「野球やめたい…」そうなる前に親として知るべきスポーツ指導の現状と課題

今回お伝えする内容です
「野球やめたい…」そうなる前に親として知るべきスポーツ指導の現状と課題
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
「うちの子、野球頑張ってるけど、最近なんだか元気がないな…」
「もしかして、『野球やめたい』って言い出すんじゃないか…」
そんな不安を抱えたことはありませんか?
実は今、多くの子どもたちが中学・高校と進むにつれて野球を離れています。
先日も、あるお父さんから「息子が高校では野球をやらないって言うんです…」という相談を受けました。実は、これは決して珍しいケースではありません。
なぜ、子どもたちは、野球を続けたいと思えなくなってしまうのでしょう?
そこで今回は、お子さんが野球を楽しみ続けられるよう、次のポイントをお伝えします。
- 子どもが野球を続けられなくなる本当の理由
- 大人の言動が子どもに与える影響とは
- 指導者や親が今すぐできる改善策
- 子どもの可能性を伸ばす新しい指導のかたち
この内容は、小中学生の全てのお父さん、お母さん、そして指導者の方々に知っていただきたい重要な情報です。
お子さんが、最高の笑顔で野球ができるように、ぜひ最後までご覧ください。
見逃している? 野球指導の危険な落とし穴
「スポーツが嫌い」という子どもの数が増えています。どうしてでしょうか?
スポーツ庁の調べでは、小学生の男子66.7%、女子51.0%が、地域のスポーツクラブに入っています(スポーツ少年団や習い事を含む)。

でも、気になるデータがあります。子どもたちは中学・高校と進むにつれて、スポーツから離れていくのです。
特に高校野球では、2024年度は10人に1人が途中で辞めてしまったというデータもあります。
その理由はさまざまだと思います。
中には、暴力や暴言を伴う指導や、過剰な勝利主義といった要因も含まれているようです。

では、具体的にどのような原因があるのでしょうか?
子どもを想う気持ちが逆効果?
全てのお父さん、お母さん、そして指導者の方は、子どもの成長を願っているはずです。
でも、その思いが強すぎて逆効果になることもあるようです。
大人は、つい気持ちが入りすぎてしまいます。「もっと上手くなってほしい」その気持ちが強すぎると、子どもの気持ちを置き去りにしがちです。
もしかすると、あなたの「良かれと思って」という行動も、実はお子さんにプレッシャーを与えているのかもしれません。
私は、高校の野球部に入った子が、ゴールデンウィーク前に辞めてしまうケースを何度も見てきました。

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?スポーツ庁の調査から、驚くべき事実が見えてきました。
小学生の時点で、男子の6.7%、女子の13.7%が「運動が嫌い(やや嫌い含む)」と答えています。さらに中学生になると、その数字は男子9.7%、女子23.2%まで増えていきます。

また、「中学校卒業後は運動を続けたいと思わない」という子どもは、男子で12.4%、女子で23.8%にものぼります。

この背景には、私たち大人の関わり方が大きく影響しているのです。例えば、こんな場面はありませんか?
- 練習メニューを細かく指示しすぎる
- 試合中に過剰なアドバイスをする
- エラーをした時に「何してるんだ!」と強い口調で叱る
- 試合後に「どうしてあそこで…」とミスを責める
誰よりも悔しい思いをしているのは子ども自身なのです。それなのに、頭ごなしに強い口調で叱責されれば、もっと気持ちが沈んでしまいますね。
確かに野球には勝敗があります。厳しい練習が必要かもしれません。でも、その厳しさが度を越えると、それがハラスメントになる可能性もあるのです。
具体的にどういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
ハラスメントだと思っていなくても…
野球指導の現場では、熱心な指導が実はハラスメントになっていることがあります。
「ハラスメント?まさか自分が…」
そう思う大人が多いかもしれません。でも、ハラスメントは「相手を不快や不安な状況に追い込む言動や環境をつくること」ですから、注意が必要です。
これは身体的な暴力だけではありません。言葉による攻撃や精神的な嫌がらせ、差別的な行為も含まれるのです。
ハラスメントは、とても広い概念なんです。
実は今、スポーツの現場では、ハラスメントが深刻な問題になっています。日本スポーツ協会(JSPO)には、ハラスメントの相談窓口がありますが、ご存知でしょうか?そこに寄せられる相談は、年々増加しているのです。
2023年度の相談件数は、過去最高の485件。前年度の約1.3倍でした。特に気になるのは、被害者の多くが小・中・高校生だということです。
これは深刻な問題ですね。

では、具体的にどんなハラスメントがあるのでしょうか?
ハラスメントには様々な種類があります。
◾️ 暴力
・平手打ちやげんこつ
・胸ぐらを掴む
・物を投げつける
これらは肉体的・精神的に傷つける不当な力の行使です。「軽く頭をたたく」程度でも、ハラスメントになり得ます。
◾️ 暴言
・「役立たず」
・「お前なんかやめちまえ」
・「バカヤロー」
・「帰れ」
こういった人格否定や乱暴な言葉です。何気ない一言でも、状況によっては相手の心を深く傷つけることがあります。
◾️ パワーハラスメント(パワハラ)
・必要以上に長時間叱る
・威圧的な態度で叱る
・無視や隔離をする
・過度な要求をする
・過小な要求をする
・舌打ちやため息を繰り返す
なぜ、野球の現場でこういったことが起きてしまうのでしょう?主な要因として、以下の6つが考えられます。
- 勝利至上主義
勝つためなら手段を選ばないという考え方。 - 集団主義
チームのまとまり、空気を重視しすぎて、個人の意見が言えなくなっている。 - 権力関係
立場の強い人が弱い人を支配すること。
実績のある指導者の言動に誰も異議を唱えられない。 - 負の連鎖
自身が過去に受けた指導方法、悪い習慣を繰り返してしまう。 - 指導方法の知識不足
暴力や暴言を使わない適切な指導方法を学ぶ機会がない。 - スポーツに対する誤認
「厳しい指導が当たり前」という固定観念がある。
このように、暴力や暴言を伴う指導を「当然」のことと受け入れてしまう大人がいるわけです。

