【成長期に間違うと…】知らずにやってる練習が危険!正しい体づくりの新常識

今回お伝えする内容です
【成長期に間違うと…】知らずにやってる練習が危険!正しい体づくりの新常識
「YouTubeで見つけたトレーニングをさせているけど、本当に効果があるの?」
きっとあなたも、野球のスキル練習に加え、お子さんの体力や筋力を高めたいとお考えですね?
ご相談で特に多いのが、”練習メニュー”に関することです。しかし、お話を聞くと「メニューが多すぎる」というケースが少なくありません。
多すぎる練習メニューや、間違ったトレーニングは、ケガのリスクを高めます。
あなたのお子さんは、大丈夫ですか?
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
小中学生のお子さんが野球をしていると、ついつい周りの子と比べてしまうと思います。そして、能力を高めるために「いいトレーニングはないか?」とYouTubeなどを見ている保護者の方は多いようです。
ただ、情報がありすぎて、何をすればいいのかがわからない。そんなことはありませんか?
特にトレーニングは、専門知識がないと不安ですよね。
実は、その悩みには、”長期的な育成計画(LTAD)”が解決策のひとつになります。
そこで今回は、間違ったトレーニングには、どのような悪影響があるのか? どれくらいの頻度や量が最適なのかといったことをわかりやすく解説します。
お伝えする内容は、私の35年以上の研究により指導に活かしている根拠に基づくメソッドです。
特に成長期は、トレーニングを間違うと選手生命に関わります。だからこそ、慎重に考える必要があります。
詳しく解説しますので、ぜひ最後まで確認してください。
LTADは長期育成の羅針盤
LTADとは何でしょうか? あなたは、聞いたことがありますか?
それは、Long-Term Athlete Development。年齢と経験に合わせてスキルを段階的に伸ばすプログラムです。体系的で継続的な育成計画なんです。
その目的は、目先の勝利ではありません。お子さんが将来、より高いレベルで活躍するための”土台”を築くことです。
これは、高いビルを建てる前に、深く頑丈な基礎をつくる工事と同じです。しっかりとした土台がなければ、どんなに立派な建物もいずれ崩れてしまいます。
特に成長期は、心身のリスクが高い時期です。よりいっそうの注意が必要なんです。
成長期はリスクがいっぱい
成長期は、思春期と重なります。
お子さんの体が急に大きくなるだけでなく、精神的にも変化が大きい時期なんです。ケガのリスクだけでなく、自信喪失やバーンアウトといった危険も高くなります。
だから指導者や親は、”練習のしすぎ”や指導法に注意が必要です。
特に、”使いすぎ(オーバーユース)”は、絶対に避けてください。ケガの大きな要因の一つは、練習や試合で特定の動きを繰り返すことです。
実は、LTADが多様な動きを重視するのには、ちゃんと意味があります。それは、運動神経のネットワーク(複雑な脳神経回路と脊髄反射経路)を豊かにするためなんです。
野球以外の動き、”走る・跳ぶ・バランスをとる”などを通じて、特定の筋肉や関節に負荷が集中するのを防ぎます。
つまり、これがケガに強く応用力の高い選手へと育てる秘訣なんです。
LTADは、こうした偏りを防ぎ、バランスを取るための羅針盤として機能します。
なお、成長期の障害予防の実践ポイントは野球がうまくなるために成長期に必要なことをご確認ください。

適切なトレーニングの考え方
「トレーニングは毎日しないと力がつかない」
そう考えているお父さんは多いようです。一方で、「子どもの筋トレは成長に悪影響だ」と考えている人もいますね。
実は、今の常識は違います。成長段階に合わせたトレーニングは、むしろ体の成長にとって良いことなんです。
”成長段階に合わせる”ことが大きなポイントです。ですから、専門知識が必要になるわけです。
事実、野球のスキル指導はできるけど、適切なトレーニングメニューをつくれる指導者は少ないですね。
成長期のお子さんは、適切な頻度でトレーニングをしてください。そして、”休息日”を確保することがトレーニング以上に重要です。
筋力向上に必要な刺激を与えたら、筋肉が回復し成長する時間が必要です。休息は、トレーニング効果を最大化し、ケガのリスクを最小限に抑えてくれます。
週に2〜3回を目安に、お子さんのコンディションに合わせて行うようにしてください。
トレーニングをしたら、体にエネルギーを補充しましょう。
成長期の“回復力”を支える食事の整え方を野球選手は、しっかり食べて強い体をつくりましょうで解説しています。

