【野球センスを意図的に作る】”5分ボーっ”で脳の配線工事!最強の反復&休息法

【野球センスを意図的に作る】”5分ボーっ”で脳の配線工事!最強の反復&休息法

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

「うちの子、あの子ほどの素質がないんだよね…」

あなたも、そんなふうに考えたことがありませんか?

実は、「素質」や「才能」については、大きな誤解があるのです。ご存じでしたか?

そう、素質や才能は生まれ持った資質だけではありません。

特に注目すべきは、脳の神経回路がどう発達するか。でも、この発達を促すには、ちょっとしたコツがあります。

そこで今回は、次のことを詳しく解説します。

  • 子どもの野球センスを科学的に伸ばす方法
  • 運動能力を効率よく高める具体的なアプローチ
  • 練習の「質」を高めるための実践的なヒント
  • 日常生活の中で野球能力を向上させる習慣づくり

これらの内容は、私の35年以上に及ぶ研究と指導実績によるものです。

休息の取り方が野球スキルを左右する」。そう聞いて驚くかもしれませんが、それも研究でわかっていることです。

そして、野球の練習以外の時間も、お子さんの野球脳を育てるチャンスに溢れています。

その具体的なアイデアも最後にお伝えしますので、ぜひ、最後までお付き合いください。

子どもの野球の才能は生まれつきじゃない!

お子さんのバッティングや投球を見ながら、こんな思いをしたことはありませんか?

もっとこうすれば上手くなるのに
どうして同じ練習をしても、あの子とは違うんだろう

でも安心してください。 落ち込む必要は全くありません。

科学的に見ると、「才能」と呼ばれるものには様々な要素があります。 その中には、生まれた後の環境や経験によって大きく育てられる部分がたくさんあるのです。

特に、お子さんの運動能力に関わる脳の神経回路がそうです。まさに練習という「経験」によってつくられ、強化されていくものです。

これから、お子さんの野球スキル向上に役立つ、その脳科学の仕組みを詳しく解説します。

神経回路を育てるスキル習得の仕組み

野球センスを高める近道は、実は地味な行動の繰り返しです。

ズバリ!必要なのは、脳の中に張り巡らされる「神経回路」の発達です。たとえるなら、神経回路は行動や思考をコントロールするための“配線”のようなもの。これは、お子さんの野球センスを伸ばす重要なポイントです。

では、どうすればお子さんの神経回路が育つのでしょうか?

ポイントは、「多様な運動刺激」を与えること。つまり、野球の練習だけではなく、歩く、跳ぶ、しゃがむ、握る、といった基礎的な動作が運動能力を高めます。こういった様々な体の動きは、実は脳に非常に多様な運動刺激を与えているのです。

文部科学省は、幼少期に身につけたい36の基本動作を公表しています。

これらは一見すると、野球とは直接関係ない動きも含まれていると感じるかもしれません。でも、様々な全身運動が、基礎的な運動能力の開発に関与しているのです。

お子さんが動くとき、手や足の関節は様々な方向に動きます。 すると、筋肉や皮膚の感覚受容器から、たくさんの情報が脳へ送られるのです。これを「多方向・多関節刺激」と言います。

この豊富な「感覚入力」が、脳の運動に関わる領域での神経回路のネットワークを密にします。そして複雑に「配線」していく手助けとなるのです。

たとえるとすれば…

お子さんの脳の中にたくさんの道を整備して、色々な場所に行けるようにしておくようなものですね。

あなたの周りには、運動能力の高いお子さんがいると思います。その子はおそらく、基礎的な動作を繰り返し行う環境が、生活の中にあると考えられます。

これは、忘れないでくださいね。

特に小学生は、野球のスキル練習だけでなく、全身を使った多様な遊びや運動を取り入れましょう。脳の運動回路の「土台」をしっかりとつくってあげることが大切なのです。

これは、将来的な専門スキルの習得において、非常に大きな財産になりますよ。

なお、野球に必要な運動能力については、「【必見!】野球の4大スキルを高める基礎知識」で解説しています。こちらも確認してみてください。

出所:文部科学省

上達に欠かせない「反復」のサイクル

平日の自主練習、あなたのお子さんはどれくらいの時間行っていますか?

やはり、仕事をしていると、お子さんの自主練にじっくり付き合うのは難しいですよね。すると、お子さんの自主性に委ねることになると思います。

そうなると、気になるのは「効果的な練習ができているか?」ということではないでしょうか。いかがですか?

多くの親御さんは、「持って生まれた才能」が野球の上達を左右すると考えています。

実は、そうとは限らないことが、脳科学研究でわかってきました。特に重要なのが「反復」と「休息」の質とサイクルです。

なぜ、このサイクルが大切なのか?

お子さんが、バッティングなど新しいスキルを習得する時、脳の神経回路が「強化」されます。また新しい「配線」がつくられるのです。「神経可塑性」と呼ばれる、脳が変化する力が働くからです。

反復練習によって、複雑な動きが無意識にできるようになります。バットスイングやボールの投げ方が、考えなくてもできるのです。この「自動化」という状態を目指して反復練習をするわけですね。

実は、この自動化のプロセスには、興味深いことがあります!


そう、ただ長時間練習するだけでは、自動化には不十分なんです。効果的なのは、8分から30分くらいの短時間の練習です。これを、グッと集中して行うのです。

そして、練習したことを記憶に定着させることも重要ですね。そのために必要なこと、それが「休息」の取り方です。

休息の取り方でスキルアップに差がつく

集中した練習と同じくらい、いや、もしかするとそれ以上に大切といえるのが「休息」です。

ひとつの練習の直後に、5分から10分ほど、何もせずにボーっとする「アイドルタイム」をつくるのがおすすめです。すぐに次の練習に移ったりせず、目を閉じて静かに座ったり横になったりしましょう。

この一見ムダに思える「何もしない時間」が、お子さんのスキルアップに必要なのです。それはなぜだと思いますか?