では、私たちにできることは何でしょうか?
指導者や親は、
- 指導方法を常に見直し、学び続けましょう
- 選手を一人の人間として尊重しましょう
- 対等な関係づくりを心がけましょう
選手は、
- ハラスメントだと感じたら、我慢は禁物です
- 相談できる人や場所があることを知りましょう
お父さん、お母さんは、
- お子さんの様子を注意深く見守りましょう
- 普段と違う変化に気づいたら、すぐに相談を
- お子さんの話にじっくり耳を傾けてください
特にチームの運営者は、ハラスメントや暴力について正しい知識を持つ必要があります。誰もが安心して野球に取り組める環境をつくってほしいと思います。
もし、現在ハラスメントで悩んでいる方は、次の相談窓口があります。
◾️ 日本スポーツ協会「スポーツにおける暴力行為等相談窓口
https://www.japan-sports.or.jp/cleansport/tabid1349.html#list01
◾️ スポーツ庁「暴力・ハラスメント等相談窓口一覧」https://www.mext.go.jp/sports/content/20230623-spt_sposeisy-000014419_2.pdf
子どもを伸ばす指導の新しいかたち
野球に限らず、スポーツの試合には勝ち負けがつきますね。
あなたのお子さんも、勝ちたいと思って練習をしているはずです。指導者も親も同じ気持ちですね。
皆、子どもたちを勝たせたいと願っています。
練習試合でも、勝てばうれしいものです。努力が報われたと感じますよね。実際に、大会で優勝をした時の喜びは、何ものにも変え難い充実感があります。
でも、「勝つこと」にこだわりすぎると、指導が行き過ぎてしまうことがあります。
実は、野球には特別な背景があります。
はるか昔、団体行動や規律、忍耐力を重視する「軍事教育的な側面」が評価されていました。その名残が、「強制と服従の指導」という形で、今でも少なからず残っているわけです。
でも、これからの野球は違います。
大切なのは、指導者が一方的に教え込むことではありません。選手が自分で考え、判断する力を育むことが大切です。
例えば、こんな工夫はどうでしょうか?
- 練習メニューを選手と一緒に考える
- 試合の作戦を選手に考えさせてみる
- エラーやミスを責めず、次の改善策を一緒に考える
- 積極的なプレーには「ナイス トライ」と声をかける
- 悩みを相談しやすい雰囲気をつくる
これらは、全て「信頼関係」につながります。大人が子どもを尊重しながら成長をサポートすることができます。何より大切なことは、大人が自ら学び続ける姿勢を持つことです。

今は、スポーツ指導に関する科学的な研究も進んでいます。自分の経験や価値観だけでなく、新しい指導理論やコーチング法も積極的に取り入れていきましょう。
あなたのお子さんが、野球を通じて心身ともに健やかに成長できるように、私たち大人ができることを一つずつ実践していきましょう。
今回のまとめ
いかがでしたか?
今回は、親や指導者が知っておくべき、スポーツ指導の現状と課題についてお話ししました。
なぜ、子どもたちはスポーツから離れてしまうのか?
実は、私たち大人の熱心な思いが、時として逆効果になってしまうことがあります。具体的には、過度な期待やプレッシャー、ハラスメントなどです。
ハラスメントは、暴力や暴言だけでなく、精神的な攻撃や差別的な言動も含まれます。指導者に求められるのは、一方的な指導ではなく、選手が自分で考え判断する力を育むことです。
大人は、常に指導方法を見直し、学び続ける姿勢が大切です。
子どもたちの成長をサポートするためには、私たち大人が意識を変えることが必要です。そして、子どもたちを尊重し、共に成長していくことが不可欠ですね。
今回の内容が、より良いスポーツ環境づくりへの一助となれば幸いです。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
Mountjoy M, Rhind DJ, Tiivas A, Leglise M. Safeguarding the child athlete in sport: a review, a framework and recommendations for the IOC youth athlete development model. Br J Sports Med. 2015 Jul;49(13):883-6. doi: 10.1136/bjsports-2015-094619. PMID: 26084527; PMCID: PMC4484277.
Tuakli-Wosornu YA, Goutos D, Ramia I, Galea NM, Mountjoy M, Grimm K, Bekker S. Development and validation of the athletes’ rights survey. BMJ Open Sport Exerc Med. 2021 Nov 15;7(4):e001186. doi: 10.1136/bmjsem-2021-001186. PMID: 34824866; PMCID: PMC8593716.
M. I. Raas et al., “Gewalt und Missbrauch im Leistungssport,” Praxis, vol. 111, no. 4, pp. 205–212, Mar. 2022, doi: 10.1024/1661-8157/a003851.
引用:
スポーツ庁 令和6年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査 報告書https://www.mext.go.jp/sports/content/20241217-spt_sseisaku02-000039139_07.pdf
JSPOにおける暴力根絶に向けた取り組み
https://www.japan-sports.or.jp/cleansport/tabid1349.html#list01
JSPOスポーツ現場におけるハラスメント防止動画
https://www.japan-sports.or.jp/women/tabid1331.html
公益財団法人 日本高等学校野球連盟 部員数統計・硬式https://www.jhbf.or.jp/data/statistical/index_koushiki.html?utm_source=chatgpt.com
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