【最新研究】少年野球で「上から投げろ」が悪影響になる子がいる理由

【最新研究】少年野球で「上から投げろ」が悪影響になる子がいる理由
「もっと上から投げなさい」
コーチにそう言われて直しているのに、送球はかえって乱れる。
横に逸れる。上に抜ける。手前でワンバウンドする。そんなお子さんの姿を見て、戸惑っていませんか?
実は、腕の角度を上げ、ボールを持つ手の位置を高くすることは、すべての子にとっての正解とは限りません。
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
肩が動く範囲には、その子ごとに違いがあります。投げ方を直す前に見てほしいのは、お子さんが痛みなく、同じ形で繰り返せる腕の振り方です。
なぜ、上から投げさせても送球が安定しないのか?どこに視点を変えればいいのか?
それをこれから、私の35年以上の研究と指導経験をもとに、科学的根拠とともにお伝えします。
この内容を知ると、お子さんの投げ方で迷ったとき、家庭で見るべきポイントを整理しやすくなります。
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それでは、本編を進めていきましょう。

「上から投げろ」の前に見ておきたい個人差
投げ方を見るとき、ボールを離す「手」の位置で、良い悪いを判断することがあると思います。
たとえば、頭から手が離れ横から出る投げ方は、悪い投げ方と思う人が多いように思います。でも、投げ方を見るときは、この腕の角度より先に見てほしいポイントがあります。
同じ「上から投げる」でも、ある子には自然な形になり、別の子には窮屈な形になります。
ここから、それを3つに分けてお話しします。
送球が逸れる原因は、腕の角度だけで決めつけない
送球が乱れると、まず腕の振り方を疑いたくなりますね。
これは自然なことだと思います。
腕を縦にまっすぐ振り下ろせば、ボールはまっすぐ飛び、横から出るほど左右にそれる。多くの方がそう考えています。
特にヒジが下がって見えた瞬間は、すぐ目につきます。指導者も、短い言葉で伝えるために「上から投げろ」と言うでしょう。
ただ、コントロールは、腕を振る角度だけで決まるものではないんです。
9歳から12歳の少年野球選手を対象にした研究があります(Shitara, 2026)。対象は右投げの選手348人です。
じつは、コントロールの正確さと関連していたのは、野球を続けてきた年数だけでした。
もちろん、「経験を積めばコントロールが良くなる」と言い切ることはできません。それでも、送球の乱れを腕の角度だけのせいにするのは、少し早いと言えます。
ちなみに、球の速さと関連していたのは、次の3つでした。
- 投手の経験があること
- 1週間に100球以上投げていること
- 利き手の握力
腕の振り方を直しても送球が安定しないとき、腕の角度だけでなく、肩が無理なく動いているかを見る必要があります。
なお、送球が乱れる別の側面については、関連記事でご紹介しています。
関連記事:【少年野球】送球ミスが多い子のフォーム指導をするときに見落としていること

