【バッティングの要】90%の小中学生ができない正しいトップのつくりかた

【バッティングの要】90%の小中学生ができない正しいトップのつくりかた

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

今回のテーマは 「強い打球を打つための正しいトップのつくり方」 です。

実は、動作分析をすると、ほとんどの小中学生のトップに問題点が見つかります。

「うちの子、なかなか強い打球が打てないんです…」
「スイングのどこを直せばいいのかよくわからない…」

よく耳にするお悩みです。

バッティングは、テイクバックで軸足に移動した重心を、踏み込み足に戻す力を利用します。その折り返し地点になるのがトップです。

トップは、バットを振り出す基点です。ここが正しくできないと、理想的なバットの軌道がつくれず、力強いスイングもできません

小中学生が理想的なトップがつくれない原因は、いくつかの研究でわかっていますが、それについては、この後に詳しく解説しますね。

また、トップで大切なポイントは、実はあまり知られていないようです。あなたは、トップで意識するポイントをどのようにお子さんに伝えていますか?

今回、トップをつくる時におさえておきたい6つのポイントをお伝えしますので、あなたの考えと照らし合わせてみてください。

どちらにしても、この内容を知らないまま練習をしていても、 力が十分に伝わらず、強い打球を打つことができません。

そこで、私の35年以上の研究と指導で得た知見をもとに、海外の最新の研究結果も加えて解説していきます。

今回の内容を最後まで確認すると、次のことがわかります。

  • なぜトップが重要なのか
  • 小中学生に多い問題のあるトップの特徴
  • 正しいトップをつくるための6つのポイント
  • ティースタンドの練習での注意点
  • 成長期特有の課題と対処法

