【脳科学が証明】5月に「野球やめたい」が急増する脳の正体

今回お伝えする内容です
【脳科学が証明】5月に「野球やめたい」が急増する脳の正体
こんなご相談がありました。
ゴールデンウィークが終わった数日後の夜。
「……もう、野球やめたい」
帰ってきたお子さんが、玄関でバットを下ろし、ボソリとこう漏らしたそうです。
昨日まで楽しそうに白球を追いかけていたのに、急にどうして?
その方は、
「うちの子は、精神的に弱いのだろうか?」
「ここで辞めさせたら、何でも投げ出すのがクセにならないか?」
そう心配されていました。
実は、5月のこの時期に出る「やめたい」という言葉には、お子さんの気持ち以外の理由が隠れています。
こんにちは。ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
「うちの子、急にやる気がなくなってしまって…..」そんなご相談を、35年以上の指導の中で何度も受けてきました。
じつは、最新の脳科学とスポーツ心理学によってわかってきたことがあります。5月の不調は「心の弱さ」ではなく「脳の状態」が原因だったんです。
それが何かを知るだけで、声のかけ方も、見守り方も、ガラリと変わります。
ぜひ、最後までお付き合いください。
この時期の子どもの脳内で何が起きてるのか?
5月のお子さんの「やめたい」には、ちゃんと理由があります。
それは精神論では片づけられない、脳の生理的な変化です。
成長期の脳は、神経回路を作り変える「大工事」の真っ最中なんです。そこに春特有の気圧変化が加わると、脳がエネルギー切れを起こします。
まず、その原因を脳のしくみから解説します。
そして最後に、今日からおうちでできる3つの具体的な対処法をご紹介します。
「やめたい」は”脳のエネルギー不足”
うちの子が、野球をやめたいと言ったとしたら?
多くの場合、その理由は「脳のバッテリーが空っぽになっている」サインです。
成長期の脳は、普段からエネルギーを大量に使っています。そこに春の気圧の変化が、自律神経(体の調子を自動で整えるしくみ)に大きな負担をかけてしまいます。
脳の中には「やる気」や「感情」をコントロールする部分があります。それが前頭前野(ぜんとうぜんや)です。
ここは、いわば「脳の高機能バッテリー」です。
最新の研究で、ある事実がわかってきました。子どもの前頭前野は、神経細胞同士をつなぐシナプスの密度が、大人の2〜3倍も高いんです。
お子さんの脳は、今まさに神経回路をつくり変えて、必要な回路を強化する作業中なんです。
ただ、この「脳の工事」には、想像以上のエネルギーがかかります。
そこに、春の気圧の乱高下が重なるとどうなるか?
自律神経がフル回転で、体の調整を続けます。この負担が、脳内で幸せを感じる神経伝達物質(セロトニン)のバランスを崩してしまうんです。
その結果、脳は自分を守るために「外に出たくない」「休みたい」というブレーキをかけます。
「バットを振る力が湧かない」「グラウンドに向かう足取りが鉛のように重い」
これは、怠けではなく脳が出しているSOSなんです。
だからこそ、対処の方向性も変わってきます。
なお、脳が低エネルギー状態のときに練習を増やすと何が起きるのか、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【少年野球の落とし穴】スランプ中は練習を増やしてはいけない脳科学的な理由

「励ます」は正しいけど…
お子さんを励ますのは、親としてまっすぐな愛情表現ですね。
でも、その励ましには「脳の状態を見る」という視点が足りていない場合があります。
脳科学には、主観的運動強度(RPE)という言葉があります。
これは「脳が感じるきつさのボリューム」のようなものです。脳が疲れていると、このつまみが勝手に最大まで回ってしまいます。
つまり、同じ練習でも、脳が疲れている日は「いつもの3倍しんどい」と感じてしまうんです。
最新の研究でわかってきたことがあります。それは、脳が疲弊すると、普段なら当たり前に捕れるゴロをトンネルしたり、正確な送球ができなくなったりするんです(Yuan et al., 2023)。
これは、体は動いていても、脳が「正確な命令」を出せなくなっているからです。
ここで「もっと頑張れ!」と声をかけるとどうなるか?
それは、ガス欠で止まった車に、無理やりアクセルを踏み込ませるようなものです。疲れ切った脳に「頑張れ」を続けると、エンジンである心が焼き付いてしまう。本当の燃え尽きにつながりかねません。
一度ピットに入って、脳に給油すること。それが、気持ちの回復への最短ルートになります。
ちなみに、脳が疲れているときに「考えて動け」という指示が子どもの動きをどう止めてしまうのか、こちらの記事でも紹介しています。
関連記事:【脳科学が警告】「考えて打て」は間違いだった!? 子どもの動きを止めるNG指導の正体とは

