【打撃に悩む保護者必見】お子さんの打撃指導、その“常識”をアップデートしませんか?

【打撃に悩む保護者必見】お子さんの打撃指導、その“常識”をアップデートしませんか?

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

あなたは、お子さんの野球を見ていて、こう感じることがありませんか?

絶好球なのに、なぜ見逃すの?
どうして明らかなボール球に手を出してしまう?

バッティングが簡単じゃないのはわかっているけど…

つい「もっと集中しろ!」「強い気持ちで打て!」などと思ってしまいますよね。

でも、そんな声かけでは解決しません。

  • 絶好球を見逃す
  • ボール球に手を出す
  • タイミングが合わない

これらの原因が、私の35年以上の研究からわかってきました。それは、「バッティングの全ての出発点」とも言えます。

これにいち早く取り組むことで、お子さんのバッティング力を引き上げることが可能です。

おそらく、はじめて知ることだと思いますので、最後までしっかり確認してください。

見逃しや空振りは「予測エラー」が原因

バットが出ない、差し込まれる、緩い球を空振りしてしまう…

その原因は、脳がボールの到達するタイミングを読み違えているからです。

最新の科学研究により、バッティングにおける予測メカニズムがわかってきました。また、予測力は適切なトレーニングで改善できることも判明しています。

これから、このメカニズムを科学的根拠に基づいて解説します。

見逃し三振には科学的な答えがある

お子さんが試合で「見逃し三振」をしてしまったら、こんな風に思いませんか?

どうして、バットを振れなかったんだろうか?

実は、見逃し三振の裏には、脳の特別な働きが隠されているのです。

野球のバッティングには、想像以上に複雑な脳の働きが必要です。少年野球でも、ピッチャーが投げたボールは、わずか0.5〜0.6秒でバッターに到達します。

この短い間で、お子さんの脳は超高速で複数の処理をしているのです。

  • ボールがどこに来るのか予測
  • バットを振るか振らないかの判断
  • 球種やボールの軌道に合わせたスイング調整

これらを、たったのコンマ数秒で行っているのです。バッティングが難しい理由がわかりますよね。

実は最近の研究で、とても重要なことが分かってきました。

最も重要なのは「予測力」

研究から見えてきたのは、脳が最も重要視するのが「タイミングの予測」だということです。

たとえば、VR(バーチャルリアリティ)を使った興味深い実験があります。この実験では、ピッチャーが投げたボールを、手から離れた0.15秒後に見えなくしました。そして、ボールが手元まで見えた時とスイングを比べたのです。

驚くことに、プロ野球のバッターは、スイングのタイミングがほとんどズレなかったのです。

これは、優秀なバッターは、0.15秒という瞬間でボールが到達するタイミングを予測してると言えるわけです。

なお、プロ野球選手の予測力と見る力を高めるトレーニングについて、【打撃指導の盲点】「球をよく見ろ」は正解。でもそれだけじゃ打てない!プロはどうしてる?で解説していますので、併せて確認してみてください。

経験不足が引き起こす予測エラー

タイミングの予測がズレると、差し込まれたり泳いだりします。

バットの根本に当たってボテボテのゴロになったり、ボールが到達する前にスイングしてしまったりします。

あなたも、そんなシーンを目にしたことがありませんか?

お子さんの脳は、ピッチャーの投球に対し「このタイミングでスイングすればOK」と判断します。しかし、実際のボールがその判断よりも速く到達した場合、バットを振るタイミングが遅れます。

これが、まさに「差し込まれた」という状態です。

お子さんの野球経験が浅い場合、初めて対戦するピッチャーが多くなります。そのため、ボールのスピードや、軌道の予測が難しくなりがちです。

さらに、小中学生は体の発達により、対戦する投手の球速が上がります。そのため、同じ投手と対戦しても、予測がズレるケースが出てくると思います。

また、経験が浅いお子さんの脳内には、様々なピッチャーのデータが十分に蓄積されていません。すると、緩急の差がある投球に対応できず、泳いだり空振りしてしまうのです。

予測能力に個人差はあるのか?

お子さんの野球を見ていて「タイミングを合わせるのが苦手だな」と感じることはありませんか?

それは、タイミングを合わせる「予測能力」に個人差があるからかもしれません。

最新の研究から、私たちの「予測能力」には違いがあり、それが「脳波」に表れることもわかってきています。

でも、安心してください!

