【センスじゃない】野球で”先を読む力”を育てるのは、意外に簡単でした

【センスじゃない】野球で”先を読む力”を育てるのは、意外に簡単でした

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

日曜の試合。ワンアウトで、ランナーは一塁。

ピッチャーが投げる前に、ショートを守るあの子だけが、スッと半歩動くと…。打球は、その動いたほうへ飛んでいきました。

ほかの子も同じ練習しているのに、なぜその子だけは先に動けるんでしょうか?

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

先ほどのショートの選手が先回りして動けたのは、教わったことを正しく覚えているからだけではありません。

カウント、走者、バッターの構え、ベンチの声。これらのバラバラな手がかりを、その選手自身がつなげて、一つの情報にしているからです。

この動きの仕組みがわかると、お子さんの守備の一歩目を変えていけます。もちろん、バッティングの結果や、走塁の質も変わってきます。

では、どこに目を向ければ、その差は埋まるのか?

それをこれから、私の35年以上の研究と指導経験をもとに、科学的根拠とともにお伝えします。

この内容を知ることで、お子さんは、ほかの選手より一歩早く動ける選手に近づけます。そのためには、試合後に3つの質問をしてみてください。それで、お子さんが変わるきっかけがつかめます。

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それでは、本編を進めていきましょう。

同じ練習でも”野球感”に差がつく理由

「野球感」は、生まれつきの才能ではありません。

試合中に何を見て、その情報をどうつなげているかの差です。練習でひとつずつ覚えた知識は、そのままでは判断につながりにくいんです。

実際、大学野球の選手を調べた研究があります。選手たちは試合の場面を、いくつかの「まとまり」としてとらえていました(Hashimoto, 2024)。

たとえば、アウトカウントやボールカウントで、どう判断しプレーするのかといったことなどです。

ここからは、それを3つに分けてお伝えします。

練習量を増やしても、一歩目が速くならない理由はなんだと思いますか?

「指示通りに動ける子」が伸びると思っていませんか?

練習では、コーチからいろいろなことを教わりますよね。

「一歩目を早く」という指導も受けていると思います。でも、試合になると一歩目が遅れてしまう。

コーチの指示通りにプレーしているつもりなのに、どうしてなのでしょうか?

それは、練習と試合とでは、起きていることが違うからです。試合では、複数の状況判断を同時にする必要があります

たとえば、大学野球の選手396名を調べた研究があります。アウトカウント、ストライク数、ボール数、走者の位置を組み合わせて、試合場面を整理しています。

その組み合わせは288通りになりますが、分析では、その中から代表的な36場面を取り出しています(Hashimoto, 2024)。

投手が1球投げるたびに、この288通りのいずれかの場面に移り変わります。ワンアウト一塁、カウントはツーボール。ここで次の投球がストライクかボールかで、もう別の場面です。

同じ研究では、選手たちにこう聞いています。「この場面は、バッターとピッチャーのどちらが有利か」。

すると、選手の答え方は、4つのグループに分かれました。

  • ボール球が多く、ストライクが少ない場面
    バッター有利と感じやすい。
  • ストライクが多い場面
    ピッチャー有利と感じやすい。
  • 0アウトで、ボールもストライクもまだ少ない場面
    こちらもやや打者有利と感じやすい。
  • 2アウトで、ボールもストライクもまだ少ない場面
    バッター有利ともピッチャー有利とも言えない感覚。

「情報をまとめる」とは、バラバラに見える情報の中から共通点を見つけて、1つの型として覚えることです。

たとえば、ワンアウト一塁。ワンアウト一、二塁。走者の数は違っても、どちらも「ゲッツーを狙える場面」という共通点があります。

すると、自分のところにボールが来たとき、どのようにゲッツーをとるのかを、シミュレーションできますね。これが、判断を早くすることにつながると言えるわけです。

「たくさんのことを覚えているはずなのに、試合になると動けない」。その原因は、覚えたひとつずつが、まだ共通点として結びついていないだけかもしれません

試合ではさらに、守備の動き・バッターの構え・ベンチの声といった、種類の違う情報を組み合わせて、先を読む力も必要になります。

では、一歩先を読める選手は、何をしているのでしょうか?

