【新しい野球指導】何度も教えているのにできない理由|子どもの脳で起きているのは…

【新しい野球指導】何度も教えているのにできない理由|子どもの脳で起きているのは…

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

「今言ったこと、わかった?」
「うん、わかった!」

お子さんに、良かれと思ってアドバイスを送る。そして、お子さんは元気に返事をする。

でも、次のプレーではまた同じミスを繰り返してしまう…。

こんな経験はありませんか?

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

「うちの子は、人の話をちゃんと聞いていないのだろうか?」 「どうして毎回同じことを言わないとできないんだ…」 

このような悩みを、多くの保護者が抱えています。

しかし、ご安心ください。

これは、お子さんの聞く力の問題ではありません。実は、この「言ってもできない」現象には、2つの科学的な理由があるんです。

そこで今回は、私の35年以上の研究と指導の現場で実践した​内容をお伝えします​。

お子さんのやる気を削ぐことなく、「自分で考えて成長する力」を育むための具体的な方法です。

ぜひ、最後までご覧ください。

”忘れる”の2つの科学的な理由

お子さんがアドバイスをすぐに忘れてしまうのは、なぜでしょうか?

その「理由」を知ることが、解決への第一歩です。

実は、「忘れてしまう」のは、人間の脳が持つ自然な性質です。そして、子ども特有の認知リソースに理由があります。

認知リソースとは、情報を一時的に記憶するために脳が使う「エネルギー」や「作業スペース」のことです。

それでは詳しく見ていきましょう。

そもそも、人は忘れる生き物

心理学の分野で非常に有名な「エビングハウスの忘却曲線」という概念があります。

これは、「人は何かを学んだ直後から、急激に物事を忘れていく」ことを示したものです。ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが行った記憶実験から導き出されました。

記憶の保持率は、学習直後が最も高く、時間の経過とともに急速に低下します。そして、その後は緩やかに下降していきます。

つまり、「忘れてしまう」のは、人間が生まれつき持っている、ごく自然な記憶の仕組みなんです。

ちなみに、子どもの脳にとって効果的な練習の仕方を【知らないと損】”集中”が切れるから野球は上達する!? 脳科学が明かす新事実で解説しています。

子どもの”自制心のタンク”は、まだ小さい

「自制心」とは、「衝動を乗り越えたり、抑制したり、変化させたりするために、認知や注意のリソースを使う能力」のことです。

学術的には、そう定義されています。そして重要なのは、この自制心が、時間とともに減少したり、枯渇したりする点です。

車のガソリンタンクをイメージするとわかりやすいでしょう。

野球の練習中のお子さんは、何をしているでしょうか?

飛んでくるボールを目で追い、バットを振り、体の位置を調整する。こうした身体的な動作を瞬時におこなっています。

つまり、限られた認知リソースである、”注意のタンク”の多くをすでに使っているんです。

お子さんの「自制心のタンク」はもう残りわずかな状態なんです。

その状態で、「ヒジを上げて!」「もっと腰を落として!」といった言葉による指示を加えるとどうなるか?

新しい情報を処理し、行動に移すための余力が残っていないケースがあると考えられます。

結果として指示に従えなかったり、数秒後には「忘れて」しまったりするのです。

理由がわかっても、ついフラストレーションから感情的に叱ってしまうことがあるかもしれません。

どうすればいいのでしょうか?

なお、子どもの練習量と技術定着の最適化でお困りでしたら、【最新研究が証明】野球がうまくなるはずの長時間練習は逆効果! それ知らないと危険ですを確認してみてください。

感情的に叱ってしまうと脳はどうなるのか?

ついつい叱ってしまう気持ちは、よくわかります。

しかし、感情的に叱ることは、お子さんの長期的な成長にとって逆効果になる可能性が高いんです。

思春期の子どもたちを対象とした研究を確認してみましょう。

過度に管理的、または保護的な親のスタイルは、子どもの「自律性」の感覚を制限する傾向がある

そう報告されています。そして、この「自律性」が制限されるとどうなるか?

