【試合の結果が変わる】小中学生投手が“安定して投げる”ための科学的2ステップ

今回お伝えする内容です
【試合の結果が変わる】小中学生投手が“安定して投げる”ための科学的2ステップ
お子さんのピッチング、こんな「なぜ?」に悩んでいませんか?
「試合で突然コントロールを乱すのはなぜ?」
試合での急な不調は、メンタルの問題や技術不足として片付けられがちです。しかし実は、その背後には、疲労の蓄積や動作の非効率性など、さまざまな原因が潜んでいるんです。
特に、お子さんが疲労を抱えながら投球を続けているとしたら…
コントロールどころか、重大なケガの危険があります。
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
Olsenらが平均年齢15歳の投手を対象に行った研究があります。
それによると、1試合あたり80球以上を投げる投手は、より注意が必要です。それは、手術が必要なケガをする危険率が3.83倍になると記されているからです。
また、年間8ヶ月以上試合で投球する投手は、なんと5.05倍に跳ね上がるというのです。こうなると、単なる技術論ではありませんね。
お子さんの野球人生を左右しかねない重大な問題です。
そこで今回は、小中学生投手が安全に、そして安定して結果を出すための”原則”を解説します。
お伝えする内容は、私の35年以上の研究と指導の現場で結果を実証しています。科学的なデータに基づき、「やってはいけないこと」と「今日からできること」を具体的にお伝えします。
小中学生の投手指導にとって、とても重要な内容になっています。
ぜひ、最後までお付き合いください。
なぜ「腕を振る」意識ではダメなのか?
コントロールやスピードなど、お子さんの投球の質が上がらない根本原因は何でしょうか?
グラウンドでは、「しっかり腕を振って!」という指導者を多く見かけます。
しかし、投球の質は腕の使い方だけを意識しても高まりません。下半身から体幹、そして腕から指先へとエネルギーが伝達される運動連鎖(キネティックチェーン)が必要なんです。
ところが、小中学生の投球を分析すると、運動連鎖がうまくできない投手がたくさんいます。
この点は、指導する上でもお悩みが多いのではないでしょうか?
ここからは、投球の質を高める”原則”を、他では聞けない視点からお伝えしていきます。
コントロールの本当の源泉とは
「下半身の力を使って投げよう」
これも、グラウンドでよく耳にする言葉です。
お子さんが投手であれば、速くてキレのあるボールをコントロールよく投げたいはずです。
そうした指導で、「腕を振って」や「下半身を使って」という声かけが行われています。果たして、小中学生はどのように理解しているのでしょうか?
コントロールよく速いボールを投げる秘訣は何でしょうか?
それは、エネルギーの大部分を腕ではなく、”下半身と体幹”から生み出すことなんです。この力の流れが、運動連鎖(キネティックチェーン)です。小中学生に分かりやすく言えば、「力のバケツリレー」でしょうか。
- 地面を蹴る力から始まり
- そのエネルギーが骨盤から体幹へと伝わり
- 最後に肩・肘・手へと順番に加速していく
この一連の流れこそが、ピッチングの正体です!
つまり、腕はエネルギーを生み出す”エンジン”ではないのです。下半身と体幹でつくられたエネルギーをボールに伝える”最後の伝達役”なんです。
なお、投球を安定させる運動連鎖については、【運動連鎖】速い球が投げられる!下半身から伝わる力を最大限に活かす投球フォームのつくり方も確認してみてください。

体幹が投球の質を高める
お子さんがコントロールよく速い球を投げるには、体幹の役割も重要です。
体幹の回転動作の”大きさやタイミング”が、球質を決めます。しかし、投球数が増えると、疲労の影響で運動連鎖の効率が低下してしまうんです。
試合で突然崩れるのは、これが原因なんです。
ですから、この状態で「下半身をしっかり使って」「腕を強く振って」などと言っても効果はありません。
むしろ、小中学生にはケガのリスクにしかならないんです。
疲れにより:
- 地面を蹴る力が弱くなります
- 体幹の回転も不十分になります
すると…
それを補おうとして腕だけで投げようとして、肩関節に大きな負担(過度な内旋運動)が生じてしまうんです。
結果的に、投球腕にかかる力学的負荷(牽引力やトルク)が大きくなり、肩やヒジを痛める原因になります。
また、高校生投手を対象とした研究では、「股関節の可動域や筋力が肩やヒジのケガと関連している」という報告もあります。
体幹と下半身が、投球動作全体の土台として重要だと、科学的にも裏付けられているわけです。
では、投球の質を高めるためには、どうしたらいいと思いますか?

