【プロでも頭は動く】「頭をブラスな」は間違い!?プロは”頭”と”目”をどう動かしている?

今回お伝えする内容です
【プロでも頭は動く】「頭をブラスな」は間違い!?プロは”頭”と”目”をどう動かしている?
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
「練習しているのに、なぜかバットに当たらない…」
そんなお悩みはありませんか?
その原因、動体視力の問題だと思いますか?
もしくは、空間認識能力でしょうか?
実は、答えは別にありました。
バッティング指導では、実にいろいろなことが言われます。そのひとつに「頭をブラすな」がありますね。でも、一流のプロ野球選手でも、分析をすると頭は動いているのです。
しかし、アマチュア選手とは違いがあります。あなたは、どんな違いがあると思いますか?
ということで今回は、次の内容をお伝えします。
- 空振りしてしまう本当の原因
- ”頭をブラすな”の正しい理解
- 課題を発見する4つのチェックポイント
これらは、海外の最新研究に加え、私の35年以上の研究と指導によって実践されている内容です。
特に、「頭をブラすな」の本当の意味については、新しい発見になるはずです。
お子さんに空振りが多いようでしたら、必ず役立つ最新情報です。
ぜひ、最後までお付き合いください。
空振りの原因は視線の不安定
お子さんのバッティング、なかなか思うようにいかないことも多いですよね。
野球指導の現場では、「ボールを手元までしっかり見なさい」とよく言われます。そのため、お子さんは打席でボールをしっかり見ようとしているはずですね。
それなのに、お子さんに空振りが多いとしたら…
それは「視線のブレ」に原因があるかもしれません。でもこれは、単に「ボールを見ていない」という話ではないのです。
一流のプロ野球選手の動きを知り、解決につなげていきましょう。
『頭をブラすな』は間違いだった!?
次のようなご相談をよくいただいています。
「バットに当てることができません」
「ボールの下を振ってしまいます」
たとえば、少年野球の指導現場では、「ボールをしっかり見なさい」という指導と同時に「頭をぶらすな」と言われることも多いと思います。
すると、「一切頭を動かすな」と言われていると考えがちですね。実は、2020年に発表された論文で興味深い報告がありました。
一流の打者は、飛んでくるボールに対して「頭を完全に固定」しているわけではないのです。むしろ、ボールの軌道に合わせて、頭(首)を、滑らかに回転させていたのです。
ここで、重要なポイントがあります!
頭は滑らかに回転していても、目の追跡角運動には変化が見られなかったのです。つまり、熟練した打者ほど、視線がブレずにボールをとらえ続けていると示唆されているのです。
これは、「中心視」でボールを見続けることができているとも言えます。
ただ、この一連の動きは、ほとんど意識していません。練習の積み重ねによって、自然と最適な動きができるようになっているのです
これが、バッティングにおける「見る技術」の重要な科学的原理と言えます。
つまり、「頭をブラすな」という言葉の本当の意味はこうです。
「頭をガチガチに固めろ」ではなく「ボールを正確に追うために、不必要に頭をブラすな」ということです。
あなたのお子さんも、この「正しいボールの見方」を理解し、練習に取り入れてみてください。
なお、見る力を鍛える具体的なトレーニングについては、【打撃指導の盲点】「球をよく見ろ」は正解。でもそれだけじゃ打てない!プロはどうしてる?を確認してください。

ボールに当たらないのは視線のブレ
「しっかり見ているはずなのに、なぜボールに当たらないの?」
そんな疑問を感じたことがあるかもしれません。「しっかりボールを見る」というのは、野球の基本です。
先ほどお話をしたように、一流打者は「頭を完全に固定」しているわけではありません。滑らかに回転しているにもかかわらず、視線がブレないのです。
その動きの中で、ボールを手元まで正確にとらえ続けているのです。
ここに、重要なポイントがあります!
一流選手は、視線がブレていないという点です。お子さんに空振りが多いとすると、おそらく視線がブレているのが原因です。
視線が安定しないとどうなるでしょうか?
視線が不安定だと、網膜上でボールの像がブレてしまいます。専門的には「網膜像スリップ」と言います。これは、眼球や頭部が動くことで、網膜上で像がずれる現象のことです。
ブレた情報では、脳はボールの正確な位置や速度を計算することが困難になるのです。つまり、ボールの軌道に関する視覚情報に悪影響を与えてしまいます。
わかりやすい例で説明しますね。
たとえば、手ブレのひどいビデオカメラの映像を想像してください。映っている内容が見にくくて、よく分かりませんよね。
お子さんのバッティングも同じです。視線がブレると、脳は正確なボールの情報をつかめません。結果として、バットが空を切ってしまうのです。
解決のカギは、「眼球を動かさない意識」です。この意識でボールを見続けることが重要なのです。
実は、これにはトレーニング方法がありますが、後日まとめてご紹介する予定です。
特に小中学生は、スイングの精度、安定性や再現性が低い傾向があります。それについては、【知らないとマズイ】飛距離が伸びない小中学生に共通する原因は3つ!その練習、逆効果かも!?で解説しましたので確認してください。
では、実際にお子さんの視線はブレているのでしょうか?
次にスイングをチェックする方法を説明します。

