【研究結果】少年野球選手は”怒れば強くなる”と思っていますか?

【研究結果】少年野球選手は”怒れば強くなる”と思っていますか?

石橋秀幸
元広島カープ一軍
トレーニングコーチ

「チャンスなんだから、もっと気合を入れろ!」
「三振して泣くなんて、メンタルが弱すぎるぞ!」

このように、お子さんに強い言葉をぶつけてしまうことはありませんか?

実は、その「しっかりしろ」などの叱咤こそが、お子さんの実力を奪っているかもしれないんです。

近年のスポーツ心理学で、意外な事実がわかってきました(2024年・2025年の最新研究)

こんにちは。 ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

結論はシンプルです。メンタルは、叱って鍛えるものではありません。今回の内容を知ると、怒る以外にお子さんの力を引き出す方法が見えてきます。

それについて、私の35年以上の研究と指導現場で確認してきたことを、わかりやすい言葉で解説します。

ここからは、お子さんの強いメンタルが自然に育つために、親が手放すべきことをお伝えします。

ぜひ、最後までお付き合いください。

“メンタルを鍛えろ”が逆効果になる理由

お子さんのメンタルを強くする鍵は、怒ることではありません。

なぜなら、親からのプレッシャーは、子どもの不安を高めるからです。それが、本来の力を封じてしまうことにつながることがあるんです。

そこで、まず「なぜ怒ってもメンタルが強くならないのか」をスポーツ心理学の観点から見ていきます。

次に、強い心が育つために必要な視点を二つお伝えします。

最後に、今日から実践できる3つのサポート法を具体的に紹介します。

では、進めていきましょう。

なぜ怒っても、子どものメンタルは強くならないのか

厳しく叱るだけでは、お子さんのメンタルは強くなりにくいんです。

多くの保護者は、厳しく接するほど逆境に強い心が育つと考えます。愛情があるからこそ、「もっとできるはずだ」と声を荒げてしまう。

それは、親なら誰もが通る道でしょう。

しかし、2024年のスポーツ心理学の研究は、まったく逆の事実を示しました(Coutinho, 2024)。

たとえば、父親が「勝つこと」や「ミスをしないこと」ばかりを重んじる雰囲気をつくっているとします(成績志向の雰囲気)。すると子どもは、「失敗への恐怖」を強く持つようになります。

期待に応えられなかったらどうしよう
お父さんをがっかりさせたくない

そんな不安が頭を占めてしまうんです。また、「怒られないためにやる」状態に陥りやすくなるとも言えます。

ちなみに、コントロール型の指導が失敗への恐怖を生み、子どもの積極性を奪う仕組みについては、関連記事でも詳しく解説しています。

関連記事:【落とし穴】少年野球で『もっと積極的に!』が逆効果になる2つの本当の理由

「メンタルを鍛えたい」は正しいけど…

「大事な場面で動じない強い心を持ってほしい」。

その願いは、親として当然の思いですね。もちろん、私もその一人です。

じつは、2025年の最新研究で、こんなことが実証されました(Chen, 2025)。それは、同じ子どもたちを長期間調べた研究で示されたものです(縦断研究)。

親が「ああしろ、こうしろ」と厳しく支配する関わり方をするとします(権威主義的)。

しかし、頭ごなしに従わせる関わりでは、お子さんの中にある大切な欲求が奪われてしまいます。

自分で決めてやりたい」という気持ちや「自分ならできる」という気持ちが育ちにくくなるんです(自律性と有能感)。

こうした心の栄養が足りなくなると、お子さんに何が起きるでしょうか?

