【わかりやすい】試合で差をつけるプロ直伝の芯を外す投球術
今回お伝えする内容です
【わかりやすい】試合で差をつけるプロ直伝の芯を外す投球術
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
私たちは、小中学生の野球スキル向上を、科学的エビデンスに基づいてサポートしています。
今回のテーマは、「打者のバットの芯を外す投球術」です。
お子様がピッチャーとしてマウンドに立つとき、親としては「どうか打たれませんように」と願いますよね。
その気持ち、よくわかります。
小中学生の投手であれば、これまでに何度もお伝えしたように、まずは理想的な投球フォームの習得が求められます。
ただ、小中学生の子どもが、大人と同じ動作で投球できないことは、「打たれない投手になって打者を翻弄!プロの投手も使う「タイミングを外す」3つの間」でお伝えしたとおりです。
ですから今は、基礎体力を高めつつ、野球に必要な専門的な体力や、スキルを高める繰り返しの練習が欠かせません。
といっても、練習試合や大会では結果を出したいですよね。
そこで、そのひとつのアイデアを、今回お伝えします。
ということで、打者のバットの芯を外す投球について、今回は掘り下げていきます。
小学生、中学生であれば、多彩な変化球と速いストレートで打者を翻弄できる投手は、多くないのではないかと思います。
また、小学生の場合は、変化球が禁止されているリーグもあると思います。
そのため、大きな変化でなくても、打者のバットの芯を外す投球術を知ることで、投手としてレベルアップできます。
もちろん、それは小中学生が簡単に習得できるとは限りません。
でも、あなたがその具体的な内容を知ることで、親として、お子様の練習をどのようにサポートしたらいいのかが理解できます。
また、ピッチングやバッティングは、メンタルと深い関係があります。
そこで、アウトカウントやボールカウントが、投手と打者の心理にどのような影響を与えるのか?といったことや、試合状況が投球に与える影響を調査した、アメリカの研究結果についてもお伝えします。
この内容を知ることで、試合に臨む時のメンタル面でのサポートにも役立つ内容になっています。
そして、最後にプロが実践している投球練習の方法もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
バットの芯を外す投球とは
バットの芯を外し、打者を打ち取ることを、「打たせて取る」といいますね。
その投球術は、「打たれない投手になって打者を翻弄!プロの投手も使う「タイミングを外す」3つの間」と併せて理解すると、さらに効果的です。
今回は、特に「打者のバットの芯を外す」ことにフォーカスして、バッターに打ち損じさせる投球術を解説します。
コンタクトポイントと打球の関係
バットの芯を外して、打たせて取るというのは、ゴロやポップフライを狙って打たせる投球です。
バッターは、バットの芯に当てて、強い打球、飛距離のある打球を打とうとしてスイングしてきます。
そこで、バットの芯を外すということを、より理解するために、バットの芯と打球方向について説明しますね。
まず、長打を打たれてしまうのは、「ヘッドスピードを上げて飛距離アップ!3つの秘訣」でも解説したとおり、ボールの中心より少し下をミートされた場合です。
特に、バットの芯の真ん中か、「少し上の部分」でボールをとらえられると、強い打球になるため要注意です。
また、バットの芯の真ん中か、「少し下」でとらえられると、ライナー性の打球や強いゴロになって、ヒットになる確率が高くなります。
一方で、バットの芯から大きく上に外れると、「ポップフライ」
になりやすく、下に大きく外れると、弱いゴロになりやすくなります。
つまり、少し芯を外すことができれば、凡打に打ち取る可能性が高まるわけです。
それを狙って打ち取りにいけるようになるのが、今回のテーマです。
そのためには、打者の心理と投手の心理の違いを理解することも重要なポイントになります。
なお、打者のタイミングを狂わす投球術としては、踏み込み足を上下するタイミングをランダムに変えることが効果的です。
それを解説した「打たれない投手になって打者を翻弄!プロの投手も使う「タイミングを外す」3つの間」も合わせてチェックしてみてください。
ピッチャー心理と打者心理の違い
試合では、投手も打者も緊張しますね。
その緊張が、練習とは違う動きになってしまうことがあります。
「ブルペンでは調子が良かったのに…」
というコメントを残すプロ野球選手もいるのですから、練習と試合では、心理的な違いがあるわけです。
そのあたりのメンタル面の強化について、「一流の野球選手になるために必要なこと」でも解説していますので、併せて確認してみてください。
試合での心理面については、ピッチャーと打者それぞれの立場の違いを調べたアメリカの研究があります。
興味深い内容ですので、その内容をお伝えします。
この研究では、8つの大学の野球部に所属する打者294人、投手102人、合計396人の選手を対象に調査を実施しました。
ポイントは、アウトカウント、ボールカウント、ストライクカウントが同じ状況でも、バッターとピッチャーでは感じ方が違うということです。
例えば、0アウト、0ボール、0ストライクの時は、打者は投手より有利だと認識していました。
これは、試合開始直後やイニングの始まりのため、打者は比較的自由に打てるためだと考えられます。
逆に投手は、「まずはストライクを取りたい」とか「慎重に投げなければ」という心理的なプレッシャーを感じやすい状況ですね。
また、2アウトで、ボールカウントとストライクカウントがそれぞれ0または1である状況では、打者は投手より不利だと認識していました。
これは、2アウトという状況から、ヒットを打っても得点につながりにくいという心理面が影響していると考えられます。
一方の投手は、あと一人抑えればチェンジであったり勝利という場面ですから、集中力が増す傾向があります。
バッターは、一度打席に入ると、次の打席が回ってくるまで8人待たなければいけません。つまり、打つチャンスは限られていますから、1打席ごとの試合状況に敏感になっているともいえます。
そのあたりの打者心理をうまく利用することで、打者に打ち損じさせる可能性が高まります。
ツーシームでバットの芯を外す
小中学生の投手の場合、落差の大きい変化球を投げる技術は、まだ未開発というケースが多いのではないでしょうか?
