【重要ポイント】プロ並みの投球動作を身につけるための具体的な3つのアドバイス

プロ並みの投球動作を身につけるための具体的な3つのアドバイス

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

野球をしている小中学生の多くが、ピッチャーをやりたいと思っているのではないでしょうか?

そこで今回は、理想的な投球動作を身につける方法について解説をします。

近年は、投手の投球制限もありますから、指導者は、より多くの投手を育成したいと考えているようです。

しかし現実的には、少年野球や中学生の野球では、体の成長の早い子が投手に抜擢されることが多いと思います。

また、試合での勝利を考えた場合、限られたピッチャーに負担がかかっているのも現状だと思います。

そこでポイントになるのが、親や指導者です

周りの大人には、具体的で体系的な知識に基づいて、指導する義務があるということです。

それができないと、まずケガのリスクが高まります。もちろん、子どもに理想的な投球動作を習得させることができません。

実際に、1日に200球、300球の投球練習を強いられている中学生がいると耳にしています。

その子は、結果的にヒジの剥離骨折で、最後の大会でメンバー外になってしまいました。

野球の指導者は、まだまだ自分の経験に頼った指導をしている人が多いのが現状です。

もちろん、親の中には、指導者の方針に疑問を抱いている人もいます。

例えば、先ほどの剥離骨折をしてしまった子の親は、「試合の後の練習で250球も投球練習をさせられたのですが、それって普通ですか?」と質問されました。

当然ですが、中学生の子どもです。試合で登板した後に、250球も投げさせることは常識を逸脱しています。

しかし、親にその知識がなければ、ただ疑問に思っているだけになってしまいます。

仮にあなたが今、何か疑問を感じているとしたら、今回の情報を最後までご覧になってください。

そうすると、親として必要な具体的な知識を持つことができます。

さらに、お子さまのケガを予防しながら、理想的な投球動作を身につけるサポートができるようになります。

ということで、今回は理想的な投球動作を身につけるための、基礎知識を解説します。

今回の内容を知ることで、お子さまが上達を実感しながら練習をすることができるはずです。

そのためにも、正しい投球動作についての知識や、ケガの予防策を知ってください。

投球のパフォーマンスアップのために、とても大切な内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

それでは、はじめて行きましょう。

正しい動作習得の大切さ

投手としてのスキル向上には、正しい動作を習得することが非常に重要です。

正しい動作は、パフォーマンスの向上だけでなく、ケガの予防にも大きく貢献します。

投球動作は複雑な運動連鎖で成り立っています。この連鎖を適切に行うことで、球速アップやコントロールの安定が期待できます。

一方で、不適切な動作は、悪いクセとして定着してしまう可能性があります

一度身についたクセは、時間が経つほど修正が難しくなるため、早い段階で正しい動作を身につけることが大切です。

パフォーマンス向上のカギ

先ほども言いましたが、大切なことなので繰り返しますね。

投球のパフォーマンス向上には、正しい動作の習得が欠かせません。

投球動作は、下半身から体幹、そして上半身へとエネルギーを伝達する複雑な運動連鎖で成り立っています。

例えば、下半身の力をうまく使えると、腕への負担を減らしながら投球を安定させることができます。

具体的には、股関節の伸展筋や、外転筋といった股関節周辺の柔軟性と筋力を高めることが大切です。

それらの筋肉は、簡単にいうとお尻と太ももの筋肉です。お尻や太ももには、複数の筋肉がありますが、小中学生の場合、筋力が弱いのは仕方ありません。

大切なことは、筋力のバランスに大きな差がないことと、適切な柔軟性があるかといった点を正しく見極めることです

股関節周りの筋力が強く柔軟性があると、投球時に体の回転力が増し、それが腕の加速につながります。また、体幹の安定性が高いと、エネルギーのロスが少なくなります。

すると、投球フォームの安定や効率的な投球、球速の向上に大きく貢献します。それが、ヒジや肩への負担を軽減し、ケガの予防にもつながることがわかっています。

正しい動作の習得には時間がかかりますが、お子さまの野球人生を豊かにする重要な要素です。

悪いクセがつかないように

親や指導者に投球動作に関する知識がない場合、クセの少ない理想的な投球動作を教えることができませんね。

そして、子どもの悪いクセを直すことが難しくなります。

例えば、筋力や柔軟性などの影響で、腕が上がりにくいといった特徴がある場合があります。

ですが、それを放っておくと悪いクセが定着してしまい、後から修正するのが難しくなります。

もちろん、悪いクセはケガのリスクを高めます。

また、小中学生の場合、脳から筋肉につながる指令の通り道が、上手に働いていない場合があります。ですから、子どもの技能習得の順番を理解して、適切に指導する必要があります。