失敗から立ち直る力、つまり「折れない心」が育ちにくくなります(心理的レジリエンス)。その結果、試合でのパフォーマンスまで落ちてしまうんです。

「強いメンタル」は、外から圧力をかけて鍛えるものではありません。「自律性と有能感」の2つが守られて、はじめて自然に育っていくものなんです。

なお、有能感と自律性を守る親の関わり方について、関連記事でも詳しくご紹介しています。

関連記事:反抗期の子どもと野球…”燃え尽きる子”と”伸びる子”を分ける親の関わり方

子どもの力を引き出す感情管理の3つのサポート

必要なのは、新しいテクニックではありません。

ここからは、お子さんの実力を引き出すために今日からできる、3つのサポート法を紹介します。

1. 「ああしろ、こうしろ」という命令を一つ減らす
たとえば、三振したときに「なんであそこで振らないんだ」と責めたくなる気持ちを押さえ込んでください。

「どういう判断で見逃したの」などと、お子さんの考えを聞いてみましょう。温かく見守りながら、自分で答えを選ばせてあげてください。

こうした関わりは、「折れない心」やプレーの土台づくりにつながることが研究で示されています(Chen, 2025)。

2. 「過剰な期待」を「無条件の応援」に置き換える
「絶対に勝てよ」「お前なら打てる」といった結果への強い期待やプレッシャーを感じさせないようにしましょう。

プレッシャーは、「親をがっかりさせたくない」という思いを抱かせます。それが、かえって「失敗への恐怖」を強くしてしまいます(Coutinho, 2024)。

さらに少年野球の親子を調べた研究では、父親のプレッシャーが「野球を辞めたい」という気持ちまで高めると示されました(De La Cruz, 2021)。

結果への期待を一度手放してみてください。

「どんな結果でも応援しているよ」。そう見守られていると感じることが、失敗を恐れずにチャレンジできる選手へと育つ土台になります。

3. 失敗を責めず、成長の過程に目を向ける
三振したときなど、ミスを厳しく批判したくなる気持ちを封印しましょう。

強く責められると、お子さんは「次も失敗したらどうしよう」という恐怖に縛られます。

代わりに「今日は力強いスイングを意識していたね」などと、頑張った過程を認めてあげてください。それが「自分にはできる」という心の栄養になります。

この3つに共通するのは、お子さんを信じて任せる姿勢です。

また、ミスをしたあとに「結果ではなく過程を認める」声かけの具体的な方法について、関連記事でもご紹介しています。

関連記事:野球で『切り替えろ!』が逆効果になる脳の仕組み|ミスを引きずる本当の理由

今回のまとめ

「強い気持ちで試合に臨んでほしい」という思いが、時として強い叱責になることがあるかもしれません。

皮肉にも、それがお子さんの心から「やる気の土台」を奪ってしまう可能性があります。

今回ご紹介した研究では、支配的な関わりを減らすことが「折れない心」を育てることにつながると示されています。

今日から完璧に変わる必要はありません。

まずは、試合の帰り道の車の中で、責める言葉を一つ飲み込んでみることからはじめてみてはどうでしょうか。

その小さな一歩が、お子さんの野球への情熱と、強いメンタルの土台を育てる支えになるはずです。

お子さんの野球への向き合い方で気になることがあれば、いつでもご相談ください。科学の視点から、あなたとお子さんをサポートします。

それでは、引き続き一緒に野球の上達を目指していきましょう。

次回も、お子さんの上達につながるお話をお届けします。楽しみにしていてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


参照文献

1. Unveiling Players’ Perceptions of Mother- and Father-Initiated Motivational Climates and Fear of Failure in Youth Male Team Sports(PMC11435637)

2. The mediating role of psychological resilience between parenting styles and athletic performance in adolescent athletes: a serial multiple mediation model(PMC12490276)

3. The Father in Youth Baseball: A Self-Determination Theory Approach(PMC8123654)

4. Impact of a controlling coaching style on athletes’ fear of failure: Chain mediating effects of basic psychological needs and sport commitment(PMC9936072)

5. Associations Between Parental Expectations and Competitive State Anxiety in Adolescent Tennis Players: Mediation by Basic Psychological Needs(PMC12732109)

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