【野球肩&野球ヒジ】知らないと後悔する!今すぐできる肩・ヒジの守り方をデータで検証
今回お伝えする内容です
【野球肩&野球ヒジ】知らないと後悔する!今すぐできる肩・ヒジの守り方をデータで検証
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
今回は、「子どもの肩とヒジを守る投球管理の重要性」についてお話ししたいと思います。
「最近、子どもが投げた後に肩を気にしているようで…」
「うちの子は、ヒジに痛みがあると言っているけど…」
このような心配をしている、お父さんお母さんが多いですね。
実際、野球をしている小中学生の3人に1人が、肩やヒジの痛みを経験してるという調査結果があります。
今では小学生の野球でも、試合の投球制限がありますが、それを守っているのに、なぜ子どもの肩やヒジは痛むのでしょうか?
その理由が、ある調査でわかってきました。
日本の中学生野球選手11,134人を調べたところ、週300球以上投げている選手は、ケガの発生率が約1.4倍も高くなっていたんです。
ということは試合だけでなく、普段の練習も含めた「トータルの投球数」を管理することが重要だと言えますね。
ということで、今回は次のことについて詳しく解説したいと思います。
- 投球数が肩とヒジに与える影響
- 年齢に見合った適切な投球数の目安
- プロ野球とメジャーリーグの投球数管理
といった内容を、私の35年の研究と指導で得た知見をもとに、海外の最新の研究結果も交えて解説していきます。
これからお話することは、特に小中学生の野球選手のお父さんお母さんに知ってもらいたい内容です。
その内容を知ることで、お子さんに合った具体的な投球数の目安や、ケガを防ぐための実践的な方法がはっきりとわかるはずです。
さらに、プロ野球の投球数管理法についても、最後にお伝えしますので、ぜひお付き合いください。
肩とヒジを守る投球数管理のコツ
投手として活躍する子どもたちの中には、試合後や翌日に肩やヒジに痛みを感じる子がいます。
適切な対処をしないまま投球を続けると、より深刻な問題につながる可能性があるので注意が必要です。
肩やヒジのケガは、投手と捕手に多くみられますが、それ以外の選手にも起こります。
そのため、ポジションに関係なく「投げ過ぎ」にならないことが何より大事です。
なお、肩の痛みの原因については、「投球を続けると何が原因で肩痛になるのか?」で解説をしましたので、併せて確認してみてください。
投球数が肩とヒジに与える影響
投球数が増えると、肩やヒジに大きな負担をかけることがわかっています。
実際プロ野球選手のケガの40~50%が、肩とヒジの故障によるものです。
疲労が蓄積してくると、投球フォームが崩れ始めます。具体的には、ヒジが上がりにくくなったり、胸を張ることができなくなったりします。
特に発育途中の子どもは、理想的な投球フォームが確立していない分、そのリスクがより高くなります。
その点についても、「投球を続けると何が原因で肩痛になるのか?」で解説をしましたので、ぜひ確認してください。
疲れてくると、いわゆる「崩れたフォーム」になってしまいます。
フォームが崩れることで、肩の筋肉や腱、靭帯に徐々にダメージが蓄積され、投球回数が増えるほどその影響は大きくなります。
深刻な場合、痛みや炎症を引き起こし、大きなケガにつながる可能性もあります。
週300球以上の投球を行った選手は、行わなかった選手に比べて、ケガの発生頻度が約1.4倍も高かったことは、先ほどお話をしたとおりです。
さらに詳しく調べてみると、中学生の多くが、過剰な練習を行っていることが明らかになりました。
- 日本臨床スポーツ医学会が推奨する「週1日の休養」を守っていない選手が多数いた
- 1日70球以上、週350球以上の全力投球を行う選手が多い
- オフシーズンがない、または3か月以下という選手が目立つ
注目すべき点は、肩やヒジの痛みを経験した中学生は、小学生の約1.6倍になっているという調査結果です。
これは、体力が向上し球速が上がることで、肩への負担が大きくなるためだと考えられています。
また、小学校時代からの過度な練習や投げ過ぎが原因で、成長期になってからケガとして現れているケースもあります。
一方で、喜ばしい報告もあります。
2021年に京都で行われた、小学生を対象とした調査によると、肩やヒジを痛める選手の数が、10年前に比べて大幅に減少していることがわかったのです。
これは、投球数を1日70球に制限するルールを導入したことと関係があるとされています。
この結果は、適切な投球数管理がいかに大切かを示していると言えます。
適切な投球数の目安は?