これから説明する内容は、非常に重要です!

この何もしない時間に、お子さんの脳は練習中に得た情報を整理します。また、練習の記憶を強化しているのです。見えないところで重要な作業が行われているわけです。

さらに、脳が練習で覚えたスキルを長期的に定着させる必要があります。それは、無意識で動作を再現できるようにするためです。

そこで、ぜひ知ってほしいことがあります。

この本格的な「脳の配線工事」は、主に睡眠中に行われます。興味深いのは、スキルを長年積み重ねてきた人たちと、そうでない人たちには違いがあることです。

スキルを積み重ねた人たちの脳は、運動に関わる領域の構造が変化していることが研究でわかっています。

これは、まさに日々の地道な「反復」と、その後の「休息(睡眠)」の組み合わせの賜物です。脳を物理的に変えて、スキルを確かなものにしている証拠と言えます。

あなたの周りにも、同じことをしても早く上達するお子さんはいませんか?

もしかしたら、その子は意識しているわけでなくても、「反復×休息」のリズムが自然にできているのかもしれません。

ぜひ、この知識を力にして、お子さんのサポートをしてあげてくださいね。

なお、「神経可塑性」について解説した「科学的野球指導!小中学生は「脳」を鍛えて、野球センスを劇的に伸ばすべし」も併せて確認してみてください。

日常生活で鍛える「野球センス」の育て方

お子さんの日常生活のあらゆることが、野球のスキルアップにつながる可能性があります。

「”野球センスがない子”が試合で輝く! 1日5分の科学的トレーニング法」で、「認知運動戦略」について説明しました。

認知運動戦略とは:

  • 周りの状況をしっかり理解する
  • その状況の最適な動きを判断する
  • 判断したプレーを実行する

この能力は、空間認知、短期記憶、状況判断力、予測力、意思決定力などと深く関連しています。

お子さんが日常生活で、次に何が起こるかを予測し、どう行動するか判断する場面はたくさんあります。そして、あらゆるシーンで、これらを鍛えることが可能なのです。

そこで、いくつか実践的なアイデアをお伝えします。お子さんの生活習慣を変えるヒントにしてみてください。

  • 料理のお手伝い
    「この野菜は、どのくらいの時間で火が通るかな?」などと予測させてみる。
  • 家事のお手伝い
    「これを先に片付けると、次の作業がスムーズになるかな?」と段取りを一緒に考え判断させてみる。
  • 通学路の移動中
    「あの交差点で信号の色が変わりそうだから、少し急ごうかな、それとも次の信号を待とうかな」と予測し判断する。
  • 遊びの場面
    ドッチボールで「ボールをこっちに投げそうだから、あっちに動こうかな」と予測し次の行動を決める。
  • 勉強
    「この問題は、前に解いたあの問題と似ているから、同じ考え方で解けそうだ」と予測を立てる。
  • トランプ
    「相手は次にこんな手を打ってくるだろうから、こう対応しよう」とゲームの状況を予測し戦略を立てる。
  • 片付け
    部屋が綺麗に片付いた状態をイメージしながら、どこから片付けるか考える。

あなたは、これらの活動を生活の中に取り入れるサポートをしましょう。

ひとつ付け加えると、「なんとなく」ではなく、特定の情報に意識的に注目し、「次にどうなるか?」を予測させると効果的です。たとえば、相手の体の動き、物の状態、周囲の状況などです。

大切なのは次の3つ:

  • 周りの状況をしっかり理解する
  • その状況の最適な動きを判断する
  • 判断したことを実行する

この積み重ねが、お子さんの野球のプレーでの予測スキルや、判断力の向上につながると思いませんか。

お子さんが、失敗を恐れず行動できる後押しをしてあげてくださいね。日々の反復練習で脳の神経回路が強化され自動化できるはずです。

今回のまとめ

運動能力は生まれつきだけでなく、脳の神経回路を育てる経験によって大きく変わります。

多様な全身運動が神経回路の発達を促し、野球センスの土台をつくります。

短時間で集中した反復練習と十分な休息(特に睡眠)が、スキルの自動化に重要です。

日常生活でも判断力や予測力を育てることで、試合での動きにつながります。

毎日の小さな積み重ねが、大きな成長につながるのです。お子さんの可能性を信じて、焦らず楽しみながらサポートしていきましょう!

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。

あなたからのご連絡をお待ちしています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参考文献:

Dayan E, Cohen LG. Neuroplasticity subserving motor skill learning. Neuron. 2011 Nov 3;72(3):443-54. doi: 10.1016/j.neuron.2011.10.008. PMID: 22078504; PMCID: PMC3217208.

Future spinal reflex is embedded in primary motor cortex output(未来の脊髄反射は一次運動野からの運動出力信号に組み込まれている)、梅田 達也、横山 修、鈴木 迪諒、兼重 美希、伊佐 正、西村 幸男、Science Advances、10.1126/sciadv.adq4194

Servant M, Cassey P, Woodman GF, Logan GD. Neural bases of automaticity. J Exp Psychol Learn Mem Cogn. 2018 Mar;44(3):440-464. doi: 10.1037/xlm0000454. Epub 2017 Sep 21. PMID: 28933906; PMCID: PMC5862722.

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