【まだ信じますか?】たくさん練習すれば野球が上手くなる!それは成長期には通用しません

今回お伝えする内容です
【まだ信じますか?】たくさん練習すれば野球が上手くなる!それは成長期には通用しません
「毎日、どれくらいの練習をすればいいんだろう?」
「練習量が少ないと、うちの子は周りに置いてかれてしまう…」
もしかして、あなたは「あの子はもっと練習しているはず」
「うちは、このままで大丈夫だろうか?」と考えていませんか?
お子さんの将来を思うからこそ、そう思うのは当然ですね。
でも、その焦りがお子さんの成長を妨げ、上達を遠ざけているとしたらどうでしょうか?
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
練習時間が長ければ、より上達する!
実はその考えは、スポーツ科学的に見ると疑問が残ります。今の正解は、量より質です。
これまでご相談をいただく中には、毎日2時間以上練習をしているというケースがありました。毎日2時間というのは、小中学生には多すぎます。野球の上達よりも、ケガや成長痛、心身の疲労の蓄積のほうが心配です。
そこで今回は、「なぜ練習は量より質なのか」をスポーツ科学の視点でお伝えします。
この内容は、私の35年以上の研究と指導の中で培った、科学的根拠に基づくものです。
今回の内容を知ることで、「周りに置いていかれる」という焦りから解放されるでしょう。そして、お子さんの可能性を最大限に引き出すための、より賢明なサポート方法を理解できるはずです。
ぜひ、最後までお付き合いください。
成長期の過剰練習が招く“本当のリスク”
多くの方が「練習量=上達の幅」と信じていると思います。
でも、最新のスポーツ科学の視点で見ると、考え直す必要がありそうです。
特に成長期の選手は、身体が急激に変化する”成長スパート期”にあります。だからこそ、その身体の特性を考えて練習をする必要があるんです。
成長スパート期(PHV期)とは、文字通り「ぐっと背が伸びる時期」のことです。
実は、この成長期に無理をさせると大きなリスクが生じます。
休みが少なすぎたり、無理な練習を続けると、体だけでなく脳が疲れてしまいます。すると、一時的に運動のパフォーマンスが悪化することが、科学的に報告されています。また、ケガや成長痛のリスクを増加させる可能性も指摘されています。
心と体の健康(ウェルビーイング)が保てないということは…
常に大きな問題や危険にさらされていると言えるわけです。

成長期のトレーニングを個別に考える理由
では、成長スパート期(PHV期)とは、具体的にどういうことでしょうか?
これは、Peak Height Velocity(ピークハイトベロシティ)の略で、”身長の伸びが最も速くなる時期”を指します。
この時期のトレーニングは、単純に年齢や学年ごとに考えるのではなく、選手の成長段階に正確に合わせる必要があります。
それを知るには、成長スパート期のどの段階なのかを評価する”ものさし”が必要なわけです。
たとえば、同じ中学2年生のA君とB君がいたとします。
- A君はすでに身長の伸びがピークを過ぎて、大人の体に近づいている
- B君はこれから急激に身長が伸びる成長スパート期の真っ最中
この二人は同じ年齢でも、体の中の準備段階がまったく違います。
では、この状態で同じ量、同じ負荷の練習やトレーニングをしたらどうなるでしょうか?
練習やトレーニングの効果は違うはずです。ケガのリスクも大きく異なるとイメージできるのではないでしょうか。
スポーツ科学の研究では、18歳未満の選手のトレーニング効果を調べるときの指標があります。
それは、成長スパート期からの経過時間を基準にして、成長段階を分類するものです。単純な年齢ではないんです。
「この子は今、体が急成長している時期だから、こういうトレーニングが効果的だ」「でも、この練習は少し控えよう」と、成長に合わせた賢い判断ができるようになるわけです。
ちなみに、練習の質を高める視点については【野球上達の新戦略】なぜ、あの子は急に上手くなった?秘密は「戦略的な反復」にあった!を参考にしてください。

