【内田順三コーチ直伝】プロ野球選手だけに教えた打撃理論とは?
今回お伝えする内容です
【内田順三コーチ直伝】プロ野球選手だけに教えた打撃理論とは?
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
今回は、バッティングのボールの見かたについてです。
プロ野球のコーチは、ボールの見極め方を、選手にどのように指導しているのでしょうか?
以前にお伝えした「長打が打てるスイングの理論」が理解できていたとしても、まだバッティング力は十分とは言えません。
ボールをしっかりと見極める「目」の力がなければ、タイミングをつかむことができませんね。
野球のバッティングでは、ピッチャーから投じられたボールの球種やコースを瞬時に見分ける必要があります。
そして、打つか撃たないかを判断して体を動かす視覚反応が求められます。
つまり、視覚能力の向上なくして、バッティングの上達はありえません。逆に視覚能力を高めれば、バッティング力は飛躍的に伸びるはずです。
近年のプロ野球は、150キロを超える速球を投げ、同時に多彩な変化球を操る投手がたくさんいます。
テレビで野球を観ていると、「どうして、あんなワンバンするようなボール球を振ってしまうのだろうか?」そう思ったことがあるのではないでしょうか?
少年野球や中学生の投手の場合、変化球の持ち球は、それほど多くないと思います。
ですが、小中学生の野球でも、投手のリリース後およそ0.2秒で球種やコースを判断する必要があります。それと同時に、打つか打たないかを判断しなければなりません。
ですから、プロ野球界で37年にわたり打撃コーチを務めた名伯楽、内田順三コーチの理論は参考になるはずです。
もしも、バッティングがなかなか上達しないと感じているとしたら、今回お伝えする内容を最後まで見てください。
なぜなら、これからお伝えする内容を知ることで、バッティングのレベルを向上させることができるからです。
ちなみに、内田順三コーチは、私が広島のコーチ時代にバッティングコーチをされていてご一緒しました。名伯楽と言われるのは、プロ野球選手になった年から50年間、一度もプロのユニフォームを脱ぐことなく、プロ野球界に貢献された唯一の存在だからです。
ということで、今回はバッティングを飛躍させるボールの見方について解説をしていきます。
今回も、内田コーチが37年間のコーチ人生で、名だたる選手を一流に育てあげた実践メソッドと、科学的根拠に基づくメカニズムとともに解説をしていきます。
さらに、視覚反応のトレーニング方法についても最後に解説をします。
他では聞くことのできない内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
そして、お子様のバッティングのレベルを高めてください。
今回も参照するのは、「プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100:KADOKAWA」です。
それでは、はじめていきましょう。
ボールの軌道の理解と予測
バッティングの確率を高めるためには、ボールの軌道を正確に予測する能力が必要です。
キレのあるストレートは、打者にはホップしているように見え、変化球は手前で鋭く変化しているように見えます。
しかし、ボールの動きは、物理的に計測できる現象なんです。
どういうことかというと、ボールは投手の指先を離れる瞬間から、重力によって落下しはじめます。ですから、ストレートがホップするという現象は、実際にはありえません。
そして、変化球も手前で急に曲がっているわけではなく、実際は滑らかな放物線を描いて打者に向かってきています。
ボールがホップしているように見えたり、急に変化しているように見えてしまうのには理由があります。
それは、我々の「目」の機能上、仕方のないことでもあるのです。
例えば、本を読んでいるとします。
何も意識せずに本を読んでいると、私たちの目にはページ全体がはっきり見えているように錯覚してしまいます。
実際に本を開いて文字を見てみると一目瞭然です。
ページのある文字を注視して見てください。おそらく、2つから3つの文字がはっきり見えているはずです。そのまま視線を変えずに、しばらく本を見続けてみてください。
はっきり見えている文字の左右にある文字は、数文字程度は認識できると思いますが、少しボヤッと見えているはずです。
さらにその先にある文字になると、下のイメージのように、かなりボヤッとしてしまい、なんて書いてあるのかがわからないと思います。
このように、視線を固定した状態にするとわかりやすいのですが、私たちに実際に見えている範囲は、わずか1から2度の範囲しかないのです。
これを、専門的には「中心視」と言いますが、この中心視でボールをみ続けることは、とても難しいことです。
内田コーチはこう言っています。
ボールを見るという行為は、実は特殊なもの。訓練が必要だと思ってほしい。
プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100:KADOKAWA
プロ野球の場合では、150キロ以上で移動してくるボールを見極めることになりますし、少年野球では80キロから90キロ、中学生になると、速いボールで120キロ程度になると思います。
そして、ストレートでもボールは重力で落下しながら向かってきますし、変化球の場合は、球速も落ちます。
ボールは、スピンの掛け方で力の不均衡がその都度変化します。そのため、放物線の角度が投げるたびに変わってしまいます。
ですから、ボールの軌道を予測するには、内田コーチの言うように訓練が必要です。
小中学生の場合は、まずは投手のリリースポイントをしっかり見るように意識しましょう。
その際のアドバイスを確認しておきましょう。
集中力は長く続かない。だから、投手のモーションに早く集中しすぎないこと。
広い視野の中に投手を置き、手が上がってきたところで、リリースポイントあたりに焦点を当てる。ポールが手から離れる瞬間を見るように意識して訓練する。
プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100:KADOKAWA
このように意識をして、まずは自分から3m手前あたりまでボールの軌道を中心視でみるように練習を重ねましょう。
小中学生にとっては、決して簡単ではないと思います。でも、繰り返すことで効果は出ます。ですから、ボールを中心視で見続けることを意識して根気よく繰り返してください。
どのように見てタイミングをとるのか?
