【研究結果】動体視力だけを鍛えても、打撃はほとんど変わりませんでした

【研究結果】動体視力だけを鍛えても、打撃はほとんど変わりませんでした
「バッティングが上手い子は、きっと動体視力がいいんだろう」
そう思って、鍛え方を調べたことがあるかも知れません。
実は、動体視力を鍛えるトレーニングをしても、「打撃の成績はほとんど伸びなかった」という研究結果があります(Kohmura, 2019)。
もちろん、動体視力を鍛えること自体は、悪いことではありません。ただ、動体視力だけを鍛えても、打撃向上にはつながらないということです。
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
「見る力の正体」がわかれば、遠回りな練習に時間を使わずにすみます。
「うちの子は、動体視力が悪いから打てないのでしょうか?」
そんな質問をいただくことがあります。
その疑問に、私の35年以上の研究と指導経験に加え、最新のスポーツビジョンの研究をもとにお答えします。
これを知ることで、お子さんのバッティングの向上につながっていくはずです。
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それでは、本編を進めていきましょう。
「動体視力がいい子は打てる」は、どこまで本当なのか
「動体視力がいい子は打てる」という考えは、半分は当たっています。
プロ野球選手585人を調べた研究があります(Laby, 2019)。視覚機能が高い上位20%の選手は、低い20%の選手より打撃の成績がよかったんです。
1シーズンに550打席立つ選手で計算すると、視覚機能が高い選手の方が、四球を5.5個多く選べていた計算になります。
また、ボール球になる速球に手を出す割合も9.5%少なかったことがわかっています。それだけ「際どい球を見極めていた」ということです。
ただし、この研究で測られたのは、動体視力ひとつではありません。見え方の細かさや、短い時間で見分ける力を組み合わせたテストでした。
見る力は、1本の糸ではなく、何本もの糸をより合わせたロープに近いものです。
その具体的な内容を見ていきましょう。
なぜ「目がいい子は打てる」と考えてしまうのか
一般的に「目がいい子はバッティングがいい」と考えがちです。
保護者の方から、こういうご相談をよくいただきます。
「ボールは見えているはずなのに、当たらない」
打席で空振りが続けば、「動体視力が悪いから?」と思うのも無理はありません。でも、実は「目の良さ」は、いくつもの要素が重なったものです。
「動体視力」や「視力」の良し悪しだけではないんです。
ところが、チームや家庭で、その総合的な「目の良さ」を数字で確かめるのは難しいですね。だから、速い球を打ち返す子を見ると、「あの子は目がいい」「動体視力がいい」と考えてしまうのだと思います。
見る力を数字などで評価する手段がない以上、「打てた・打てなかった」という結果から理由を推測するのは、自然なことです。
では、打てることと目の良さには、どういう関係があるのでしょうか?
それを確認していきましょう。
ちなみに、目の使い方や見え方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
関連記事:【最新情報】野球をする子どもたちに知ってほしい目のコンディショニング

動体視力が上がっても、打撃が伸びるとは限らない
動体視力を鍛えれば、動体視力そのものは良くなります。
でも、先ほどお伝えしたように、それだけで打撃が伸びるとは限りません。その研究を、もう少し詳しく見てみましょう(Kohmura, 2019)。
対象者は、平均22.9歳の男性46人です。2つのグループに分けて、週3回のトレーニングを4週間、合計12回おこないました。
1つのグループは、いつも通りボールを打つ練習をするグループ。もう1つは、打つ練習の代わりに、飛んでくるボールを目で追い続けるトレーニングを行うグループです。
結果は、はっきり分かれました。
打つ練習をしたグループは、球をどれだけ正確に打ち返せたかを数値化したテストで、点数が56.3点から71.7点に上がりました。
一方、目で追う練習をしたグループは、バッティングの点数がほとんど変わりませんでした。そのかわり、動いているボールを見分ける「動体視力」は高まっていました。
動体視力を鍛えれば、動体視力は高まります。でも、それだけでは打撃力は向上しない可能性があるわけです。
つまり、打撃向上には、「動体視力」だけでない要素が必要だと言えます。
その参考になる、14〜22歳の選手1352人を調べた研究があります。対象は、選抜レベルの選手でした(Ho, 2023)。
目的は、ポジションによって見る力に違いがあるかを調査することでした。
動体視力のほかに、視線をパッと移す力、目で見て手や体を動かす速さ、映像を素早く処理する力も、「野球で必要な見る力」として評価しました。
つまり、いくつもの力が合わさってはじめて「野球で使える見る力」になるということです。
ちなみに、この「見る力」がとくに高かったのは、捕手たちでした。
なお、動体視力トレーニングと打撃の関係については、大谷翔平選手の例を交えて詳しく解説した記事もあります。
関連記事:動体視力トレーニングをして、大谷翔平選手を目指そう