小学生や中学生の肩やヒジのケガを防ぐには、適切な投球管理が欠かせません。
研究によると、小学生で肩やヒジのケガを経験した選手は、将来的に再発するリスクが高まることがわかっています。
この問題への対策として、MLBが推奨する「ピッチスマートガイドライン」が参考になります。
これは選手の年齢や発育段階に応じた投球の指針で、投球数の上限だけでなく、様々な注意点が示されているので確認してみましょう。
たとえば、9歳から12歳の選手に対しては、次のようなガイドラインが設けられています。
- 運動能力、体力、楽しさを重視する
- 年間で最低4か月は投球を休む(うち2~3か月は連続して休養)
- 投球前に入念なウォーミングアップを行う
- 投球数制限と休息期間を徹底する
- 速球とチェンジアップ以外の球を投げないようにする
などをはじめ、様々なガイドラインが示されています。
また、年齢に応じた1日の投球数制限も明確で、9~10歳は75球まで、11~12歳は85球までとされています。
日本でも、各団体が試合での投球数制限を設けていますが、これだけでは十分とは言えないかもしれません。
それは、試合前後の調整投球や、日々の練習での投球数も考慮に入れる必要があると考えるからです。
アメリカでは、試合以外の日の投球数も厳密に管理し、日々記録をつけています。
このような日常的な投球数の記録と管理がオーバーワークを防ぎ、投球障害を効果的に防ぐことにつながっています。
ピッチスマートガイドラインについて詳しくは、MLBのホームページを確認してみてください。
投球数を管理する
プロ野球やメジャーリーグでは、選手の将来を見据えて綿密な投球数管理を行っています。
具体的には、試合や練習での投球数、球種、全力投球の割合、そして体の状態まで細かく記録を取ります。
これは選手が常に最高のパフォーマンスを発揮できるよう、科学的な分析に基づいた管理が必要だからです。
日本のプロ野球では、1軍も2軍もおよそ100球での交代が一般的です。メジャーリーグも同じように100球が目安ですが、マイナーリーグでは70~75球で交代します。
これは、マイナーリーグの選手が比較的若く、体力面での課題があることと、投球フォームが確立していないことを考慮しているためです。
マイナーリーグには、1Aといわれる若手育成チームがあります。ここでは30~40球という投球制限を取り入れているチームもあり、たとえ2アウトを取った段階でも、制限球数に達すれば必ず交代となります。
このように、アメリカではケガの予防を何より大切にして、投球数管理を徹底しています。
確かに小中学生の野球で、プロ野球のような細かな管理を行うのは簡単ではありません。
ただ、練習中の投球数管理は必ずできると思います。指導者をはじめとする周りの大人たちが協力して、管理ができる方法を考えて欲しいと思います。
今回のまとめ
いかがでしたか?
今回は、投球による肩とヒジのケガを防ぐための投球数管理の重要性について解説しました。
まず、過度な投球が肩やヒジに与える影響について、具体的なデータとともに説明しました。そして、適切な投球数の目安として、MLBが推奨する「ピッチスマートガイドライン」の指針を紹介しました。
さらに、プロ野球やメジャーリーグにおける徹底した投球数管理のお話もしました。
何より、試合だけでなく練習も含めたトータルの投球数を管理することが重要だと理解できたと思います。
ぜひ、今日から投球数の管理を実践してください。
ケガのリスクを減らし、パフォーマンスを向上させるためには、適切な練習量と休息、年齢や発達段階に応じたトレーニング、体の柔軟性を高めるストレッチなどが効果的です。
その点については、次回以降でお話したいと思います。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
石橋秀幸著、野球障害で泣かない!肩・ひじ・腰を治す、西東社
石橋秀幸著、マー君をめざす最新トレーニング、廣済堂出版
石橋秀幸著、レベルアップする!野球 科学・技術・練習、西東社
石橋秀幸著、野球体をつくる!、西東社
Kouno C, Onishi M, Kawabe R, Doi N, Tahu Y, Nagai-Tanima M, Aoyama T. Incidence and Characteristics of Elbow Injury in Japanese Youth Baseball Players: Comparison Between 2011 and 2021. Orthop J Sports Med. 2023 Oct 13;11(10):23259671231200844. doi: 10.1177/23259671231200844. PMID: 37846314; PMCID: PMC10576929.
Matsel KA, Butler RJ, Malone TR, Hoch MC, Westgate PM, Uhl TL. Current Concepts in Arm Care Exercise Programs and Injury Risk Reduction in Adolescent Baseball Players: A Clinical Review. Sports Health. 2021 May-Jun;13(3):245-250. doi: 10.1177/1941738120976384. Epub 2021 Jan 29. PMID: 33514287; PMCID: PMC8083153.