すぐできる!「視線のブレ」チェック法
小学生のフリーバッティングでは、何球も続けて空振りをする選手を見かけます。
しっかりボールを見ているのに、どうしてでしょうか?
実は「視線のブレ」だけでなく、視線と体の動きがバラバラになっている可能性があります。
でも大丈夫です! 客観的にスイングを観察すれば、原因を見つけることができます。
ちなみに、プロ野球選手でも、「客観的な観察」を重要視しています。専用の機器を使って、打撃パフォーマンスの課題を発見しているのです。
特に注意するのが、ボールを打つ瞬間の視線です。インパクトの瞬間に「頭がボールの位置にしっかり向いているか」をチェックしています。
プロ野球は、高度な専門機材を使っていますが、家庭でもできる方法があります。スマホがあればスイングをチェックすることが可能です。
お子さんのフリーバッティングを、真横から撮影してみましょう。それをスロー再生すれば、肉眼だけでは見えない細かな動きのクセが発見できるはずです。
では、次に具体的なチェックポイントを説明します。

こんな動きは要注意!視線がブレる典型パターン
お子さんのバッティング向上の課題、それは「視線のブレ」を少なくすることです。
これは、プロの一流打者から改善のヒントが得られます。一流の打者は、ミートの瞬間に「頭をボールの位置に向けて視線をずらさない」ことを重視しています。
研究によると、上級者と初心者では、バッティングでの頭の動きが違います。それをチェックするポイントが4つあります。
スマホで撮影したお子さんの打撃動画を見て、同じパターンがないかチェックしてみてください。
①頭の上下動
ステップやスイングの際に、頭が上下に大きく動いていないか?
頭が大きく上下動すると視線の安定性は損なわれてしまいます。正確なインパクトを妨げる可能性が考えられます。

②頭の突っ込み
インパクトの瞬間に、頭がピッチャー方向に突っ込んでいないか?
一流選手は、インパクト時に頭をボールの位置に合わせようとしています。頭が突っ込むと、ボールを適切に呼び込めません。それが、頭がボールの位置からずれてしまう非効率な動きにつながります。

③アゴが上がる動き
スイングの始動後に、アゴが上がっていないか?
アゴが上がってしまうと、視線がブレてしまいます。結果的にボールを正確にとらえる妨げになる可能性が高まります。

④頭の回転
スイングにつられて、頭が投手方向に回転していないか?
一流選手の頭の滑らかな回転は、投手側からインパクト位置に向けてわずかに起こります。大きく投手方向に頭が回転すると、インパクトのときに頭がボールの方向に向かなくなります。

この4つに加えて、インパクト直前からインパクトまでの視線もチェックしてみましょう。
自分では「ボールを見ている」と思っていても、実際は違っているかもしれません。
また、普段の素振りとフリーバッティングで違いがないか? 練習と試合での違いがないか? この点もチェックしてみてください。
試合の緊張した場面では、投手の投球の予測が難しくなります。すると、練習とは違う動きになっているかもしれません。
なお、バッティング時に行なっている3つのプロセスについて知ると、さらに能力アップにつながります。【最新事実】打てない・守れないなら必見!「見て一瞬で反応する脳」で野球を変える科学的秘密とは?も合わせてチェックしてみてください。
今回のまとめ
一流選手は頭を完全に固定せず、ボールに合わせて滑らかに動かします。でも視線はブレていません。
視線がブレるとボールの正確な情報を脳が処理できず、空振りにつながります。
スマホのスロー動画で、「頭の上下動」など、視線がブレる動きを確認しましょう。
インパクトの瞬間に頭がボールの方向に向いているのが理想です。
正しいボールの見方を理解すること。そして、自分の動きを客観的に知ることが上達への第一歩です。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
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Masahiro Kageyama12, Hajime Nakashima3, Hiroki Nakamoto4, Masafumi Fujii4 and Akira Maeda: Characteristics of baseball player bat-swing among subjects at different developmental stages and professionals.
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