これらは、バッティングがなかなか上達しないというお子さんにとって、とてもためになる内容です。

するどい打球を飛ばせるバッティングフォームを手に入れるために、ぜひ最後までお付き合いください。

トップがバッティングに与える影響

バッティングのトップとは、テイクバック後のバットを振り出す位置です。踏み込み足が着地した時の形がとても重要です。

このグリップの位置が踏み込み足から遠いほど、強いスイングが可能になります。

構えている時の手をキャッチャー側に引くことは、強いスイングのための助走だと言えます。

これは、構えた時の手の位置のままスイングするより、手を引いてから振ったほうが力強く打てるためです。

ただし、小中学生の場合は、このトップをつくる動きがうまくできないことが多いようです。

では、具体的に問題点を確認していきましょう。

小中学生のトップの特徴

深いトップをつくることは、強い打球を打つために欠かせない要素です。

弓矢を例にすると、矢を放つ直前に弓を強く引いた状態をイメージするとわかりやすいですね。

身近なところでは、輪ゴムを遠くに飛ばす時も同じですよね。後ろに大きく引くほど、遠くまで飛びます。

バッティングのトップも同じです。この時、投手寄りの肩を動かさず、バットを握る手だけをキャッチャー側に引くことが基本です。

でも、小中学生にとって、この動きがなかなか難しいようです。

実際の動作分析から、よく見られる課題を確認してみましょう。

まず、トップで捕手側に胸が向きすぎて、グリップが背中側に入りすぎている選手が目立ちます。

このとき、頭が同時に動いてしまうため、構えの時の視線が保てず、ボールをしっかりとらえられません。

反対に、振り遅れを気にするあまり、構えの位置から手がほとんど動かない、トップの浅い選手もいます。

トップの形にも様々な課題があります。

たとえば、バットのヘッドが背中側に下がりすぎたり、投手側に入りすぎている選手がいます。また、グリップの位置が高すぎたり低すぎる選手も多いですね。

そのほかには、踏み込み足のステップと同時に体が投手側に突っ込んでしまう選手。ステップしながら体幹が回転を始める選手も見られます。

それでは、なぜこのような問題が起きるのか、原因を探っていきましょう。

不適切なトップになる原因

トップでは、踏み出した投手寄りの足とグリップの距離を、できるだけ遠くにする必要があります。

この時、いわゆる「割れ」をつくり、骨盤と体幹を別々に動かすことが大切です。

理想的なトップから振り出しの動きは、次のようになります。

  • 頭はできるだけ動かさずに、骨盤を先にピッチャーの方へ回転させる
  • 腰の回転が止まり、体幹がピッチャーの方へ回転する

その回転の力が最大になったところでバットを振ることで、強い打球を打つことができます。

ただし、小中学生の場合は、これも難しい場合が多いですね。

なぜ難しいのか、アメリカの研究でわかっていることがあります。

年齢が低いうちは骨格や筋肉が未発達なため、体幹と骨盤を別々に動かすのが難しく、つい一緒に動いてしまいます。

体幹と骨盤を別々にコントロールするには、体幹を安定させる筋力と、骨盤を回転させる筋力の両方が必要です。

でも、筋力が不足している小中学生は体幹が固定できず、骨盤の回転に体幹も引っ張られ一緒に回転してしまいます。

また、下半身の筋力不足で、体重移動もスムーズにできません。

これらの発育に関する問題以外に、練習方法にも注意が必要です。アメリカの研究で、興味深い発見がありました。

ティースタンドでのバッティングとトスバッティングでは、体幹の使い方が違うことがわかったのです。

ティースタンドの方が、テイクバックで体幹がよりキャッチャー側に回転します。また、フォロースルーの体幹の回転も、ティースタンドを使ったほうが大きくなりました。

これは、ティースタンドはボールが静止しているためで、思い切り体を使えるからだと考えられます。

ティースタンドでのバッティングは、フォーム固めに有効ですが、トップを意識しないと逆効果になると言えます。

ですから、素振りの時からトップの形を意識することが大切なのです。

とはいえ、「誰も教えてくれなかった!プロが実践するスイング強化法」でも解説したように、理想的なトップには、基礎体力の発達が欠かせません。

基礎体力は、トレーニングによって伸びますが、成長期には別の問題も出てきます。

それは、身長が急激に伸びると、スイングスピードが一時的に停滞することがあるからです。

これは、身体のバランスが変化するため、今までスムーズだった動作が、ぎこちなくなってしまう「クラムジー」という現象です。

だからこそ、小中学生は安定した打撃フォームの習得を重視することが大切です。

正しいトップのつくり方

トップをつくる動作は、強い打球を打つための助走になります。

では、正しいトップをつくるために、どのようなことを意識するといいのでしょうか?

その6つのポイントを解説します。

  1. 適切なステップ幅
    ステップ幅が狭すぎても広すぎても、骨盤を回転させにくくなります。ほとんどの場合、ステップ幅は肩幅より少し広いくらいになるはずです。
  2. 投手側の肩が動かないように意識する
    構えからトップに入る時は、投手側の肩が動かないように意識します。
  3. 投手側の肩がアゴの下にくるようにする
    踏み込み足のカカトが着地した時に、投手側の肩がアゴの下にくるようにします。これで視線が安定します。
  4. バットの角度
    バットは投手寄りに45度程度傾け、グリップエンドは捕手方向を向くようにします。ベンチ方向には向けません。
  5. 手が後方に引かれボトムハンドは軽く曲がる
    キャッチボールのトップの位置を、トップハンドの位置の目安にします。手は軸足の真上くらいで、ボトムハンドは軽く曲がった状態になります。
  6. 重心を丹田に置く
    踏み込み足のカカトを着地する時は、丹田に重心を置き、両足に均等に体重をかけるようにします。

これらのポイントを意識しながらトップをつくります。そして、骨盤の回転に連動して体幹が回転するように素振りを行いましょう。

体幹の回転運動で生まれたエネルギーは腕に伝わり、それが最終的にバットのスピードになります。

その意味で、強いスイングの助走になるトップは、とても重要な要素なのです。

ぜひ自分のスイングを動画に撮って、踏み込み足のカカトが地面に着いた時の形を、この6つと照らし合わせて確認してみてください。

今回のまとめ

いかがでしたか?

今回は、強い打球を打つためのバッティングの要、「トップ」の正しいつくり方について解説しました。

重要なポイントを再確認しておきましょう。

  • 「トップ」は、バットを振り出す基点であり、強いスイングには欠かせない。
  • 小中学生は、筋力の未発達により、正しいトップをつくるのに苦労する。
  • しかし、適切なステップ幅、肩の動き、バットの角度、重心位置などの6つを意識することで改善できる。
  • ティースタンド練習は有効だが、トップを意識しないと逆効果になることもあるので注意が必要。

今回お伝えした6つのポイントを参考に、ぜひお子さんのスイングを動画で確認してみてください。

正しいトップを意識した練習を継続することで、必ず力強い打球が打てるようになります。

一歩ずつ着実にレベルアップしていきましょう。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。

あなたからのご連絡をお待ちしています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参考文献:

石橋秀幸著、レベルアップする!野球 科学・技術・練習、西東社

石橋秀幸著、野球体をつくる、西東社

内田順三著、プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100、 KADOKAWA

内田順三著、打てる、伸びる!逆転の育成法、廣済堂出版

Bordelon N, Fava A, Friesen KB, Crotin RL, Oliver GD. Kinematics of Hitting in Youth Baseball: Implications for Skill Development. Int J Sports Med. 2024 Sep;45(10):759-766. doi: 10.1055/a-2332-7408. Epub 2024 Jul 2. PMID: 38955208.

Punchihewa NG, Miyazaki S, Chosa E, Yamako G. Efficacy of Inertial Measurement Units in the Evaluation of Trunk and Hand Kinematics in Baseball Hitting. Sensors (Basel). 2020 Dec 20;20(24):7331. doi: 10.3390/s20247331. PMID: 33419341; PMCID: PMC7766213.

Tsutsui T, Sakata J, Sakamaki W, Maemichi T, Torii S. Longitudinal changes in youth baseball batting based on body rotation and separation. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2023 Nov 28;15(1):162. doi: 10.1186/s13102-023-00774-5. PMID: 38017563; PMCID: PMC10683358.

Development pattern of swing speed of batting in youth baseball players

Toshiharu Tsutsui1*, Wataru Sakamaki2, Toshihiro Maemichi1, Jun Sakata3 and Suguru Torii1

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