【要注意】野球で「切り替えろ!」が逆効果になる脳の仕組み|ミスをひきづる本当の理由

今回お伝えする内容です
【要注意】野球で「切り替えろ!」が逆効果になる脳の仕組み|ミスをひきづる本当の理由
「どうして試合になるとミスを連発してしまうんだろう…」
「たった一度のミスで、集中力がプツリと切れてしまうのはなぜ?」
お子さんのメンタルで、こんなお悩みをお持ちではありませんか?
野球は、メンタルのスポーツと言われることがあります。試合でミスをしたお子さんが、見るからに落ち込んでいると、つい「何やってるの!」と言いたくなりますよね。
「切り替えて!」と、強い口調で叱ってしまうことがあったかもしれません。
実はそれは、精神論では解決しません。
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
最新の脳科学やスポーツ心理学の研究によって、わかってきたことがあります。
お子さんの脳は失敗を感知すると、危険な目にあったときのように警報を鳴らします。その結果、無意識のうちに失敗を回避しようとして、体にブレーキをかける。
つまり、脳が”防御モード”に入ってしまうんです。
では、お子さんの防御モードを解除するためには、何が必要なのでしょうか?
ということで今回は、私の35年以上の研究と指導の現場で見つけた脳の仕組みを、科学的に解き明かしていきます。
お子さんを「ミスからすぐに立ち直る、たくましい子」に変えるための、具体的な方法です。
メンタルが弱いと感じるお子さんをお持ちの方に、今日から活かせる内容をお伝えします。
ぜひ、最後までお付き合いください。
ミスを引きずる子の脳内で起きているのは?
見逃し三振、守備での凡ミス。
ミスをしたときの大人からの叱責は、脳の警報をさらに大きくします。お子さんは、それを”脅威”として受け取り萎縮してしまいます。
これまで、ミスを引きずるのは、本人の「気持ちの弱さ」だと考えられがちでした。しかし、それは科学的な事実ではありません。
スウェーデンのウメオ大学などの研究チームが明らかにした報告があります。注目したいのは、ネガティブな感情が生まれたときの感情の扱い方。
感情調整の戦略の違いが、その後のメンタルヘルスに大きく影響するということです。
そのカギとなる脳の働きを確認しましょう。
ミスを引きずらない2つのカギ
野球にはミスがつきものです。
お子さんがミスをしたときの定番が「切り替えて」や「どんまい」という声かけ。ただそう言われても、すぐには切り替えられないこともあります。
やり方を間違えると、お子さんの脳に大きな負担がかかってしまいます。
そこでカギとなるのが、脳の2つの働きです。
感情のフタ(感情抑制):
ミスした後の悔しさや怒りといったネガティブな感情を、表に出さないように無理に抑え込む。
これは、脳がエネルギーを無駄遣いしてしまう「我慢モード」のようなものです。
考え方のチェンジ(認知的再評価):
ミスの意味を「次への学びのチャンス」や「成長のヒント」としてとらえ直す。
これが、心を回復させる「立ち直る脳」の働きです。研究チームの報告にこうあります(Regbornら, 2025)。
「感情のフタ」をよく使う選手ほど、心の健康状態が悪くなりやすい(関連の強さを示す数値 β=0.34)。
感情を無理に抑え込むことは、集中力や判断力に必要なエネルギーを大量に消費します。その結果、元気がなくなったり、プレーに集中できなくなる。そんな悪循環に陥ります。
つまり、感情にフタをするのは、脳のエネルギーを無駄にする”もったいない”作戦なんです。
なお、子どもが感じているプレッシャーの正体について、子どもが野球で感じるプレッシャーを理解し適切にサポートする方法で解説しています。