肩の可動域・骨格・体幹の使い方には個人差がある
上から投げさせようとする指導が間違っているわけではありません。
ただ、投げる選手の肩は、動く範囲に大きな幅があるという点に注意が必要です。
そのひとつに「総可動域」という考え方があります。これは、肩の関節を内側にひねる内旋(ないせん)、外側にひねる外旋(がいせん)の角度を足した合計のことをいいます。
何を言っているのか、わからないかもしれませんね。
ここでのポイントは、同じ「投げる」動きでも、もともと関節を動かせる範囲に個人差があるということです。
「小さく前へならえ」をして、そこからヒジを支点に腕を体に近づける動きが内旋、体から離すように動かすのが外旋です。
肩の可動域が広い子ほど、無理なく投げられる腕の角度の幅も広くなります。研究によると、総可動域は選手によって160度から210度まで幅がありました(Hellem, 2019)。
そして、肝心なことは、「上から投げる」は、腕だけの話ではないということです。
高校生130人とプロ288人の投手を比べた研究があります(Manzi, 2023)。アームスロット(腕の出る位置)で、上から投げる・中間・横から投げるの3つのグループに分けました。
アームスロットは「肩関節の中心からボールを持つ手までを結んだ線」と「垂直線」がなす角度のことです。
これも、わかりにくいかもしれません。
言いたいことは…
ボールを持つ手の位置が高く見える選手は、肩だけを高く上げているわけではないということです。上半身の傾きや、ヒジの角度も影響しているということ。
アームスロットは、ホームプレート側から見て測定され、「体幹の横への傾き+肩の外転(バンザイのように腕を体の横から持ち上げる動き)+肘の曲がり」という3つの動きの組み合わせで決まる、複合的な指標です。
高校生を上から投げるグループと横から投げるグループで比較すると、以下の違いがありました。
- 肩を横に上げる角度(外転・バンザイのような動き)
上から投げるグループが95度、横から投げるグループが87度で、差は8度でした。 - 上半身が横に傾く角度
上から投げるグループが34度、横から投げるグループが26度で、こちらも差は8度でした。
つまり、投げる動作は、体全体の使い方を見る必要があるということです。
また、肩や体幹の個人差とケガの関係については、関連記事でご紹介しています。
関連記事:【ケガで野球をあきらめないために】”体の個性”を知れば肩やヒジのケガを予防し野球が上達する!

家庭では「無理なく同じように投げられる角度」を観察する
必要なのは、腕の角度を上げることではありません。
同じ形で繰り返せる腕の振り方を、お子さんと一緒に見つけることです。
思春期の投手43人(平均16.8歳)を調べた研究があります(Ide, 2026)。研究チームの結論はこうです。
肩が無理なく動く範囲を保つことは、投げるときの肘への負担を減らす助けになる。
大事なのは「最適な範囲」という言葉です。広ければ広いほどいい、という話ではありません。
ここからは、3つのチェックポイントをお伝えします。
1つ目:痛みや窮屈さが出ていないか
- 投げたあとに肩やヒジをさする
- 投げる前に腕を回す回数が増える
- 投げる瞬間に表情が変わる
こうしたサインが出ていたら、その角度では今のお子さんに無理が出ている可能性があります。
2つ目:同じところに繰り返し投げられるか
近い距離から、続けて10球ほど投げてみます。狙うのは相手の胸のあたりです。
角度を少し変えたときに、まとまりが良くなるか、悪くなるか。それを見てください。
3つ目:力みが出ていないか
肩に力が入って腕だけで投げる形になっていないか。「今の投げ方、楽だった?」と確認してみてください。
これらは、短い距離のキャッチボールで確認できます。
目標は、狙ったところへ楽に投げられる回数を、少しずつ増やすことです。
さらに、痛みのサインをどう見極めるかについては、関連記事でご紹介しています。
関連記事:【最新研究】野球肘・成長痛の危険度を5分で判定する3つの科学的指標

今回のまとめ
「上から投げろ」は、すべての子に当てはまる一律の正解ではありません。その子によって違います。
しかも投球動作は、少年野球をしている今、まさに作られている最中です。
だからこそ、お子さんの自然な腕の振り方を、一緒に見つけてほしいと思っています。
今回の内容やお子さんの投げ方で質問があれば、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献
1. The Relationship Between Humeral Torsion and Arm Injury in Baseball Players: A Systematic Review and Meta-analysis(PMC7040950)
2. Review of Shoulder Range of Motion in the Throwing Athlete: Distinguishing Normal Adaptations from Pathologic Deficits(PMC6684718)
3. Shoulder Strength and Total Arc Range of Motion: Associations With Upper-Extremity Joint Kinetics and Ball Velocity in Adolescent Baseball Pitchers(PMC12881313)
4. Kinematic and Kinetic Comparisons of Arm Slot Position Between High School and Professional Pitchers(PMC10601404)
5. A combined logistic regression and decision tree analysis of factors influencing throwing velocity and accuracy in little league baseball players(PMC13147389)
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