成長スパート期は”量より質”
お子さんの身長が急に伸び始めたら、才能を伸ばす大きなチャンスです。
それと同時に、”選手生命を脅かす危険な時期”の始まりでもあるんです。
この成長スパート期(Peak Height Velocity)は、オスグッド病など成長期特有のケガが起こりやすい時期です。言い換えれば”育成のレッドゾーン”です。
なぜなら、この時は、骨の急成長に筋肉や神経の発達が追いつかないからなんです。そのため、一時的に動きがぎこちなくなる”クラムジー”という現象も起こりやすくなります。
急激な身長の伸びを例えると…
体のOSはアップデートされたのに、アプリ(筋肉や神経)がまだ対応できていない状態。
この時期に無理をさせると、システムエラー(ケガ)が起こりやすくなります。
最新の研究(The Effect of Peak Height Velocity on Strength & Power Development of Young Athletes)によれば、筋力が最も伸びるピークは、身長の伸びのピークからずれてやってくると記されています。
ですから、身長が急に伸び始めた時期は、重い負荷をかけるトレーニングは特に慎重に行う必要があります。
トレーニングの”質と正しいフォーム”、そして疲労管理を徹底することが最も重要になります。
トレーニングには、やはり専門知識が必要です。
お子さんのために、むやみに動画を見て参考にするのは危険とも言えます。
ちなみに、練習の“質”を高める休息と記憶定着のコツを【野球センスを意図的に作る】”5分ボーっ”で脳の配線工事!最強の反復&休息法で解説しています。

成長段階に合わせるのがLTAD
LTADは、「特定のメニュー」を詳細に規定するものではありません。
お子さんの成長段階に合わせて、基礎的な運動スキル(FMS)の習得を目指す”育成の枠組み”です。つまり、個々に優先すべき体力要素が違ってきます。
多様な運動経験(マルチスポーツ)を通じて能力を高めていくことを推奨しています。
LTADで推奨されているトレーニング要素は以下の通りです。
- 思春期前
基礎的運動スキル (FMS)、スピード (Speed)、敏捷性 (Agility)バランス(Balance)、協調性(Coordination)、筋力(Strength)など。
長期的な成功のための基盤(土台)づくり。幅広い運動スキルを強化するのが目的になります。
思春期前の筋力トレーニングは、重い負荷を扱うというよりも、正しいフォームと神経系の協調性を養うことが重要です。
- 思春期
上記に加えパワー (Power)、筋肥大 (Hypertrophy)。
筋力強化、身体運動のエネルギーを決定する体格・体力を高めていきます。
- バランストレーニング
片足立ち、バランスディスクなど。 - プライオメトリック・ジャンプ・トレーニング
立ち幅跳び、片足ジャンプなど。 - 方向転換トレーニング
事前に計画された方向転換、または予期せぬ方向転換走など。 - 投球・打撃動作に必要な筋力
立ち幅跳び(投球速度と相関あり)、背筋力(投球速度と相関あり)、握力(スイング速度と相関あり)など。 - 足趾力(そくしりょく)
足趾把持力(そくしはじりょく:投球・スイング速度と有意な関係あり)、足趾挟力(そくしきょうりょく:投球速度と有意な関係あり)。
そのほか、反復横跳びは投球速度向上、短距離ダッシュはスイング速度向上に効果があることがわかっています。
なお、基礎的運動能力の中身を詳しく知りたい方は、野球に必要な運動能力と運動センスについてを確認してみてください。
繰り返しになりますが、トレーニングメニューは個々の目的に合わせてつくる必要があります。
お子さんには、ぜひ資格を持つトレーナーの指導を受けさせてあげてください。

今回のまとめ
お子さんの可能性を最大限に引き出すために、長期的な視点を持ちましょう。
特に小中学生は、LTADを基に将来のための土台をつくる時期です。
成長期は、トレーニングの負荷を調整し、量より質を重視しましょう。
できる限り、専門家のサポートを受けるようにしてください。
それが、あなたとお子さんの野球人生をケガなく、長く輝かせるための羅針盤となるはずです。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡くださいね。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
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