け身」は、ほとんどの場合、性格のせいではありません。

積極性がなかった子が、関わり方を変えただけで別人のように動き始めた。35年以上の指導の中で、そんな場面を何度も見てきました。

じつは、最新の脳科学とスポーツ心理学によって、積極的に動けない「本当の原因」と「対策」がはっきりわかってきています。

そこで今回は、今日からご家庭で実践できる方法をわかりやすくお伝えします。

ぜひ最後までお付き合いください。

「受け身」になる2つの原因と、今日からできる3つの習慣

お子さんが一歩引いてしまう理由は大きく2つ考えられます。

それは、「大人のコントロール型の関わり」と「失敗を恐れる心の防護壁」です。

この2つの原因を理解した上で、スポーツ心理学の研究が示す「3つの習慣」を実践してみましょう。

そうすると、自ら動ける子に育てていくことができます。

「受け身」になってしまう2つの本当の原因

指示待ちになるのは、子どもを取り巻く環境に原因があると考えられます。

原因1:大人の「コントロール型」の関わり
親や指導者が「ああしろ、こうしろ」と威圧的に押しつける。

こうした関わり方は、子どもの「自分で決めたい」という大切な気持ちを奪ってしまいます(Huらの研究:2023)。

大人がすべてを決める環境では、自ら考えて動く意欲が削がれてしまいます。常に評価を気にして行動を控える「指示待ち」の姿勢を生み出してしまうんです。

たとえば、監督から「何か質問は?」と聞かれた瞬間、「変な質問をして怒られたら……」という不安が先に立ちます。

ふだんから大人に決めてもらう環境にいると、自分で判断する「脳の筋肉」が育ちにくくなります。そして、「とりあえず黙っておこう」という反応になってしまいます。

これは意志の弱さではなく、環境がつくり出した問題といえます。

原因2:失敗を恐れる「心の防護壁」
お子さんの受け身な姿勢は、自分の心を守るための盾(たて)です。

心理学では「セルフ・ハンディキャッピング」と呼ばれる行動があります。これは、失敗したときに「才能がないからだ」と思われるのを防ぐため、無意識に言い訳をつくってしまう行動のことです(Xing et al., 2018)。

このワナにはまりやすい原因の一つが「才能を褒めること」です。「ホームランなんてすごいね!」などと言われた子どもは、失敗を「能力のなさ」の証明として受け取るようになります(Xing et al., 2018)。

三振したら、もうすごいと思ってもらえない」という恐怖が、挑戦を避けるパターンを生み出すんです。

たとえば、難しいゴロにわざと一歩目を遅らせる。「足が動かなかったから」と言えば、才能のせいにされずに済むと考えるからです。

さらにコントロール型の関わりが重なると、「どうせ自分で決めても変えられない」と感じてしまいます。結果的に、指示待ちはさらに深くなります(Hu et al., 2023)。

受け身の子の内側には、実は「失敗したくない」という真剣な思いが隠れています。

なぜ子どもの思考を止めてしまうのか、さらに詳しく知りたい方は「考えて打て」は間違いだった!? 子どもの動きを止めるNG指導の正体とはもあわせてご覧ください。

今日からできる3つの習慣

原因がわかれば、対策は明確です。

「性格を変えよう」ではなく、「心の仕組みに合わせた環境を整える」。それだけで十分です。

習慣1:ミスの「意味」を書き換える台本を渡す
ミスの後にかける言葉を変えるだけで、子どもの反応が変わります。

最新のスポーツ心理学研究は、感情を無理に押し込めると、将来のメンタル不調のリスクを高めると示唆しています(Regborn et al., 2025)。一方、起きた状況の「受け取り方を変えること」が、そのリスクを下げることを示しています(認知的再評価)。

試合後、こんなやり取りをしてみてください。

子ども:「またチャンスで打てなかった……ぼくはダメだ」

(自ら口に出せない子のほうが多いかもしれません)