適切なトレーニングで、脳の働き方を改善できることがわかってきました。それは、お子さんの予測能力を伸ばせる可能性があることを意味します。

さまざまな研究でわかったこと

野球の熟練選手と初心者を比較した研究があります。この研究では、打席で「振るべきではない」ボールを判断する能力の違いを調べました

結果、熟練選手の方が優れていました。当然と言えば当然ですね。

さらに、脳の活動を詳しく調べてわかったことがあります。熟練選手が判断を下すとき、重要な役割を果たす脳の領域で、より強い活動が見られたのです。

これは、熟練選手ほど、適切な判断を下すために、脳が効率的に機能していることを示しています。そのため、素早く正確にボールの動きを予測できるわけです。

また、動くものの到着を予測する別の研究では、トレーニング後に脳波が改善したことがわかりました。

研究者たちは、視覚運動トレーニングを通じて、予測能力を向上させることが重要だと指摘しています。

たとえ今、お子さんに「見逃し三振」や「タイミングのズレ」があっても諦める必要はありません。科学的なアプローチで予測力を鍛えることができます。

トレーニングによって、お子さんの隠れた可能性を大きく引き出すことが可能な時代になってきました。

今は脳を鍛えるタイミング

特に野球初心者や小学校の低学年選手は、まだスキル獲得の初期段階です。そのため、スイングの精度が低く、安定性に欠けている傾向があります。

つまり、この時期の予測の失敗は、お子さんの経験値から起こるものです。決してセンスや才能の問題ではありません。

脳の予測メカニズムが、まだ発達途上にある証拠だと考えてください。

むしろ、9歳から12歳にかけては「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、運動能力の基礎づくりの時期です。これからが、野球スキルを習得する最も重要な時期になります。

だからこそ、多様な投球パターンを経験させてあげましょう。ボールの軌道を最後まで見極めるトレーニングもしてください。

視覚能力を向上させることで、予測の失敗を減らすことができるようになっていきます。
ちなみに、野球に必要な「瞬時に見分ける力」の正体について、【最新事実】打てない・守れないなら必見!「見て一瞬で反応する脳」で野球を変える科学的秘密とは?で解説しています。確認してみてください。

お子さんの練習に活かせるヒント

見逃し三振の原因は、「タイミング予測の失敗」です。

打とうと思っていても、先ほど説明した複数の処理が間に合わず、バットを振ることができなかった。それが、見逃し三振の正体です。

予測を間違うと、バットを振る判断もズレます。ボールの動きに合わせた細かい調整など、すべての動きがおかしくなってしまうのです。

でも、先ほどの科学的な事実から、お子さんのバッティング上達のヒントが見えてきました。

それは、バッティングの全ての出発点は、「タイミングの予測」だということです。

たとえどんなに美しいスイングを身につけても、タイミングがズレれば凡打に終わる確率が高くなります。

だからこそ、お子さんには「タイミングを予測する」という、新しい視点を練習に取り入れてあげてほしいのです。
なお、視覚トレーニングの最新情報について【打撃新時代】バッティングは”脳”が9割!ミート力を覚醒させる視覚トレーニング実践法で解説しましたので、確認してください。

今回のまとめ

見逃し三振は、脳がボールの到達タイミングを予測しきれないことが原因です。

野球経験の浅いお子さんは、脳に様々な投手のデータが蓄積されていないため予測がズレやすいです。

しかし、これはセンスや才能ではなく、脳の予測メカニズムが発達途上にある証拠です。

タイミングを予測する能力には個人差があります。でも、経験を積み重ねながら、科学的なトレーニングを取り入れることで向上します。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。

あなたからのご連絡をお待ちしています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参考文献:

Saijo N, Fukuda T, Kashino M. The temporal structure of multiple visuomotor processes in baseball batting: insights from a virtual reality system. Front Psychol. 2025 Jan 30;16:1514301. doi: 10.3389/fpsyg.2025.1514301. PMID: 39950073; PMCID: PMC11822940.

Muraskin J, Sherwin J, Sajda P. Knowing when not to swing: EEG evidence that enhanced perception-action coupling underlies baseball batter expertise. Neuroimage. 2015 Dec;123:1-10. doi: 10.1016/j.neuroimage.2015.08.028. Epub 2015 Aug 20. PMID: 26299795; PMCID: PMC4626325.

Nasu, D., Baba, T., Imamura, T., Yamaguchi, M., Kitanishi, Y., & Kashino, M. (2024). Virtual reality perceptual training can improve the temporal discrimination ability of swinging during softball batting. Frontiers in Sports and Active Living, 6, 1332149. https://doi.org/10.3389/fspor.2024.1332149

Stolz LA, Liu S, Asamoa E, Appelbaum LG. Neurobehavioral measures of coincidence anticipation timing. J Vis. 2023 Aug 1;23(8):16. doi: 10.1167/jov.23.8.16. PMID: 37610734; PMCID: PMC10461693.

Carretti G, Spano F, Sgambati E, Manetti M, Marini M. Adapted Training to Boost Upper Body Sensorimotor Control and Daily Living Functionality in Visually Impaired Baseball Players. Medicina (Kaunas). 2024 Jul 15;60(7):1136. doi: 10.3390/medicina60071136. PMID: 39064565; PMCID: PMC11279096.

Chen, R., Stone, L., & Li, L. (2021). Visuomotor predictors of batting performance in baseball players. Journal of Vision, 21. https://doi.org/10.1167/jov.21.3.3.