時期によるトレーニング効果の違い
実際に成長スパート期に入る前後で、トレーニングの効果に違いがあるのでしょうか?
ここで、「プライオメトリック・ジャンプ・トレーニング(PJT)」の研究事例を見てみましょう。
参考文献:
Plyometric-Jump Training Effects on Physical Fitness and Sport-Specific Performance According to Maturity
プライオメトリック・ジャンプ・トレーニング(PJT)とは、ジャンプや飛び跳ねる動作を多く含むトレーニングです。脚力を高めるために、多くの選手が行うトレーニングですね。
研究では、成長スパート期前後で、方向転換スピード(COD: Change of Direction)の効果の違いを調べました。
結果は、成長スパート期が来る前の選手の方が、わずかに有利だと示されました。
よりわかりやすく説明しますね。
成長スパート期でぐっと背が伸びている最中は、骨が急に伸びます。すると、それに対して筋肉や腱のバランスが一時的に崩れ、体がとても不安定になりやすいんです。
一方、成長スパート期前の選手は、これから体が急激に変わる準備段階にあります。まだ体のバランスが比較的安定していると考えられます。
つまり、体が無理なくスムーズに動きを吸収し、定着させやすい可能性があるんです。
このような違いがあることがわかれば、個々に合わせてトレーニングの効果を最大限に引き出すことができますね。
ただ、これらを判断するのは「自分には無理!」と難しく感じているかもしれません。
トレーニングは、やはり専門的な知識を持つ人にサポートしてもらうことをおすすめします。

親が持つべき新たな視点
野球のスキルアップ、運動能力アップには、”練習量”が分かりやすい指標ではあります。
お子さんの成長を願うあなたが、練習量に目を向けてしまうのは自然なことだと思います。
しかし、科学が示す真実は違います。
その視点を”練習の質”と”戦略的な回復”へとシフトさせることが、お子さんの長期的な成長に最も効果的です。
ところが、ここに保護者の焦りが招く“悪い流れ”が存在するのも事実です。
焦り:
野球スキルの上達や体の成長が遅いと、子どもが周りに置いていかれるのではないかと不安になる。
行動:
「もっと練習量を増やさないと」と考えてしまう。
リスク:
ケガや疲れに最も注意すべき成長期に、身体へ過剰な負荷がかかり、心身の健康が脅かされる。
結果:
ケガや心身の疲労により、練習や試合から長期間離脱せざるを得なくなる。
現実:
結果的に、本当に周りに遅れをとってしまう。
良かれと思って増やした練習が、皮肉にもお子さんを目標から遠ざけてしまう可能性があるのです。
質の高い練習と適切な休養は、単にケガを防ぐだけではありません。
脳科学の研究では、脳への質の高い刺激と、それを整理・定着させるための休養が必要だと示されています。
それがあって初めて、動きは無意識的かつ自動的なものへと洗練されていくのです。
なお、お子さんの可能性を最大限に引き出すために、野球をする子どもの能力と可能性を最大限に引き出す親の期待の仕方とはもご覧ください。

今日からできる4ステップ
「科学的な管理と言われても、何から始めればいいのか分からない」と感じるかもしれません。
ご安心ください。ご家庭ですぐに実践できる4つのステップをご紹介します。
- 練習前のウォームアップを変える
これまでの準備運動に、神経筋トレーニング(INT)の要素を5~10分間加えます。
これは、先ほど解説した、パフォーマンスの質を高めるための具体的な実践です。
バランスを取りながら身体を動かしたり、正しいフォームでジャンプしたりといった動きの質を高める運動を取り入れます。
そうすることで、ケガをしにくい身体の使い方が自然と身につきます。 - ”質を重視する練習日”を設ける
毎日は難しくても、月に数日は「質を重視した練習」を計画に組み入れます。
この日には、フォームの確認やスキルの精度を高める練習に特化しましょう。練習量が減っても、質の高い刺激を脳に与えることができます。
これにより、野球スキルの習得に関わる神経回路の構築を効率的に進めることができます。
過度な負荷を避け、計画的に質を追求することが、長期的な成長を支えます。 - 週に1度の「休養日」を設ける
完全に何もしない日ではなく、心と体の回復に専念する休養日を週に1日設定します。
適切な休養(インターバル)は、運動スキル習得の効率を高めます。それとともに、心身の健康を脅かす過剰な負荷や疲労を防ぐ上で非常に重要です。
カレンダーに「休養の日」と書き込んで、回復を優先しましょう。 - 月1回の「親子ミーティング」を開く
特に成長スパート期には、月に一度、5分で良いのでお子さんとミーティングの時間を持ちましょう。
ミーティングでは、身体に痛みがないかという確認だけでなく、心の状態にも耳を傾けることが重要です。
お子さんが「自分で決めてやっている(自律性)」「上達しているという実感がある(有能感)」「周りから肯定されている(関係性)」という基本的欲求が満たされているかを確認しましょう。
ちなみに、練習の質を高める視点は【練習は質が9割】驚くほど上達!親子で始める「意図的な練習」3つの極意も参考になるはずです。

今回のまとめ
周りに遅れをとっていると感じると、つい練習量を増やすことを考えがちです。
しかし、親として知識を持ってサポートすることで、お子さんがより効果的にトレーニングできるようになります。
それがケガを防ぎ、心身ともに健康な状態で練習を継続させることにつながります。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡くださいね。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
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