【小中学生投手に警告】試合前と試合中に絶対NG!科学が証明した「6つの間違い」

今回お伝えする内容です
【小中学生投手に警告】試合前と試合中に絶対NG!科学が証明した「6つの間違い」
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
お子さんの投手としての調整法、正しくできている自信はありますか?
そもそも、「正しい調整法」がよくわからないということはないでしょうか?
投手として試合で結果を出すためには、「試合前に絶対にしてはいけないこと」があります!これから、その法則6つを詳しく解説します。
「何か球の走りが悪い」
「試合で突然コントロールが乱れる」
「スタミナ切れ…」
これらは、全て調整ミスが原因です。
正しい調整法を知らずにいると、パフォーマンスは上がらずケガのリスクも高まってしまいます。これは、数多くの研究が明らかにしている事実なんです。
これからお伝えする内容は、私の35年以上の研究と指導で実証されている具体的な法則です。
お子さんに、「次の試合で失敗させたくない」という場合には、必須の内容になっています。
ぜひ、最後までお付き合いください。
大事な試合で崩れないための必須条件
お子さんの試合前のコンディション調整、どう管理していますか?
もしかして、「大会前日もいつも通りみっちり練習」なんてことはないですよね?
大会前日は、「しっかり調整=しっかり練習」ではないんです。スポーツ科学の研究で明らかなのは、試合前の「やりすぎ」がパフォーマンス低下を招くということです。
ここからは、大事な試合で崩れないための調整法について解説します。
試合前日に絶対してはいけないこと
お子さんには、試合でいい結果を出してほしいですよね。
もしかしたら、試合前日は「明日はいい投球を!」と考えて、ブルペン投球をしているかもしれません。
実はそれ、科学的に見ると逆効果になっている可能性があります。
練習の「タイミング」を間違えると、お子さんの努力が無意味になる可能性があるんです。
特に試合前日は要注意です!
お子さんのためを思うなら、試合前日は次の練習を避けてください。
- 高強度の投げ込み
- 遠投
- ブルペン投球
これらの強度の高い練習は、翌日の試合で力を発揮する妨げになります。
では、何が必要なのでしょうか?
それは、質の高い練習と適切な休息を組み合わせることなんです。これが、試合でのパフォーマンス最大化に必要なこと。
つまり、科学的根拠に基づいた戦略が重要だということです。
ちなみに、メジャーの投手は、もちろん試合前日のブルペン投球はしません。

なぜ前日の高強度練習が逆効果なのか?
「試合前だからこそ、しっかり投げて調整しないと不安」
そう感じるかもしれませんね。しかし、スポーツ科学の研究では、意図的な練習(Deliberate Practice)が大切だと強調されています。
意図的な練習によって心身に負荷をかけた後は、その負荷からの回復が必要。お子さんには、身体が適応する時間が必要です。
つまり、努力を伴うトレーニングと、休息・回復のための適切な時間のバランスが不可欠ということ。
試合前日に高強度の練習を行う弊害は何でしょうか? それは、心身が疲労したまま本番を迎えることです。
その結果、どうなるでしょうか?
- 球速が落ちる
- コントロールが乱れる
- ケガのリスクが高まる
特に注意したいのがケガ。疲労した状態で投球を続けると、肩やヒジのケガの原因になります。これは、多くの研究が指摘していることです。
疲れを残して試合に臨むようでは、お子さんが本来持っている力を発揮できるはずがありません。
なお、パフォーマンスを最大化する意図的な練習については、【練習は質が9割】驚くほど上達!親子で始める「意図的な練習」3つの極意も参考にしてください。

試合前日の調整法
高いパフォーマンスを発揮するためにも、前日は賢く休みましょう。
おすすめの調整法は以下の通りです。
- 軽いキャッチボール
フォームを確認する程度で、距離も短く、球数も少なくします。 - ストレッチや軽いジョギング
身体をほぐし、リラックスさせることを目的とします。 - 十分な栄養と睡眠
身体の回復と成長に最も重要な要素です。
難しいことは何もありません。
「前日は疲れを残す練習をしない」というシンプルなルールを守るだけです。これだけで、お子さんは試合で自分の力を最大限に発揮できる可能性が高まります。
参考までに、メジャーの投手は、試合前日にキャッチボールをします。これは、指先の感覚を確かめるために行っているそうです。
これは、ホロス・ベースボールクリニックの提案です。小中学生でも、翌日の試合で登板予定ならば、全体とは別メニューでいいと考えています。
馴染みのないことかもしれませんが、今のうちから根拠のある調整法を知ることが重要です。これが、お子さんがケガをすることなく活躍する将来につながります。