また、カーブやスライダーを無理に曲げようとすると、投球フォームが崩れ、それがケガの誘発につながる心配もあります。
そこで、おすすめするのが、打者の近くでわずかに動く「ツーシーム」です。
ツーシームが有効な理由
変化球については、小学生のリーグでは使用が禁止されているケースがあります。
ですから、所属リーグの投球ルールにしたがってください。
リトルリーグや中学生の野球では、変化球が許可されていると思いますが、変化球の習得には時間がかかります。
その点で、ツーシームは直球の投げ方のままで投球できますから、最初に覚える変化球としておすすめします。
ツーシームは、アメリカではムービングボールとも呼ばれています。
特徴は、ホームベース付近で左右に微妙に動いたり、わずかに沈みます。
ですから、バッターがストレートのタイミングに合わせてスイングしても、ほんの少しだけ芯を外せるボールになります。
ボール半個分でも芯を外すことができれば、先ほど説明したように、弱いゴロやポップフライで打ち取れる確率が高まります。
ツーシームの握りは、人差し指と中指をボールの縫い目が狭くなっているラインに沿ってかけます。
親指は、人差し指と中指の間から少し外にずらし、縫い目のない部分で支えます。
投げ方は、フォーシームのストレートと同じです。
ただ、ツーシームは縫い目に沿って握るので、指先にかかりにくくなります。ですから、ボールに回転をかける指先の意識が大切です。
また、フォーシームのストレートより、少しだけバッター寄りでリリースする意識が、ツーシーム習得のコツになります。
なお、ボールの回転数を上げる強いリリースの方法については、「速いだけじゃ打ち取れない!打者を驚かせる球威の出し方」を参考にしてください。
指先の感覚をつかむ
ツーシームは、微妙な変化でバットの芯を外し、打ち損じを誘うボールです。
ボールが一回転する間に、打者には縫い目が2回見えます。フォーシームは、縫い目が規則的に空気抵抗を受けますが、ツーシームは不規則になります。
それが、微妙な変化につながるのです。
ただ、フォーシームとは異なる指のかかり方になりますから、どんな変化をするのか確認をしてみましょう。
また、特に小中学生の場合は、バットの芯を外せるほどボールが動かない可能性もあります。その場合は、回転数の少ない、打ちごろのストレートになってしまいます。
ですから、指先をしっかり縫い目にかけて、回転数を意識した投球が求められます。
その際、指先の力加減を変えてみましょう。
2本の指に均等に力をかけたり、どちらかの指に強めに力をかけてみます。
例えば、人差し指に少し強めに力を加えると、シュート回転したボールになりますし、中指に力を加えると、スライダー回転になります。
それを繰り返すことで、自分のボールの軌道がわかってきます。すると、試合でもある程度変化を予測して投げることができるようになります。
まずは、投球フォームをチェックしながら、短い距離のキャッチボールからはじめてみましょう。
プロ野球投手の工夫
ここからは、少し視点を変えてみます。
一流と言われる選手は、基本を大切にしながら、その技術をベースに工夫をしています。
その工夫が、一流選手の持ち玉になっています。
例えば、ダルビッシュ有投手の変化球に対する研究心の高さは、とても有名ですね。
常に進化し続けているダルビッシュ投手ですから、今の握りは変わっているかもしれませんが、ツーシームの握りに工夫をしていました。
それは、基本形のツーシームの握りより少し指の間隔を広げ、縫い目の外側に指をかける投げ方です。
そうすると、球の回転数が上がります。すると、打者の目には、一瞬ホップしたように見えてから沈むように感じるそうです。
また、メジャーで通算355勝をあげたグレッグ・マダックス投手は、予測不能なストレートを投げていました。
彼は、ボールを握る時に、縫い目のどこに指をかけるかを毎回変えていました。
すると、毎回ボールの動き方が違うので、打者はまったく予測がつかなかったと言います。
これは、コントロールが良いからこそできる投球術といえます。
バットの芯を外す投球練習
バットの芯を外す投球術のベースになるものは、やはりコントロールです。
コントロールを安定させるためには、何度もお伝えしているように、理にかなった投球フォームの習得が欠かせません。
ただ、最近では気軽にキャッチボールできる環境が少なくなりました。
ですから平日は、投球動作のフェイズごとのポイントを「速い球が投げられる!下半身から伝わる力を最大限に活かす投球フォームのつくり方」で確認しながら、シャドーピッチングをするようにしましょう。
また、コントロールを安定させるバランス感覚を身につけるシャドーピッチングについては、「コントロールを安定させたい投手へ!下半身の使い方と効果的3つのトレーニングを解説」を確認してみてください。
それでは、今回は週末にチーム練習で行ってほしい練習法を紹介します。
この練習は、一流のプロの投手も行っている練習法です。ぜひチャレンジしてみてください。
3球で打ち取る配球で投げる
ところで、週末の練習では、どのような投球練習をしていますか?