バッティングでは、タイミングを合わせることが重要だというのは、選手なら誰でも理解しているはずです。
でも、選手本人がしっかりボールが見えていると思っていても、タイミングよくボールがミートできるとは限りません。
それは、どこまでボールを中心視で見続けることができるのかと言うことが関係してきます。
これまでの分析結果からわかっていることは、ほとんどの選手はホームベースから6m程の距離で、ボールを打つかどうか判断しています。そして、その後にボールを追うために目を動かします。
目を動かすと言うことは、中心視でボールをみ続ける難易度も上がります。さらに、変化球になると難易度が上がることは想像できると思います。
そこでポイントになるのが、そのボールが打てると判断した後で、どれくらい中心視でボールをみ続けられるかということです。
例えば、3m手前で中心視を外してしまう場合と、1.5m手前まで中心視でボールを見続けられた場合では、結果が違ってきます。
見ることの大切さについて、内田コーチは次のように説明しています。
当然のことだが、頭が動くと目も動く。すると、ボールをしっかり見られない。頭は静止しておくべきなのだ。さらに、ステップしたときに頭が前に動いたり、上下したりするのも、ボールを見ることを妨げる。
プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100:KADOKAWA
そして、タイミングについては、次のように言っています。
タイミングはバッティングの中でも、もっとも重要と言えるのだが、そこには、大きな問題がある。実は、根本的にタイミングは教えられないのだ。
プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100:KADOKAWA
そして…..
机などであれこれと考えても、タイミングだけはそうそう、つかめない。動いて、その中で見つけることだ。
プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100:KADOKAWA
つまり、構えから始まりフォロースルーまでの一連の動きは、選手それぞれに感覚が違うということです。ですから、内田コーチは、選手それぞれの特徴や、その時のコンディションを把握して、様々な練習ドリルを考案したわけです。
小中学生におすすめするのは、振り遅れてもいいので、練習では十分に手元まで中心視でボールを見続けるようすることです。
中心視で見るというのは、「ボールが見えている」状態です。
スイングをしながらボールを中心視で見て、どのあたりまで見続けられたのかを、自分自身で判断することが重要です。
例えば、まずは3m先にミニコーンなどを目印に置き、その地点までボールを見続ける意識づけをしてみるのはどうでしょうか?