Thompson SF, Guess TM, Plackis AC, Sherman SL, Gray AD. Youth Baseball Pitching Mechanics: A Systematic Review. Sports Health. 2018 Mar/Apr;10(2):133-140. doi: 10.1177/1941738117738189. Epub 2017 Nov 1. PMID: 29090988; PMCID: PMC5857730.
Takagishi K, Matsuura T, Masatomi T, Chosa E, Tajika T, Iwama T, Watanabe M, Otani T, Inagaki K, Ikegami H, Aoki M, Okuwaki T, Kameyama Y, Akira M, Kaneoka K, Sakamoto M, Beppu M. Shoulder and elbow pain in junior high school baseball players: Results of a nationwide survey. J Orthop Sci. 2019 Jul;24(4):708-714. doi: 10.1016/j.jos.2018.12.018. Epub 2019 Jan 9. PMID: 30638688.
オンラインレッスンをご用意しています
野球初心者のお子様と、一緒に楽しく学べるオンラインレッスンです。
野球初心者の上達には、こちらのオンラインレッスンがお勧めです。
ぜひ、あなたの感想を聞かせてください
今回の内容について、あなたの感想を聞かせてください。
または、「こんなことが知りたい」ということがあれば、どんなことでも大丈夫です。
野球をしていて「?」があった時には、すぐに私に質問をしてください。
小学生はもちろん、中学生、高校生、大学生など、野球をしているすべてのプレーヤーの質問にお答えします。
そして、今回の情報が、あなたのお知り合いにとっても有益だとしたら、どうかお知り合いに情報をシェアしてください。
公式メルマガで、最新情報を入手してください
ブログの更新情報を、Holos Baseball Clinic 公式メールマガジンでお送りします。
野球に必要な
- 運動能力向上の方法
- 運動センス向上の方法
- トレーニングやコンディショニングのこと
- ケガ(スポーツ障害)や成長痛の予防
- クラムジー対策
など、エビデンスに基づいた情報を選りすぐり、週1〜2回お届けします。
下のボタンから、今すぐ登録してください。
ほかにも、
- お子様の運動能力と運動センスを高める方法
- 体の成長のための栄養管理について
- トップレベルの野球選手が行なっているセルフケア(コンディショニング)
- 成長痛やスポーツ障害について
などなど、今お困りで情報をお探しでしたら、ホロス・ベースボールクリニックが制作したオンラインコースがお役に立つかもしれません。
今すぐ、個別指導が必要ですか?
お子様の成長痛、肩やヒジのケガで、思うように野球の練習に取り組めていないなど、お困りのことはありませんか?
成長痛やケガからの回復については、あなたのお子様の状況を判断しながら、オリジナルのサポートが必要になります。
石橋が直接状況を確認して、トレーニングの指導を行っています。
そして、現在の体の状態や特徴(長所と短所)を知ることで、ストレングポイントがわかるコンディショニングチェックのサービスも開始しました。
コンディショニングチェックについては、こちらで詳しくわかります。
コンディショニングチェックについても、個別のトレーニング指導についても、小学生はもちろん、中学生、高校生、大学生も対象に行なっています。
ライバルに差をつけたい。
レギュラーを確保したい。
もっと上手くなりたい。
そういった思いがある選手は、ぜひ、ホロス・ベースボールクリニック事務局までご連絡ください。
好評発売中です
ホロス・ベースボールクリニックがお届けするkindleブックが、大好評です。
小学生の野球が、なかなか上達しない理由
「子どもが野球をはじめたが、なかなか思うように上達しない」
「野球をはじめて1年経ったけど、思うように上達していない」
そのようなお悩みの声が寄せられています。そこで、どうして小学生の多くが、野球が上達しないのかについてまとめたガイドブックを作りました。
小学生の場合、上達しないのには理由があります。そして効果的に上達する方法があります。
また、今回は「一流選手になるための心の習慣」についても触れています。
野球の上達にお悩みでしたら、ぜひご一読ください。
強い体をつくり、野球のパフォーマンス向上に必要な情報がオールインワンのガイドブック
野球をする子どもにとって必要な、運動能力のこと、運動センスのこと、強くて大きな体をつくる方法、トレーニングやコンディショニングのことetc…
知っているようで、じつは間違った認識を持っていることがたくさんあるはずです。
あなたのお子様が健康的に成長でき、野球の能力やセンスを高めるために、ぜひご一読ください。
お子様の強い気持ち(メンタル)を養いたい方へ
野球は、気持ちで結果が大きく左右するスポーツです。
身体能力以上に、気持ち(メンタル)のトレーニングが必要かも知れませんね。
野球をする小中学生に必要で具体的な、メンタル強化の方法を60のアプローチにまとめました。
でも、一つ一つのアプローチはとても簡単です。
親子で一緒にメンタル強化してみませんか?