【徹底解説】上達のための練習と、週末の打席で力を出す練習は同じではない

【徹底解説】上達のための練習と、週末の打席で力を出す練習は同じではない

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

もしかして、月曜日から金曜日まで、同じような練習をしていませんか?

平日は、お子さん一人で練習するご家庭も多いと思います。そうすると、素振りが練習の中心になりがちではないでしょうか。

また、練習メニューは、お父さんが決めている家庭も少なくないと思います。

そんな場合、特に試合を控えた金曜日は要注意です。フォームの気になるところを直そうと、あれこれ細かくアドバイスを増やしていませんか?

でも実は、それこそが盲点なんです。

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

金曜日にアドバイスを増やすと、どうなるか?

じつは、最新のスポーツ科学でわかってきたことがあります。金曜日の細かい指摘が、週末の結果を悪くする可能性があるんです。

それを、私の35年以上の研究と指導経験の中から、わかりやすく解説します。

この内容を知れば、金曜日の練習で”何をすればいいか、何をしないほうがいいか”の判断基準がハッキリわかるはずです。

そして、お子さんは練習してきた動きを、試合で落ち着いて発揮できるようになっていきます。

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それでは、本編を進めていきましょう。

金曜日を”いつもの練習”から何に変えるか?

毎日の素振りは、上達のための大切な土台です。

でも、金曜日も同じ目的で練習を続けたり、細かな指摘にも注意が必要です。

なぜなら、上達のための練習と、本番で結果を出すための練習は、同じではないからです。

金曜日は新しい修正を加えず、本番前の準備をする”調整の日”に切り替えるタイミングです。

ここから、その理由と具体的な3つの手順を順番に見ていきましょう。

金曜日は、いつも通りの練習を続けるより…

毎日同じ練習を繰り返すことが、上達の一番の近道だと思うのは自然なことです。

そのため、金曜日の夕方も、いつもと同じメニューをさせているかもしれません。

そして、フォームの気になるところを直そうと、声をかける回数が、いつもより増えてしまうかもしれません。

問題は、試合を控えた金曜日の練習で、細かな指摘をしてしまうこと。それが、お子さんの新しい迷いになることがあります。

ですから、”いつも通り”でいいのか、一度立ち止まって考える価値があります。

金曜日は、反復量を増やすより、本番で出したい動きを確認する時間に変えることが大切です。

次は、それを確認していきましょう。

なお、関連記事で、練習にランダム性・変化を加えることで打撃の正確性が高まった実証データをご紹介しています。

関連記事:【試合で打てない原因】芯でミートする確率が63%→71%にUPした練習法!4週間で変わった高校球児実例

上達のための練習と、試合で結果を出す練習

多くの親御さんは、”練習をたくさんすればするほど、子どもは伸びる”と考えています。

それは間違っていません。反復練習は、動きを体に覚え込ませるための土台です。

ただ、その考え方だけで金曜日の練習メニューを決めると、見えなくなるものがあります。

持久系競技(長距離走や自転車など)の成人選手を対象にした研究があります。二つのグループに分け、ひとつのグループは、試合の前に練習の量やペースを計画的に減らしました。

もう一方のグループは、普段通りに厳しい練習をそのまま続けました。

結果は、「体を整える期間」をつくったひとつ目のグループの方が、本番で良い記録を出せました(Wang, 2023)。

野球の場合も、”試合前は、調整に切り替える“という考え方は、有効です。これは、他の競技の研究でも支持されています。

もう一つ、見落とされがちな視点があります。

それが、プレッシャー。

プレッシャーがかかると、脳の中で「注意をコントロールする場所(前頭前野)」と「体に動くよう命令を出す場所(運動野)」のつながりを上手く保てなくなります。

それで、体のコントロールが乱れて、失敗しやすくなってしまうんです(Lee, 2014)。

また、プレッシャーがかかると、脳が「自分の動きを監視・コントロールしよう」と必死になってしまいます(Sullivan, 2022)。

たとえば、頭の中で「バットの角度は?」「体重移動は?」と細かくチェックしようとしてしまう。

つまり、金曜日に指摘を増やしたり、新しい修正法を試そうとするのは、逆効果になる可能性があります。

それは、”意識してコントロールする”部分を、さらに増やすことにつながるためです。

だからこそ、金曜日はいつもの練習の延長ではなく、”本番で結果を出すための調整の日”に切り替える必要があります。

では、金曜日には具体的に何をすればいいのでしょうか?