家では「見る→決める→動く」がつながる練習に変える
必要なのは、見て、決めて、動くまでがひと続きになる練習です。
その練習を考えるうえで参考になる、チームスポーツの22件の研究を集めた分析があります(Zhu, 2024)。
モニター画面の中を見て、視覚能力を高める練習をしました。すると、その課題そのものの成績はぐんと伸びます。
ところが、実際の試合の成績はそこまで伸びていませんでした。
一方で、選手自身の目線で、実際に体を動かしながら行う練習は、試合の成績への効果が大きい傾向がありました。
最近では、VRを使った視覚反応トレーニングもあります。しかし、画面をじっと見て見分ける練習だけでは足りない可能性があるんです。
実際のボールを見てバットを振る動きとセットにしてこそ、試合で活きてくると考えられるわけです。
やることは、シンプルです。特別な道具も、新しいメニューもいりません。いつものトスバッティングや、バッティングセンターのバッティング練習で大丈夫です。
ただ、ひとつだけ決め事があります。
1球ごとに、「打つか見送るか」、その理由を考えてバッティングをすることがルールです。
そして、こう聞いてみてください。
「今のは、ストライクだった? ボールだった?」
「どうして振ったの?」
「どうして振らなかったの?」
実際はボールだったのに、ストライクに見えて振っていた。その逆のケースもあると思います。ここが、お子さん自身が、自分の見え方のズレやクセに気づける瞬間です。
この「見て決める力」は、特にボールを見極めて出塁する力と関係しています。
大学野球の選手14人を調べた研究があります。投手の映像を見て、ストライクかボールかを判定してもらいました。
判定の正答率が高い選手ほど、実際の試合でも四球を選ぶ割合や、塁に出る割合(出塁率)が高かったのです(Morishita, 2025)。
おもしろいのは、打率や長打率とは関係がなかったことです。見極める判断と、打って長打にする技術は、別の力なのかもしれません。
これからは、「よく見ろ」ではなく、「今のボール、どう見えた?」と聞いてみてはどうでしょうか。
また、ティーバッティングに判断の要素を加える具体的な方法について、詳しく解説した記事もあります。
関連記事:【ティー打撃】実践で役立たない?足りないのはこの練習

今回のまとめ
動体視力を鍛えることは、ムダではありません。大切なのは、そこで終わりにしないことです。
見た情報を、打つか見送るかの判断につなげる。そこまでをひと続きにして練習してみてください。
きっと、お子さんのバッティング向上につながるはずです。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡くださいね。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献
1. Effects of Batting Practice and Visual Training Focused on Pitch Type and Speed on Batting Ability and Visual Function(PMC6942478)
2. Pitch Selection Ability and Spatial Executive Function Independently Predict Baseball Batting Performance(PMC12568115)
3. Effects of Perceptual-Cognitive Training on Anticipation and Decision-Making Skills in Team Sports: A Systematic Review and Meta-Analysis(PMC11505547)
4. The Effect of Visual Function on the Batting Performance of Professional Baseball Players(PMC6856529)
5. Psychomotor and visual skills underlying position specialization in 1352 elite youth baseball players(PMC9851526)
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