子どもの技能の習得は、以下の過程を経て進んでいきます。

  1. 分からないからできない
  2. 分かっているができない
  3. 意識すればできる
  4. 意識しなくてもできる

まず、お子さまが技能習得のどの段階なのかを把握しましょう。

そして、以下の3つのサイクルを繰り返していくことがスキルアップのカギになります。

  1. 口頭でアドバイスし子どもに考えてもらう
  2. 動作を見て理解してもらう
  3. それを身体で表現してもらう

これが、動作を視覚化して理解してもらうトレーニングのベースになります。

悪いクセがあるのでしたら、その点を教えてあげましょう。次に、動作を動画や写真にして見せてあげます。映像を見れば、お子さまも理解しやすくなりますね。

その後、どのようにしたら理想的な動作に近づけるかを考えさせて、本人に体で表現してもらいます。

これもまた、地道に繰り返しながら上達することがカギになります。

投球動作の基礎知識

理想的な投球動作を身につけるには、動作を細かく切り分けて考えると理解しやすくなります。

投球動作には6つのフェーズがあり、各段階ごとに重要な役割があります。

投球動作を段階的に理解することで、効果的な練習が可能になるのです。

6つの投球フェイズとその役割

お子さまのピッチングスキル向上のために、6つのフェイズと役割を理解しましょう。

なお、投球フェイズについては、さらに詳しい解説がありますので、「トップレベルになるために知っておきたいピッチングのメカニズム」を確認してみてください。

  1. ワインドアップフェイズ
    投球動作の準備段階です。このフェーズでは、体全体のバランスを整え、次の動作に向けてエネルギーを蓄えます。
  2. アーリーコッキングフェイズ
    下半身の動きが中心となり、投球動作に向けたエネルギー生成が始まります。
  3. レイトコッキングフェイズ
    体幹の回転運動によってエネルギーを増幅させ、上半身に伝達する重要な役割を担います。
  4. アクセレーションフェイズ
    蓄積されたエネルギーが解放され、ボールに最大の速度を与える役割を担います。
  5. アーリーフォロースルーフェイズ
    ボールリリース後の反動を制御し、肩やヒジへの負担を軽減します。
  6. レイトフォロースルーフェイズ
    投球動作をスムーズに終結させる役割を担います。

例えば、コッキングフェイズでの体の開きが早すぎると、球速が落ちたりコントロールが悪くなったりする可能性があります。

これらのフェイズを理解しつつ、各段階でのポイントを意識しながら練習をしてください。

そうすることで、お子さまの投球技術向上につながります。

投球フォームを段階的に理解することの利点

理想的な投球フォームを習得するために、投球フェイズを段階的に理解することは大切です。

まずは、6つのフェイズを意識することからはじめましょう。

特に、小学生の時期から段階的な指導を受けることで、基本的な技術を早期に習得できます。

これは、将来的により高度な技術を習得するための重要な土台になります。

そのほかのメリットをまとめると、次のようになります。

  1. エネルギー効率の向上
    各フェイズの身体の加速と減速のバランスを理解すると、適切なタイミングで力を無駄なくボールに伝えることができます。
  2. コントロールの安定
    フォームが安定することで、リリースのタイミングが安定し、コントロールの精度が向上します。
  3. 身体への負担軽減
    ピッチングは、特に肩やヒジに大きな負担がかかる動作です。正しい動きを身につけることで、各関節への負担を軽減します。
  4. 効果的なトレーニング
    例えば、ワインドアップフェイズでは、バランスを重視し、レイトコッキングフェイズでは、体幹の回転を強化する練習を行うことで、総合的なパフォーマンスが向上します。