”立ち直る脳”へ切り替えるためのスイッチ
では、どうすればお子さんの脳を「防御モード」から「立ち直るモード」へ切り替えられるのでしょうか?
その答えこそが、「認知的再評価(CR)」を促すこと。ウメオ大学の研究では、感情抑制とは対照的なデータも示されています。
ミスを学びの機会としてとらえ直す「認知的再評価」を多く行う選手は、精神的な健康状態が良好でした。これは、脳のエネルギーを前向きな力に変える効率的な戦略です。
実は、この「認知的再評価」にスイッチを入れるカギが、指導者や親の関わり方なんです。Zhang(ジャン)らのコーチングに関する研究には、次のように記されています。
「指導者が”自主性を尊重する”関わり方をすることで、子どもの中に驚くべきポジティブな連鎖が生まれる」
具体的には、以下の連鎖が示されました。
- 子どもの「精神的な回復力」が向上する
- その結果「物事を前向きにとらえる力」が育つ
- 最終的に、選手としての成長につながる
これは、親御さんにとってもとても、重要なヒントですね。
お子さんの考えや感情を尊重し、自ら考える機会を与える。そうすることで、お子さんはミスを乗り越える力を身につけられるんです。
物事をポジティブにとらえ直すことができるようになり、結果として大きな成長をもたらします。
ちなみに、お子さんの自主性を尊重する方法を野球をする子どもの自主性と自立心を育むには?にまとめました。

お子さんのために3つのしないこと
「自主性を尊重するというのはわかるけど、具体的にどうすればいいの?」
そう思っているかもしれません。しかし、とてもシンプルなんです。
最新の研究が示すのは、過度な関与でもなく、完全な放任でもない関わり方が最適だということです。
そう聞くと、何か新しいことをする必要があると思うかもしれません。でも実は、今までついやってしまっていたことを、”あえてしない”と決めるだけでいいんです。
今日からすぐに実践できる3つの「しないこと」をご紹介します。
ミス直後に「技術指導」をしない:
ミスした直後に「今のフォームは…」「もっと腰を落とさないと!」といった技術的なアドバイスをするのは逆効果です。
お子さんは、すでにプレッシャーを感じています。そして脳は「防御モード」に入ろうとしています。ミス直後の指導は、脳を感情抑制に追い込む行為そのものなんです。
その代わりに:
まずは、黙って見守りましょう。声をかけるとしても、「大丈夫、次いこう」といった短い励ましで十分です。
お子さんが自分でミスを消化し、立ち直るための時間と空間を与えてあげることが最も重要です。
結果(勝ち負け)の話をしない:
「あそこで点が取れていれば…」「次の試合は絶対に勝とう」など、結果にこだわる会話は避けましょう。こうした言葉は、ミスを許容しない「エゴの空気」を生み出します(Gaoらのレビューより)。
この空気は、お子さんにミスを「破滅的な失敗」と感じさせてしまいます。
その代わりに:
努力や挑戦した姿勢など、結果とは関係ない”プロセス”を具体的に褒めましょう。すると、ミスを恐れずにプレーできる心が育まれます。
「あの場面、最後までよく走ったね」「思い切って振ったのが良かったよ」。
こうすることで、ミスを恐れずにプレーできる心が育ちます。この環境こそ、ミスを学びととらえ直す「認知的再評価」を促します。
過度な「先回り」や「指示」をしない:
「次はこう動くんだよ」などと、親がすべてを与えてしまう”管理的スタイル”は、お子さんの自主性を奪います。
同時に、精神的な回復力を育む貴重な機会を奪ってしまいます。
その代わりに:
お子さん自身に考えさせる「質問」を投げかけましょう。問いかけこそが、お子さん自身の頭で考え、ミスの意味をとらえ直すきっかけになります。
「今のプレー、どう感じた?」「次はどうすればもっと良くなると思う?」。
これらを試すことで、お子さんの脳は無駄なエネルギーを消費せずにすみます。認知的再評価の神経回路を自然に活性化させることができるようになるのです。
また、お子さんが自分で考え立ち直る力を育てたい方には、【大谷翔平の野球ノートに学ぶ】野球が伸びる子の共通点 _ 親が無意識にしている間違いが参考になるはずです。

今回のまとめ
ミスを引きずるのは、脳が示す自然な防御反応です。
親の関わり方で、ミスを「学び」と「成長」の機会に変えることができます。
指示する代わりに質問を投げかける。その小さな変化がお子さんの自主性を育み、自らの力で困難を乗り越える「立ち直る脳」を育てます。
お子さんが、のびのびとプレーできるよう、”学びのスイッチ”を入れるサポートを心がけていきましょう。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、さらなる野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球上達に関するお悩みや疑問点がありましたら、いつでもご連絡くださいね。
あなたからのご連絡をお待ちしています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
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