親:「あの打席、厳しいコースをしっかり見逃せていたね。”相手が一番嫌がるバッターに近づいたね

才能」ではなく「プロセス」に目を向けること。起きた事実を「失敗」から「成長のデータ」へ変換する言葉を渡してあげましょう。

この小さな積み重ねが、失敗を恐れず挑戦できる子を育てていくはずです。

習慣2:「選択」を与えて自律性を育てる
子どもに「自分で決める経験」を積ませることが、積極性の土台になります。

自分で選ぶ経験を積ませること(自律性支援)は、子どもの回復力(レジリエンス)と積極性を高めることが複数の研究で確認されています(Gao et al., 2024;Zhang et al., 2025)。

自分で決めた」という感覚が、意欲の回路を動かし、グラウンドでの一歩目を速くするのです。

今日は素振り50回にするか、シャドーピッチング10分にするか、自分で決めてみて

たったこれだけの言葉で十分です。自ら考えて動く力を育んでいきましょう。

習慣3:帰りの車内や家庭を「安全基地」にする
練習後の親のひと言が、子どもの積極性を大きく左右します。

研究では、練習後や帰りの車内での親のコミュニケーションが、子どもの心理に大きく影響することが示されています(Tamminenら:2022)。

なぜあそこでミスしたの?」と結果を責めるのは避けましょう。お子さんの意見に耳を傾け、努力や態度を認める会話を心がけてください。

車内や家が「結果に関わらず愛されていると実感できる安全基地」になることで、子どもは失敗を恐れず行動できます(Burke et al., 2023)。

もし「監督に質問する」のがまだハードルが高いなら、家でのこの一言から始めましょう。

今日の練習で、一つだけわからなかったことを教えて

この習慣が、自分から問いを発する力を少しずつ育てていきます。

「自分で決める経験」を積ませたいけれど、そもそも自主練に取り組まないというお子さんには、【野球は好きなのになぜ…?】子どもが”自主練”をしない5つの心理的理由が参考になります。

今回のまとめ

「うちの子は消極的だから……」とあきらめる必要は、一切ありません。

子どもは、適切な関わりと環境があれば、何歳からでも変わる力があります。今の環境に「足場」を少し足してあげましょう。

今日できることは、たった一つでいい。お子さんの「工夫や努力」を一つだけ見つけて声をかけてあげてください。

いつか練習で、お子さんがコーチのところへ歩み寄り「さっきのプレーについて質問してもいいですか?」と声をかける日が来ることを期待しましょう。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡くださいね。

あなたからのご連絡をお待ちしています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参照文献

Regborn FF, Holmström S, Svensson M and Sjögren M (2025) Emotion regulation and mental health in young elite athletes. Sports 13(9):284. doi: 10.3390/sports13090284

Zhang N, Du G and Tao T (2025) Empowering young athletes: the influence of autonomy-supportive coaching on resilience, optimism, and development. Front. Psychol. 15:1433171. doi: 10.3389/fpsyg.2024.1433171

Gao Z, Chee CS, Norjali Wazir MRW, Wang J, Zheng X and Wang T (2024) The role of parents in the motivation of young athletes: a systematic review. Front. Psychol. 14:1291711. doi: 10.3389/fpsyg.2023.1291711

Tamminen KA, Bissett JE, Azimi S and Kim J (2022) Parent and child car-ride interactions before and after sport competitions and practices: Video analysis of verbal and non-verbal communication. Psychol. Sport Exerc. 58:102095. doi: 10.1016/j.psychsport.2021.102095

Burke S, Sharp LA, Woods D and Paradis K (2023) Advancing a grounded theory of parental support in competitive girls’ golf. Psychol. Sport Exerc. 66:102400. doi: 10.1016/j.psychsport.2023.102400

Xing S, Gao X, Jiang Y, Archer M and Liu X (2018) Effects of ability and effort praise on children’s failure attribution, self-handicapping, and performance. Front. Psychol. 9:1883. doi: 10.3389/fpsyg.2018.01883

Hu Q, Li P, Jiang B and Liu B (2023) Impact of a controlling coaching style on athletes’ fear of failure: chain mediating effects of basic psychological needs and sport commitment. Front. Psychol. 14:1106916. doi: 10.3389/fpsyg.2023.1106916

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