【投手育成のワナ】当たり前だと思っている練習が実は危険!科学が否定した常識とは?

今回お伝えする内容です
【投手育成のワナ】当たり前だと思っている練習が実は危険!科学が否定した常識とは?
お子さんの野球の練習、どれぐらい結果に結びつく内容になっているか、考えたことはありますか?
こんなご相談をよくいただきます。
「練習ではあんなにいい球を投げるのに、試合になるとなぜか突然崩れてしまう」
実は、日頃の練習の大半の時間が、無駄になっているというデータがあるんです。
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
スポーツ科学の調査データを知ると、きっと驚かれると思います。
なんと、チームの練習時間のうち、実際に上達のために身体を動かしている時間は、わずか25%〜54%に過ぎないというんです。
うまくなるために繰り返している「いつもの練習」。それが、お子さんの上達を妨げるワナになっている可能性があるとも言えます。
さらに、肩を強くするためや、速い球を投げるための練習にも、見直すべき点があることもわかってきています。
そこで今回は、「スポーツ科学が解明した投手育成のワナ」について解説します。
お伝えする内容は、私の35年以上の研究とプロ野球の現場で培ったエビデンスのある情報です。
球速アップや、コントロールをよくしたい小中学生投手が、今日から実践できる内容です。
ぜひ最後までご覧ください。
よかれと思った練習が、実は…
熱心な指導者ほど「もっと走り込め」「もっと投げ込め」と、量と根性に頼る指導をしがちです。
しかし、今のスポーツ科学で最も重要視されているのは、量ではなく”効率”(Pitching Efficiency)なんです。
たとえば、肩を強くすると思われている”遠投”。これも実は、多くの大人が誤解しています。
お子さんに、意味のある頑張り方を伝えるために、まずは科学が明かす「練習のワナ」を知ることから始めましょう。
科学が証明した”練習のワナ”
さきほど、チームの練習時間で実際に上達のために使っている時間は、わずか25%〜54%に過ぎないと言いました。
これは、ヨーク大学(カナダ)とオタワ大学(カナダ)の教授が発表したものです。
では、残りの時間は何をしているのでしょうか?
それは、順番待ちしていたり、道具の準備をしていたり、コーチの説明を聞いていたりする時間です。
つまり、「練習時間が長い=たくさん練習している」とは限らない、ということです。
それ以外にも、今までの常識を覆す事実が明らかになっています。
ちなみに、練習量の増加が逆に成長期のリスクになり得るという内容を【まだ信じますか?】たくさん練習すれば野球が上手くなる!それは成長期には通用しませんで解説しています。

遠投のワナ
肩を強くするために遠投をする。 それを疑う人はいないと思います。
しかし、高校生投手180人を対象にした研究で、遠投は諸刃の剣(つるぎ)だとわかりました。
遠投をするとき、「山なりに投げる」と遠くまで届くと聞いたことがありませんか?
ところが、上に向かって投げるフォームは、実際のピッチングとは違う動きになりがちです。しかも、フォームが乱れる原因にもなります。
実は、距離を伸ばして、上に向かって「山なり」に投げると、ヒジの靱帯を傷めるリスクが4.6倍〜10.7倍も高まることがわかっています。
さらに、助走をつけて投げると、つけない場合に比べて、ヒジの痛みを訴えるリスクが約2.8倍高くなるというデータがあります。
これらの数字は、あくまで高校生を対象にしたものです。
勢いで投げることは、まだ発達途中の体に過度な負担をかけるおそれがあります。小中学生であれば、なおさら気をつけなければいけません。
小中学生が遠投をするのであれば、次の点に注意をしましょう。
- 距離を競わない
実際のピッチングに近いフォームで投げられる距離を重視すべきです。 - フォームが崩れない距離で止める
正しいフォームを維持できる距離にとどめてください。 - ライナー(一直線)で投げる
ワンバウンドになってもいいので、ライナーで投げるようにしましょう。
無理に投げると体が開いたり、ヒジが下がったりしがちです。
フォームが乱れないライナー性の軌道で投げれば、ヒジの靱帯を傷めるリスクは大幅に低くなります。
遠投で肩を強くするというのは、「正しいフォームで、ライナー性のボールを投げる」という条件付きであれば有効です。
また、投手が試合前の調整でやってはいけないことを【小中学生投手に警告】試合前と試合中に絶対NG!科学が証明した「6つの間違い」で確認してください。

筋力のワナ
「速い球を投げる=肩を強くする」。これを疑う人はいないと思います。
球速には、肩の強さが必要と思われがちです。ところが、本当に重要なのは「股関節」の機能なんです。
特に大切なのは、軸足の股関節の柔軟性(外旋)や、左右両方の股関節を横に踏ん張る「外転筋力」です。
これらが不足すると、肩やヒジのケガに直結することがわかっています。
さらに、球速を出すために”腕を強く振る”のは逆効果です。
ヒジの負担を抑えて速い球を投げる選手は、「体幹の鋭い回旋」と「踏み込み脚の接地時の連動」をうまく使っています。
腕の力ではなく、体幹が腕を運ぶんです。
投球時にヒジの内側にかかる負担を「外反トルク」と呼びます。腕を強く振って力むと、この負担が大きくなってしまいます。
肘内側側副靱帯(UCL)という言葉を聞いたことがありませんか?
腕を強く振る意識は、ヒジの内側側副靱帯を損傷するリスクを高めるだけです。
球速アップとケガ防止を両立させる唯一のカギは、”運動連鎖”です。
下半身から生み出したエネルギーを体幹、そして腕へと効率よく伝える「運動連鎖(キネティック・チェーン)」。これを最適化する練習を取り入れてください。
ちなみに、野球歴1ヶ月の選手が球速を3キロアップさせた練習法について、【たった1セット】野球歴1ヶ月の子が球速3km/hUP…激変した投球練習の正体とは?で解説しています。

今回のまとめ
お子さんが、自信に満ちた表情でマウンドに立つ姿ほど、嬉しいものはありませんね。
科学に基づいたアプローチこそが、お子さんの持つ可能性を最大限に広げ、夢への距離を縮めてくれます。
そのためには、最新のバイオメカニクスの知識を持つ、専門家のアドバイスを受けるようにしてください。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡くださいね。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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