また、関連記事で、上達のための練習と試合本番で結果を出すための練習の違いについて、より詳しくご紹介しています。

関連記事:【野球上達の新戦略】なぜ、あの子は急に上手くなった?秘密は「戦略的な反復」にあった!

金曜日の練習を”調整仕様”にする3つの手順

具体的に、金曜日の練習をどう変えればいいのか?

3つの手順に分けて考えてみましょう。

①今できている動きを一つだけ選ぶ

金曜日に見るポイントは、フォームの修正点ではありません。

逆に、今できている動きの一点に絞り、指摘する回数にも注意を払っていきましょう。

たとえば、成人のバランス能力を扱った興味深い研究があります。動きへの気づきを伝える回数を、次の4つに分けました。

  • 毎回
  • だいたい3回に2回
  • だいたい3回に1回
  • 声をかけない

4つのグループを比べると、3回に2回のグループだけ改善が見られました。1日後のテストでも動きの安定度が上がっていたんです(Marco-Ahulló, 2024)。

逆に、毎回欠かさず伝えたグループは、次の日のテストでは、かえってバランスを崩してヘタになっていました。

これは、”直しすぎないほうが、動きは翌日以降も安定しやすい”という考え方を支える結果です。

②新しい修正は加えず、短時間で確認する

金曜日は、①で選んだ一点を、短い時間でサッと確認する日です。

こんな研究があります。対象年齢は7歳から70歳と幅広いのですが、参加者の大多数は大学生でした。

指導者は、自分の指摘したいタイミングで、一方的に声をかけることがあります。しかし、練習する選手自身が「今、確認したい」と思ったタイミングで声をかけてもらうほうが効果的だとわかっています(Wang, 2025)。

ですから、お子さんには「今日はトップの形を確認しよう」などと、一点だけに集中させましょう。

そして、「今、何を聞きたい?」と自ら考えさせるようにもしてください。

③本番前の準備手順を同じ順番で行う

打席に入る前の一連の動きなどを、確認して実行しておきます。

たとえば、「2回素振りする」→「深呼吸を1回する」→「構えに入る」。こうした手順を本番と同じ順番でできるように、金曜日の練習で確認しておきます。

こうした試合前・打席前に行う決まった準備の手順を、プレパフォーマンスルーティンと呼びます。

このルーティンを持つ選手のほうが、持たない選手よりパフォーマンスが良くなることが確認されています(Rupprecht, 2021)。

この3つを意識すると、金曜日の練習を本番前の調整に切り替えやすくなります。

さらに、関連記事で、本番前の準備の手順を安定させる「ルーティン」の効果についてご紹介しています。

関連記事:【メタ分析で証明】試合で実力を発揮できない子が「結果を出した」今すぐできる科学的解決法

今回のまとめ

金曜日は、練習量を積み増す日ではありません。

練習の目的を、”身につける”から”調整”へ切り替えてみましょう。

それだけで、お子さんは週末のグラウンドで力を出しやすくなります。

今日お伝えしたことを、ぜひ試してみてください。

もし、練習メニューで迷っていることがあれば、いつでもご相談ください。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


参考文献

1. Effect of Reduced Feedback Frequencies on Motor Learning in a Postural Control Task in Young Adults(PMC10933749)

2. Conscious motor processing and the pressure-performance relationship: a systematic review(DOI: 10.1080/1750984X.2022.2127327)

3. Effects of tapering on performance in endurance athletes: A systematic review and meta-analysis(PMC10171681)

4. The effectiveness of pre-performance routines in sports: a meta-analysis(DOI: 10.1080/1750984X.2021.1944271)

5. Self-Controlled Feedback and Behavioral Outcomes in Motor Skill Learning: A Meta-Analysis(PMC12467369)

6. Out of control: Diminished prefrontal activity coincides with impaired motor performance due to choking under pressure(PMC4262628)

7. Exploring temporal patterning of psychological skills usage during the week leading up to competition: Lessons for developing intervention programmes(PMC5546585)

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