各フェイズはそれぞれ独立したものではなく、一連の動作として密接に関係しています。 

あるフェイズでの小さなミスが、次のフェイズに影響を及ぼしてしまいます。それが、最終的には、コントロールの乱れやケガにつながる可能性があります。

ただ、小学生や中学生は、まだ体が成長段階です。成長段階に合わせた指導を行い、無理のないようにフォームを習得するようにしてください。

実際に理想的な投球動作を習得するためには、動作分析をすることが最も効果的です。

専門的に各フェイズを分析することで、自分の投球フォームを客観的に判断し、改善点を見つけることができるからです。

それが、効率的な投球フォームを習得する近道です。

ケガの予防のために親が気をつけること

ケガの予防は、親にとって最も重要な関心事のひとつでしょう。

適切な投球フォームの指導は大前提ですが、それ以外にも注意すべき点がいくつかあります。

これからお話をする点に注意を払うことで、お子さまのケガのリスクを大幅に軽減できます。

では、詳しく見ていきましょう。

投球数を管理する

ケガの予防で、最も重要なポイントの一つが、投球数の管理です。

過度の投球は、ヒジの内側側副靭帯損傷などの深刻なケガのリスクが高まります。

これらのケガは、最悪のケースでは手術が必要になったり、野球を続けることが困難になる可能性もあります。

例えば、MLBが提唱するPitch Smartガイドラインでは、年齢別に1日の最大投球数と、投球数に応じた休息日数が定められています。

例えば、9歳から10歳の投手は、1日最大75球までとされています。

これらのガイドラインを参考に、お子さまの年齢や体格に応じた適切な投球数を守ることが大切です。

また、Pitch Smartガイドラインは、週末のみでなく、平日の練習の投球数も考慮に入れる必要があります。

お子さまの将来につながる野球人生を守るのは、私たち大人の大切な役割です。

適切な休息を与える

お子さまの投球によるケガ予防のためには、適切な休息を与えることは非常に重要です。

そして、長期的な競技生活のためにも、適切な休息が必要です。

投球後の十分な休息は、肩やヒジの回復に不可欠で、過度の使用によるケガ、スポーツ障害のリスクを軽減します。

Pitch Smartガイドラインでは、投球数に応じた休息日数が推奨されています。

例えば、11歳から12歳の選手が50球投げた場合、最低2日間の休息が必要とされています。

この場合、日曜日の試合で50球投げた場合、月曜日と火曜日は休息日にします。

ただ、休息日でも完全に休むのでなく、アクティブレストといって、軽い運動やストレッチを行うことが推奨されています。

これにより、血流が促進され、筋肉の回復が早まります。

また、休息は身体的な回復だけでなく、精神的なリフレッシュのためにも重要です。

成長段階に合わせた練習

投球動作は複雑で、全身の協調運動が求められます。

脳から筋肉への指令の通り道がつながっていない小学生であれば、基本的な運動能力の獲得を重視した練習を行いましょう

野球の練習に限らず、遊びを取り入れた運動を通して、楽しみながら基礎体力を高めることを重視しましょう。

キャッチボールを行う際は、基本的な動作の習得を重視して、投げすぎにならないように注意してください。

低学年であれば、平日の練習は30分程度におさえ、低強度の練習を行うことをお勧めします

年齢が上がるにつれて、より複雑な動きや技術指導を取り入れていくべきですが、身体的発達は個人差があります。

ですから、画一的な指導ではなく、個々に合わせた指導が重要です。

そのため、専門知識を持つコーチの指導を受けることが望ましいですね。

理想的な栄養管理

忙しい日々の中で、栄養バランスの取れた食事を毎日用意するのは、簡単ではありませんね。

また、好き嫌いやアレルギーがあると、さらに難しくなります。

栄養管理については、詳しく解説をした「野球選手は、しっかり食べて強い体をつくりましょう」を参照してみてください。
ここでは、お子様の栄養管理について、いくつかアイデアを紹介します。

  1. アプリの活用
    栄養バランスを視覚的に確認できるものもあり、不足している栄養素を把握しやすくなります。
  2. AIの活用
    今では多くのAIが栄養面でもサポートしてくれます。「一週間分のレシピを提案して」などと聞くことで、レシピの案を一瞬で考えてくれます。
  3. 食事のローテーションをつくる
    1週間や2週間単位でメニューをローテーションさせることで、栄養バランスの管理と調理の効率化ができます。
  4. SNSやブログでの情報共有
    チームの親同士でレシピや工夫していることを共有することで、新しいアイデアを得られます。
  5. 栄養士や専門家による個別相談
    お子さまの体格や活動量に合わせた、より具体的なアドバイスを受けられます。

これらの方法を組み合わせることで、栄養管理の悩みを軽減できるのではないでしょうか?