子どもの内側から湧き出る”成長意欲”に悪影響を及ぼすことがわかっています。

これを「内発的動機づけ」と言います。

つまり、「もっと上手くなりたい」「野球が楽しいから頑張る」といった気持ちが削がれてしまうんです。

統計的にも、両親から”自律性”を尊重するサポートを受けた子どもほど、高い内発的動機づけを持つことが示されています。

感情的に叱ることは、短期的には子どもを従わせる効果があるように見えるかもしれません。

しかし、それはアスリートの成長に不可欠な、自分で自分を動かすモチベーションを損なうリスクをはらんでいるんです。

もし、叱る回数が増えているとお感じなら、子どもが野球で感じるプレッシャーを理解し適切にサポートする方法が参考になるはずです。

”考える”を育てる、今日からできる4つのコツ

イライラする指導から、お子さんの成長を支える「コーチ」へ。

お子さんが自ら考えるためには、大人が視点を変えると効果的です。そのための4つのコツをご紹介します。

①指示を一つに絞る
さきほど、子どもの認知リソースは限られているとお伝えしました。そのため、情報の量をコントロールすることが重要です。

「トップをつくって、ボールをよく見て、しっかり振り抜け!」

このように、一度に多くの指示を出すのは避けましょう。そうではなく、アドバイスを最も重要な一つの要素に絞ります

たとえば、「次の1球は、トップをつくることだけ意識してみようか」といった感じです。

これで、お子さんは限られた注意力を一つの課題に集中できます。

②アドバイスは動作の直前に伝える
プレーを始める直前にアドバイスすると、短期記憶として指示を保持しておく時間が最小限になります。

他のことに気を取られる前にすぐ行動に移しやすくなります。

③「指示」を「質問」に変える
お子さんの自律性を育む効果的な方法は、”質問”です。お子さん自身に考えさせることを習慣にしましょう。

  • やりがちな指示
    「もっと腰を落とせ!」
    「しっかりボールを見て!」
  • 自律性を育む質問
    「今のプレー、自分ではどう思った?」
    「ボールをどう見たら、もっとうまく打てそうかな?」

このような質問を投げかけることで、お子さんは自分のプレーを客観的に振り返ることができます。すると、解決策を自分で見つけようとします。

この「自分で考える」プロセスこそが、真の成長と内発的動機づけの源泉になります。

④できたことを承認する
承認することで、内発的動機づけを高められます。

お子さんが成長するためには、「自分はできるんだ」という”有能感”が必要なんです。これは、自律性と並んで重要な心理的欲求です。

たとえ結果が完璧でなくても、プロセスの中でできた小さな成功を具体的に承認しましょう。

たとえばこんな感じです。

「今のは空振りだったけど、さっき意識しようって言ったトップはすごく良かったよ!」

このように、結果ではなく努力や良かった行動を褒めるように心がけましょう。そうすることで、お子さんの行動が強化されます。

そして、「次もやってみよう」という内発的動機づけが高まり、挑戦を恐れない心が育ちます。

その結果、親子の関係を「批判する側とされる側」から「共に成長を目指すパートナー」へと変えることにつながります。
ちなみに、より質の高い練習をお考えでしたら、【練習は質が9割】驚くほど上達!親子で始める「意図的な練習」3つの極意をチェックしてみてください。

今回のまとめ

お子さんがアドバイスをすぐに実行できないとしても、決してやる気がないからでも、話を聞いていないからでもありません。

忘れることは、人間にとって自然な脳の働きです。

子どもの注意力や自制心のタンクは消耗しやすく、一度に多くの情報を受け取れません。

感情的に叱ることは自律性を奪い長期的なやる気を損ないます。

お伝えしたことを参考にすることで、「また忘れてる!」というフラストレーションから抜け出すことができるはずです。

お子さんが自ら考え、成長できるように効果的なサポートを心がけましょう。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡くださいね。

あなたからのご連絡をお待ちしています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参考文献:

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