Masahiro Kageyama12, Hajime Nakashima3, Hiroki Nakamoto4, Masafumi Fujii4 and Akira Maeda: Characteristics of baseball player bat-swing among subjects at different developmental stages and professionals.

城所 収二, 園本 修也, 赤木 亮太, 子供の打撃パフォーマンスを最大に高める最適なバットの慣性モーメントと把持条件, バイオメカニクス研究, 2018, 22 巻, 3 号, p. 94-108, 公開日 2022/03/09, Online ISSN 2434-4621, Print ISSN 1343-1706, https://doi.org/10.32226/jjbse.22_2018_002, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbse/22/3/22_22_2018_002/_article/-char/ja,

オンラインレッスンをご用意しています

強いメンタルを備えたトップレベルを目指す選手へ

野球初心者のお子様と、一緒に楽しく学べるオンラインレッスンです。

野球初心者の上達には、こちらのオンラインレッスンがお勧めです。

ぜひ、あなたの感想を聞かせてください

今回の内容について、あなたの感想を聞かせてください。
または、「こんなことが知りたい」ということがあれば、どんなことでも大丈夫です。

野球をしていて「?」があった時には、すぐに私に質問をしてください。

小学生はもちろん、中学生、高校生、大学生など、野球をしているすべてのプレーヤーの質問にお答えします

info@holosbc.com

こちらのアンケートでも受付しています。

そして、今回の情報が、あなたのお知り合いにとっても有益だとしたら、どうかお知り合いに情報をシェアしてください。

公式メルマガで、最新情報を入手してください

ブログの更新情報を、Holos Baseball Clinic 公式メールマガジンでお送りします。

野球に必要な

  • 運動能力向上の方法
  • 運動センス向上の方法
  • トレーニングやコンディショニングのこと
  • ケガ(スポーツ障害)や成長痛の予防
  • クラムジー対策

など、エビデンスに基づいた情報を選りすぐり、週1〜2回お届けします。

下のボタンから、今すぐ登録してください。

ほかにも、

  • お子様の運動能力と運動センスを高める方法
  • 体の成長のための栄養管理について
  • トップレベルの野球選手が行なっているセルフケア(コンディショニング)
  • 成長痛やスポーツ障害について

などなど、今お困りで情報をお探しでしたら、ホロス・ベースボールクリニックが制作したオンラインコースがお役に立つかもしれません。

今すぐ、個別指導が必要ですか?

お子様の成長痛、肩やヒジのケガで、思うように野球の練習に取り組めていないなど、お困りのことはありませんか?

成長痛やケガからの回復については、あなたのお子様の状況を判断しながら、オリジナルのサポートが必要になります。

石橋が直接状況を確認して、トレーニングの指導を行っています。

そして、現在の体の状態や特徴(長所と短所)を知ることで、ストレングポイントがわかるコンディショニングチェックのサービスも開始しました。

コンディショニングチェックについては、こちらで詳しくわかります。

コンディショニングチェックについても、個別のトレーニング指導についても、小学生はもちろん、中学生、高校生、大学生も対象に行なっています。

ライバルに差をつけたい。
レギュラーを確保したい。
もっと上手くなりたい。

そういった思いがある選手は、ぜひ、ホロス・ベースボールクリニック事務局までご連絡ください。

info@holosbc.com

好評発売中です

ホロス・ベースボールクリニックがお届けするkindleブックが、大好評です。

小学生の野球が、なかなか上達しない理由

「子どもが野球をはじめたが、なかなか思うように上達しない」
「野球をはじめて1年経ったけど、思うように上達していない」

そのようなお悩みの声が寄せられています。そこで、どうして小学生の多くが、野球が上達しないのかについてまとめたガイドブックを作りました。

小学生の場合、上達しないのには理由があります。そして効果的に上達する方法があります。

また、今回は「一流選手になるための心の習慣」についても触れています。

野球の上達にお悩みでしたら、ぜひご一読ください。

強い体をつくり、野球のパフォーマンス向上に必要な情報がオールインワンのガイドブック

野球をする子どもにとって必要な、運動能力のこと、運動センスのこと、強くて大きな体をつくる方法、トレーニングやコンディショニングのことetc…

知っているようで、じつは間違った認識を持っていることがたくさんあるはずです。

あなたのお子様が健康的に成長でき、野球の能力やセンスを高めるために、ぜひご一読ください。

お子様の強い気持ち(メンタル)を養いたい方へ

野球は、気持ちで結果が大きく左右するスポーツです。
身体能力以上に、気持ち(メンタル)のトレーニングが必要かも知れませんね。

野球をする小中学生に必要で具体的な、メンタル強化の方法を60のアプローチにまとめました。
でも、一つ一つのアプローチはとても簡単です。

親子で一緒にメンタル強化してみませんか?