コーチがしっかり見て、具体的なアドバイスを得ながら練習ができているでしょうか?
小学生、中学生の時から、目的意識を持って練習する習慣を身につけてほしいと思います。
そこでおすすめするのが、「3球で打ち取る投球練習」です。
まず、投球練習の前に、キャッチャーと相談して、「3球で打ち取る配球」を3パターン考えます。パターンが思い浮かばないようなら、次の配球パターンを参考にしてください。
【配球例1】
- 右打者の外角寄りにストレート
- 外角低めにツーシーム(スライダー)
- 内角高めにストレート
【配球例2】
- 右打者の外角低めにツーシーム(スライダー)
- 内角高めにストレート
- 外角低めにストレート
【配球例3】
- 右打者の内角低めにストレート
- 外角低めにツーシーム(スライダー)
- 外角低めにストレート
このような配球パターンをつくり、配球通りに3球投げることができたら1アウトにします。ミスしたら、その時点で次の打者として、1球目から投げます。
右打者、左打者と投げわけてみましょう。
このように練習すると、緊張感が高まり試合感覚で集中できるはずです。アウトがいくつ連続で取れるか、挑戦してみてください。
ただし、投球数は年齢や体力レベルで変える必要があります。ピッチスマートガイドを参考に決めるようにしてください。
ここで、もうひとつアメリカの研究結果をお話しますね。
これは、2015年から2019年までのMLB公式試合で、のべ1,108人の投手のデータを分析した結果です。
興味深いのは、ボールカウントが増加すると、リリーススピードとボールの回転数が減少し、逆にストライクカウントが増加すると、リリーススピードとボールの回転数が増加する傾向が見られました。
また、ボールカウントが増えるにつれて、リリースポイントは低く、前方に移動する傾向がありました。
もうひとつの特徴は、ストライクカウントが増えるにつれて、リリースポイントが変化することです。
右投手の場合、投手から見て左側にリリースポイントが移動する傾向があることもわかりました。
これは、投手がより力を込めて投球できるため、フォームが変化している可能性が考えられます。
これらは、投手が無意識に行っていることですが、お子様を指導する上で参考になると思い紹介しました。
意識してゴロを打たせる
打ち気の打者のバットの芯を外し、1球で打たせて取れれば、まさに理想的なピッチングですね。
もちろん、簡単な技術ではありません。
ですが、シート打撃や練習試合でバッターと対戦するときに、意識した投球でゴロを打たせる練習をしてみましょう。
内角をつまらせたり、外角を引っかけさせるように意識して投げます。
さらに、どの方向にゴロを打たせるのかも、こだわって投球してみましょう。
その結果を確認しながら、少しずつ打者のバットの芯を外す投球術を身につけていってください。
今回のまとめ
いかがでしたか?
今回は、「打者のバットの芯を外す投球術」について解説しました。
特にお伝えしたかったのは、目的意識を持った練習の積み重ねが、打者のバットの芯を外す投球につながるということです。
そのために、3球で打ち取る配球で投球練習をしてください。
このような練習を今までしていないのであれば、最初は思うように投げられないと思います。でも、繰り返すことでコントロールはよくなります。早い段階から取り組んでください。
併せて、ツーシームの投球練習も行って、狙ってゴロを打たせられる投手を目指してください。
投球術の向上には時間が必要です。
ですが、早い段階から基本となる投球フォームをしっかりと身につけながら、紹介した練習を重ねていってください。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、お楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡ください。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
石橋秀幸著、レベルアップする!野球 科学・技術・練習、西東社
石橋秀幸著、マー君をめざす最新トレーニング、廣済堂出版
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Hashimoto Y, Nakata H. Performance-environment mutual flow model using big data on baseball pitchers. Front Sports Act Living. 2022 Nov 18;4:967088. doi: 10.3389/fspor.2022.967088. PMID: 36465584; PMCID: PMC9715958.
Influence of changes in lower leg movements during baseball
pitching motions on the timing control of batter
Hiroyuki Tomari1), Sachi Ikudome2), Shiro Mori2), Chiharu Suzuki3),
Masahiro Kageyama3), Masafumi Fujii2), Akira Maeda2), Hiroki Nakamoto2)
1) Fukuoka Hibiki Shinkin Bank
2) National Institute of Fitness and Sports in Kanoya
3) Graduate School, National Institute of Fitness and Sports in Kanoya
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