試合直前にしてはいけないこと
試合当日、お子さんはブルペンで何球くらい投げていますか?
「肩をしっかりつくらないと」と、多めに投げているかもしれないですね。でもそれは、パフォーマンスにとっては悪影響。
結論から言えば、試合前のブルペンでの過度な投げ込みは避けるべきです。これは、単に体力温存だけではありません。
初回に最高の状態でマウンドに上がるための、科学的根拠に基づいた調整なんです。
試合前のブルペンは、最終調整の場です。
その日の調子を確認し、体を投球モードに切り替えるのが目的です。ここで何十球も投げてしまうと、試合前に筋肉や神経が疲労してしまいます。
その結果どうなるか?
- 球威が落ちる
- 制球が定まらない
- 試合の後半でスタミナが切れる
試合途中で急に制球が乱れることがあるとしたら、もしかしたらブルペンでの投球数が影響しているかもしれません。
1日の全体の投球数が多くなれば、ケガのリスクも高まります。そうならないために、今日からできる2つのルールをご紹介します。
- 目的を明確にする
ブルペンは「調整」であり「練習」ではないことを理解する。 - 球数を決める
たとえば「全力投球は15球まで」と決めておく。
軽めのキャッチボールを丁寧に行えば、少ない球数でも効率的に肩をつくれます。ただ、これは常に単一の方法ではなく、その日の体調や感覚に合わせて最適化する必要があります。
いずれにしても、試合で最高のスタートを切る秘訣は、直前の「やりすぎ」を我慢することです。
これだけは、徹底して欲しいと思います。
また、試合でパフォーマンスを高めるには、正しいウォーミングアップ、クーリングダウンが欠かせません。
それについては、野球選手に多い、肩やヒジなどのケガを避けるために習慣にしたいことを確認してください。

試合で避けたいこと
最近では、チームの人数が限られているため、投手と捕手を兼任する選手がいるようです。
「チームのために」という頑張りが、実は深刻なケガのリスクを高めている可能性があるのです。
アメリカスポーツ医学研究所(American Sports Medicine Institute)で行われた、10年間にわたる研究報告があります。
そこには、投手が捕手を兼任した場合、深刻なケガのリスクが、なんと2.7倍に跳ね上がることが記されています。
つまり、お子さんの体を守り、長く野球を続けてもらうには、同日の兼任は避けるべきです。
なぜなら、どちらも同じ腕を酷使するポジションだからです。
同じ日に投手と捕手を兼任するということは、投手としての投球数に加えて、捕手としての返球数が加算されます。盗塁やけん制のための送球も加わります。
これでは、1日の許容量をはるかに超える負担を強いることになってしまいます。
また、疲れてくると、子どもたちは下半身や体幹をうまく使えなくなります。すると、腕の力だけに頼った「手投げ」になりがちです。
この状態は、リトルリーグショルダー(上腕骨近位骨端線離開)やリトルリーグエルボー(内側上顆骨端症)といった投球障害を引き起こす直接的な原因になります。
チーム事情がある場合でも、お子さんの将来に関わる問題です。兼任の危険性を指導者と共有し起用法を見直すよう提案しましょう。
ちなみに、肩ヒジのケガの危険信号を見分ける方法を【ケガで野球をあきらめないために】”体の個性”を知れば肩やヒジのケガを予防し野球が上達する!で解説しています。

大事な試合の直前にしてはいけないこと
「投球を安定させるためにフォームを修正しないと…」
「もうひとつ武器があれば…」
大会直前に、急いでフォームを修正したり、変化球を教えるのは危険です。
スポーツ科学では、スキルの習得には「長期間の反復練習が不可欠」だと分かっています。
ピッチングのような複雑な動作は、何千回もの反復で身体に染み込んでいきます。これは「神経系のプロセス」に基づいた科学的な法則なんです。
では、試合直前の大幅な変更はどう悪影響があるのでしょうか?
今まで覚えていた動きと新しい動きが衝突し、身体のコーディネーションが崩れてしまいます。 その結果、コントロールが定まらず、球速が落ち、ケガのリスクも高まります。
ですから、大幅な変更は次のオフシーズンまで待ちましょう。今は、一番自信のあるフォームを繰り返し確認することが大切です。
これだけは覚えておいてください!
試合で本当に頼りになるのは、何度も繰り返して体に染み込んだ自信のある動きだけです。
試合前は、「今までやってきたことを信じよう」と声をかけてあげてください。
なお、投球を安定させるためには、【重要ポイント】プロ並みの投球動作を身につけるための具体的な3つのアドバイスも参考にしてください。

今回のまとめ
試合前日は、高強度の投げ込みや遠投は避け、軽いキャッチボールやストレッチで体を整えることが大切です。
試合直前のブルペンでの投げすぎは禁物です。 あくまで「調整」と位置づけ、初回から最高の状態で臨めるようにしましょう。
投手と捕手の同日兼任は、深刻なケガのリスクを大幅に高めるため、避けるべきです。
大会直前にフォームを大幅に修正したり、新しい変化球を習得したりするのは逆効果になります。
万全のコンディションで試合に臨めるよう、正しい調整法を実践していきましょう。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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