練習を重ねれば、中心視で見られるポイントも近くなるはずです。
そのほか、タイミングをとる上で大切なことは、トップを意識することです。
素振りの時から必ずトップをつくってスイングをしてください。トスバッティングやティーバッティング、そしてフリーバッティングでも、必ずトップをつくってからスイングをするようにしてください。
そして、トップをつくるタイミングも意識してほしいと思います。
できるだけ早く準備してトップがつくれるように、自分なりのタイミングを掴んでいきましょう。
繰り返しになりますが、バッティングで結果を出すためには、練習の積み重ね、反復が必要です。
しかし、成長途中の小中学生の場合、練習のやりすぎはケガのリスクを伴います。その点だけは注意をしながら、自分にあったスイングをつくっていってください。
見る技術を鍛えるビジュアルトレーニング
日本では、目のトレーニングをビジョントレーニングと呼ぶことが多いようです。
アメリカでは、視覚反応を向上させるトレーニングを、ビジュアルトレーニングと呼んでいます。
バッティングの確率をあげるためには、ボールの動きを正確に捉え、的確なタイミングで打つスキルが必要です。
そのためには、視覚能力を高めるビジュアルトレーニングが不可欠です。
ビジュアルトレーニングというと、日本で一般的に知られているのは、広範囲に目を速く動かすサッケードと呼ばれる眼球運動です。
親指を立てた両手を、左右、前後、上下、斜めなどに広げて、親指を交互に見る眼球運動ですが、すでに行っているかもしれませんね。
ただ、近年の研究では、この眼球運動がバッティングスキルの向上にはつながらない可能性があることがわかりました。
アメリカの実験では、大学生の打者がスイングをするとき、頭と眼球がほとんど動くことなく、ボールを目で追っていたのです。
つまり、技術レベルが高い打者の場合は、実質的に眼球が動いていないのです。ですから、親指の爪を交互に見るビジュアルトレーニングは、バッティングに必要な「見る力」に反映していない可能性があるわけです。
ただ見るだけ、ただ感知するだけでは、バッティングのパフォーマンスアップにはつながりません。
バッティングには、目で見て把握した目標に対して、素早く全身で反応する視覚反応が重要だからです。
この能力には、視覚を介した反応運動のスピードが求められます。
ですからバッティングの上達には、見て反応する視覚反応を高めるトレーニングが必要になるのです。
簡単にできるビジュアルトレーニング
残念ながら日本では、エビデンスのあるビジュアルトレーニングの報告は、今のところありません。
今もなお研究段階です。
ですが、アメリカの先行研究として公開されている、根拠のある情報を参考にして、いくつか提案できるトレーニングはあります。
まず、ボールに書いてある数字を読み取るというトレーニングです。
ボールに任意の数字を書きます。最初は、大きめに書くほうがいいと思います。
そのボールをトスします。
距離は任意ですが、初めは3mくらいからでもいいでしょう。また、最初のうちはボールを回転させないようにトスして、できる限り眼球を動かさず中心視で数字を見続けるようにします。
慣れてきたら、距離を伸ばしたりボールに回転をかけて難易度をあげていきます。
また、ボールに丸印を書いて、そのボールをティースタンドで打つというトレーニングもあります。
やはり、初めは大きめの印をつけて打つようにします。
そのボールを打つときに、できる限り中心視で印を見るように意識します。慣れてきたら、印を小さくすると効果的だと思います。
そして、キャッチボールをするときには、ボールの縫い目をしっかり見るようにします。
縦に回転しているとか、少し斜めに回転しているなどと、一球ごとにしっかりボールの縫い目を見てみましょう。
その時、頭と眼球が動かないように意識して、中心視でしっかりと縫い目を見るようにトレーニングすると効果的です。
今後は、日本でもエビデンスのあるビジュアルトレーニングが研究されていくことでしょう。また、近いうちにアメリカのトレーニング方法も取り入れられるようになるはずです。
ホロス・ベースボールクリニックとして、最新の情報をお伝えできるようにしていきます。
今回のまとめ
いかがでしたか?
今回は、バッティング力を飛躍させるボールの見かたというテーマで解説しました。
キレのあるストレートがホップしているように見えたり、変化球が急に曲がったように見えるのは、我々の目の機能が影響していることが理解できたと思います。
その上で、認識できたのは、ボールを見るためには訓練が必要だということでした。
また、タイミングよくボールをとらえるためには、眼球をできるだけ動かさず、中心視でできる限り長くボールを見ることが重要だということがわかったと思います。
ただ、タイミングには、人それぞれに感覚があります。それゆえに、内田コーチも、根本的にタイミングは教えられないと言っています。
いずれにしても、バッティングのスキルは、一朝一夕(いっちょういっせき)で向上するものではありません。継続的なトレーニングが必要です。
今回お伝えした内容を繰り返し確認して、バッティングのスキルを高めていってください。
今回参照した「プロの選手だけに教えてきたバッティングドリル100」を通じて、スイングの基本を確認しながら練習することが効果的です。
お手元に一冊おいておくことをおすすめします。
今回は以上です。
次回もまた、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球の上達に関するお悩みや、疑問点などがありましたら、いつでもご連絡ください。
引き続き、野球の上達のために頑張っていきましょう。
それでは、またお会いしましょう。
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