なお、状況を読んで先に動くための具体的なトレーニング法については、関連記事でも詳しくご紹介しています。

関連記事:【才能だと諦めない】”野球センスがない子”が試合で輝く! 1日5分の科学的トレーニング法

気づける子と気づけない子の分かれ道

教わったことを覚える力は、もちろん必要です。

しかし、覚えた知識は、引き出しにしまわれた状態です。試合では、どの引き出しを開けるかを、1球ごとに自分で決める力が必要です。

ただ、引き出しの数を増やすことと、開ける引き出しを選べることは、別の力になります。

たとえば、守っているとき。

相手のバッターのスタンスが変わり、ベンチの声のかけ方も変わったとします。そこから「次はエンドランかもしれない」と読んで、ポジショニングを変える。

お子さんが一塁のランナーになったときも同じです。

相手のピッチャーが、こちらを見る回数が増えた。そこから「牽制が来るかもしれない」と、いつでも戻れる準備をする。

ひとつひとつは、誰の目にも見えている情報です。違うのは、それをつなげて「今ここで何が起きそうか」という、自分なりの見立てに変えているところです

こうした先読みは、アンティシペーション(予測)と呼ばれます。少し先に起きることを見越して、自分の動きをそこに合わせる頭の働きのことです(Huesmann, 2024)。

つまり、ボールが来てから反応するのではありません。来る前に、体の準備を始めているということです。

この「事前の準備」ができるかどうかは、実験でもはっきり結果が分かれました。

大学の野球選手9名と、野球をしていない10名を比べた研究があります。投球の映像を見せ、決めていた球種ならバットを振る。違う球種なら、振りかけた動きを止めるというのが課題です。

振ると決めた球が来た場面でのミスは、選手が8.4%、未経験者が22.7%でした(Muraskin, 2015)。

実際の選手のほうが、予測に対する反応力が高かったわけです。これは、これまでの「情報をつなげてきた経験」が結果につながっていると言えます。

そして、先読み力が育つほど、選手は自分の見立てを頼りに動くようになります。しかし、感覚と実際のあいだにはズレがあるのも事実です。

だとすれば、お子さんが感じたことを、言葉にして確かめてみる価値がありそうです。

次は、お子さんが感覚を家庭で「言葉にする」方法を紹介します。

ちなみに、投手や野手の動きから牽制や盗塁を読み取る力については、関連記事でさらに詳しく解説しています。

関連記事:盗塁を決めるテクニック”3S”とは

“気づく力”を育てる2つの関わり方

じつは、気づく力を育てるのは、それほど難しくありません。

必要なのは、正解を先に渡さないことです。親が答えを先に言った瞬間に、子どもは考えるのをやめます。

そこで役立つのが、次の2つです。

① 試合の帰り道に3つ質問する
正解を教える前に、お子さんに感覚の手がかりを言葉にしてもらいます。

あの場面、何を見てた?
相手の守り、いつもと違うところあった?
次に同じ場面が来たら、何を先に見る?

大事なのは、答えが的外れでも、その場で正解を言わないことです。「そう見えたんだね」と、いったん受け止めてください。

目的は、バラバラの手がかりを自分でつなげる作業を、頭の中でやってもらうことです。

決まったメニューのない時間をつくる
言葉にする場ができたら、次は「自分で決める場面」そのものを増やしてください。

大人が決めたメニューなしに、自分たちでスポーツを楽しむ時間です。そうした時間が長い子どもほど、大人になってからの創造的な思考が高いと報告されています(Santos, 2016)。

また、決まったパターンの反復だけではなく、人数やルールをその都度変えると効果的です。予定どおりに進まない遊びほど、その場で判断する回数が増えます。

そんな慣れない状況や多様なパターンが、創造的な思考を育てる基盤になります

これは、野球以外のスポーツでも、鬼ごっこでも大丈夫です。

また、試合の帰り道にどう声をかけるかについては、関連記事でも取り上げています。

関連記事:【あるある】野球の帰り道、よかれと思った一言で子どもが黙り込む理由

今回のまとめ

活躍する子と伸び悩む子を分けている原因のひとつは、「野球感」の差と考えられます。

バラバラの手がかりをつなげて、自分なりの見立てを作れるかどうか。ここが「野球感」の正体です。

特別なことは必要ありません。

お子さんが、自分自身で答えを出す場面を増やしていってください。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

お子さんの守備の一歩目が遅いとお悩みでしたら、いつでもご連絡くださいね。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参考文献

1. The Spawns of Creative Behavior in Team Sports: A Creativity Developmental Framework(PMC4999444)

2. Recognition of the game situation in baseball(PMC11335100)

3. Knowing when not to swing: EEG evidence that enhanced perception-action coupling underlies baseball batter expertise(PMC4626325)

4. Perception-action coupling in anticipation research: a classification and its application to racket sports(PMC11300321)

5. Nonlinear engagement of action observation network underlying action anticipation in players with different levels of expertise(PMC7670634)

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