小中学生投手の”NG行動”4選
投球の質に関わる運動連鎖。それを妨げる原因は何でしょうか?
お子さんの才能を潰さず、ケガから守るために今すぐやめるべきNG行動を紹介します。
NG行動1:腕やヒジの使い方ばかりを細かく指導する
試合中に「ヒジを高く上げろ」「手首を立てろ」といった声かけはやめましょう。身体の動きそのものに意識を向けさせる指導は、かえって動きをぎこちなくさせてしまいます。
これは、内的焦点(Internal Focus)といい、研究でもパフォーマンスを低下させることが証明されています。
身体は本来、自動的に最適な動きをしようとします。部分的な動きに過度に意識を集中させることは、「力のバケツリレー」の途中で流れを止めてしまうようなものです。
NG行動2:「疲れているけど、あと少し」の根性論
疲労はパフォーマンス低下だけでなく、ケガのリスクを爆発的に高める最大の敵です。「ここを投げ切れば強くなれる!」という考えは、今の科学には通用しません。
前述のOlsenらの研究では、疲労状態で投げ続けると、手術が必要なケガのリスクが36倍になると警告されています。
「あと少し」の根性論は、お子さんの未来を危険にさらすだけです。
疲労のサインを見逃さず、勇気を持って休ませることが、大人の最も重要な役割です。
NG行動3:開きが早いフォームを放置する
踏み出した足が早く開いてしまうフォーム(オープンステップ)。これは、小中学生によく見られる典型的な問題点です。
このフォームでは骨盤の回転が早すぎて、下半身でつくられたエネルギーを体幹が受け取る前にゆるめてしまいます。
運動連鎖がここで途切れるため、失われたエネルギーを補おうとして腕や肩に余計な力が入るのです。そのため、肩の前方やヒジの内側にかかる負担が不必要に増大します。
コントロールが乱れるだけでなく、肩やヒジの深刻なケガに直結する危険なフォームなんです。
NG行動4:低年齢からの「早期専門化」
早くから一つのスポーツに特化する「早期専門化」。
これは、必ずしも将来のパフォーマンス向上に繋がるわけではありません。これも、いくつもの研究報告で明らかになっています。
特に小学生のお子さんには、様々な運動を経験させましょう。それにより、運動連鎖の土台となる多様な動きのコーディネーション能力が養われます。
野球だけに特化すると、特定の筋肉や関節にばかり負担がかかり、運動連鎖全体のバランスが崩れやすくなります。
これらのNG行動、心当たりがあるなら、今日から一つずつ見直していきましょう。
ちなみに、中学生投手の投球フォームを劇的に改善した方法を【小中学生の球児必見】簡単だけど効果が出る「ホロス式・投球フォーム改善法」で紹介しています。

今日からできる!才能を伸ばす2つのアプローチ
お子さんの才能を科学的に伸ばしていきましょう。そのための具体的なアプローチを2つご紹介します。
親子で今日から実践できる内容ですよ。
アプローチ1:外的焦点の声かけ
外的焦点(External Focus)は、動きの結果に意識を向けさせる指導法です。
たとえば…
「腕を速く振れ!」ではなく、「ボールをキャッチャーミットまで、糸で引っ張っていくように投げてみよう」
このように、身体の動きではなく「結果」や「目標」をイメージさせる言葉を選びましょう。
すると、お子さんのフォームは自然と改善されていきます。
アプローチ2:真下投げ
運動連鎖を身体で覚えるための非常に効果的なドリルが”真下投げ”です。下半身と体幹から力を伝える感覚を養うことができます。
このドリルは、投球動作の改善に即時的な効果をもたらすと研究で示されています。
真下投げのやり方については【ホップする球】速いだけじゃ打ち取れない!打者を驚かせる球威の出し方で解説していますのでご覧ください。
「真下投げ」で体幹の回旋を改善すると、”自然なヒジの伸展”で腕が振れるようになります。
パフォーマンス向上と投球障害の予防の両方に繋がるため、試合前のウォーミングアップに取り入れることをお勧めします。

今回のまとめ
お子さんのピッチングで最も大切なのは、目先の試合結果より成長し続けるための土台を作ることです。
腕の力に頼るのではなく、下半身と体幹を使った正しい力の伝え方(運動連鎖)を身につけることが大切です。
それこそが、試合で崩れない安定したコントロールを生み出す原則です。
まずは、今日ご紹介したことから試してみてください。
科学に基づいた正しいアプローチが、お子さんの未来を輝かせます。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
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