今日からできる「生活リズム調整」
まずは、空っぽになった脳のバッテリーを物理的に充電してあげましょう。
「光」と「睡眠」、このたった2つの習慣で、脳の回復スピードは大きく変わります。
▪️朝の日光浴(脳のリズムを整える)
朝起きたら、1分でいいので、ベランダや庭に出てください。
目から入った光は、脳の体内時計や、感情をコントロールする部分(扁桃体など)に直接届きます。これがバッテリーの充電プラグの役目を果たすのです。
カーテンを開けて部屋に光を入れるだけでも効果があります。
▪️睡眠時間の固定(脳の工事時間の確保)
前頭前野を成熟させ、神経回路を整えるには、質の高い睡眠が欠かせません。
寝る時間と起きる時間を固定することで、脳内の不要な神経回路を整理する脳の働きがスムーズに進みます。これが、ストレスに強い脳を育ててくれます。
朝寝坊は、脳に「時差ぼけ」を起こさせます。これが5月病を悪化させる大きな原因につながります。
昨夜よりも15分だけ早く布団に入り、脳内の工事時間を延長しましょう。
寝る最低1時間前にはスマホやゲームの画面を消し、脳の興奮を鎮めましょう。
つまり、特別な道具も気合もいりません。
また、生活リズムと並んで、練習の詰め込みが脳に与える過負荷についても同様の問題があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:【緊急提言】子どもの野球は”詰め込み練習”が逆効果!海外の常識はどうなってる?

「やめたい」と言われたときの親の”声かけ”は?
もしも、お子さんが「やめたい」と言ったとき、親にできる最高のサポートがあります。
それは、感情を理解し受け入れることです。
その時に注意したいのは、「詰問」にならないことです。なぜなら、理由を問い詰めるほど、お子さんの脳はますます疲れてしまうからです。
たとえば「なぜ自分だけこうなったのか」と、理由を深掘りしてしまうお子さんもいます。こうしてグルグル考え続けてしまう思考パターンが、パフォーマンスを下げることもわかっています(Chen et al., 2025)。
つまり、「なんで辞めたいの?」という問いは、曇った眼鏡でバッターボックスに立たせるようなものなのです。
代わりに、こんなふうに声をかけてみてください。
「最近、気持ちが重くなっているんだね」
「気圧のせいで体がだるくなってるのかもしれないね」
今の生理的な状態を、そのまま言葉にしてあげるのです。
「親が自分のしんどさをわかってくれた」
そう感じた瞬間、お子さんの脳は「心理的な安全基地」にたどりつけます。
脳の張り詰めた緊張がゆるむと、自然と「また明日、バットを振ってみようかな」という意欲が戻ってくるかもしれません。
さらに、「今日、練習を工夫するとしたら何ができる?」と小さな変化をつくってみるのも効果的です。
つまり、声のかけ方を変えるだけで、お子さんの脳のスイッチが切り替わる可能性が高まります。
さらに、子どもが自分で決める感覚(自律性)を育てる親の関わり方が、燃え尽きを減らします。こちらで詳しく解説しているので確認してください。
関連記事:【要注意】反抗期の子どもと野球…”燃え尽きる子”と”伸びる子”を分ける親の関わり方

今回のまとめ
5月の気持ちの不調は、「季節の生理現象」のようなものです。
今日から「15分早く寝る」「朝1分だけ外に出る」習慣をつくってみてください。
お子さんには、ちゃんと回復する力があります。
今回の内容を参考にして、サポートしてあげてくださいね。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡くださいね。
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最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参照文献:
Kolk SM and Rakic P (2022) Development of prefrontal cortex. Neuropsychopharmacology 47:41–57.
Yuan R, et al. (2023) The effects of mental fatigue on sport-specific motor performance among team sport athletes: A systematic scoping review. Front. Psychol. 14:1143618.
Regborn, F.F.; Holmström, S.; Svensson, M.; Sjögren, M. (2025). Emotion Regulation and Mental Health in Young Elite Athletes. Sports, 13, 284.
Zhang, N., Du, G., & Tao, T. (2025). Empowering young athletes: the influence of autonomy-supportive coaching on resilience, optimism, and development. Front. Psychol. 15:1433171.
Braz, D., Maia, C., Gouveia, É., Monteiro, D., Couto, N., & Sarmento, H. (2025). Passion, Motivation, and Well-Being in Young Footballers: A Systematic Review. Healthcare, 13, 3273.
Chen, D-T., Nien, J-T., Geng, X., Yu, J., Singhnoy, C., & Chang, Y-K. (2025). Relationship between ruminative dispositions and perceived sports performance in young elite athletes in Hong Kong: the role of problem-oriented coping strategies. Front. Sports Act. Living 7:1513277.
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