体の声に耳を傾ける

体の声に耳を傾けることは、ケガの予防と長期的な競技生活の維持に非常に重要です。

ただ、特に成長期のお子さまは、自身の体調を適切に表現することが難しい場合があります。ですから、親の注意深い観察とコミュニケーションが欠かせません。

練習や試合の後に、体の調子について具体的に聞いてみましょう。

例えば、「どこか痛いところはない?」といった質問をはじめ、「肩の動きはスムーズ?」とか「ヒジに違和感はない?」など、部位を特定した質問も効果的でしょう。

また、お子さまの動きや表情の変化に注目しましょう。

普段と違う仕草をしたり、いつもより元気がないといった場合は、体調不良のサインかもしれません。

そして、ボルグスケールを活用して、日々の体調を管理することも効果的です

ボルグスケールについては、「球児のお父さん、お母さん、お子様の”健康と安全”をしっかり確認してますか?」で詳しく解説をしています。

さらに、フィジカルセラピスト(PT)トレーナーの助言を受けることで、体のケアをより効果的に行うことができます。

専門知識があるので、体の動きや筋肉の状態を客観的に評価し、適切なトレーニングやケアの方法を提案してくれます。

もちろん、異常を感じた場合は、速やかに専門医の診断を受けることが重要です。

今回のまとめ

いかがでしたか?

今回は、ピッチャーを目指すお子様のための、理想的な投球動作の習得方法と、ケガの予防についてお話ししました。

まず大切なのは、正しい投げ方をできるだけ早く身につけることです。これは、技術向上だけでなく、ケガの予防にも非常に重要です。

また、投球動作には、6つのフェイズがあることを理解しましたね。

それは、投げ始めから投げ終わりまでの一連の流れのことです。この流れを理解すると、より効果的な練習ができるようになります。

そして、長期的に活躍できる選手になるためには、お子様の投球数をしっかり管理し、投げすぎは絶対に避ける必要があります。

さらに、十分な休息を取ること、年齢に合った練習をすること、そして、バランスの良い食事も大切です。

お子様の体調の変化には、常に気をつけてください。

いずれにしても、お子様が楽しく安全に野球を続けられるようにすることが一番大切です。

そのためにも、大人がしっかりと正しい知識を持って、子どもたちをサポートしていく必要があるわけです。

今回は以上です。

次回もまた、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

引き続き、野球の上達のために頑張っていきましょう。

野球の上達に関するお悩みや、疑問点などがありましたら、いつでもご連絡ください。

それでは、またお会いしましょう。


参考文献:

Thompson SF, Guess TM, Plackis AC, Sherman SL, Gray AD. Youth Baseball Pitching Mechanics: A Systematic Review. Sports Health. 2018 Mar/Apr;10(2):133-140. doi: 10.1177/1941738117738189. Epub 2017 Nov 1. PMID: 29090988; PMCID: PMC5857730.

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Greiner JJ, Trotter CA, Walczak BE, Hetzel SJ, Baer GS. Pitching Behaviors in Youth Baseball: Comparison With the Pitch Smart Guidelines. Orthop J Sports Med. 2021 Nov 9;9(11):23259671211050127. doi: 10.1177/23259671211050127. PMID: 34778475; PMCID: PMC8581780.

Albiero ML, Kokott W, Dziuk C, Cross JA. Hip Strength and Pitching Biomechanics in Adolescent Baseball Pitchers. J Athl Train. 2023 Mar 1;58(3):271-278. doi: 10.4085/1062-6050-0074.22. PMID: 35724364; PMCID: PMC10176844.

石橋秀幸、今関勝、橘肇、投球フェイズにおける左右の目の使い方の違いが投球フォームにもたらす変化とその効果、ベースボール・クリニック p30-33、ベースボール・マガジン社、2005

・「平成の怪物」松坂大輔 再生なるか、Wedge ONLINE、2018
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