【まだ投げ込む?】球速が伸びないとき、成長期の子どもに起きていること

【まだ投げ込む?】球速が伸びないとき、成長期の子どもに起きていること
最近、背が伸びている。まだまだヒョロっとしているけど。
ただ、投げる球が、前ほど来ていない気がする…
体が大きくなったんだから、もっと強い球が投げられるはずでは?
そんな質問がありました。
こういうとき、「どこかフォームに悪いところがあるのではないか?」と思って、直すことを考える方も少なくありません。
じつは、12歳から13歳ごろに、球速の伸びがゆるやかになる時期があります(Tsutsui, 2024)。
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
身長が伸びはじめた時期から1年ほどは、体がケガをしやすい時期でもあります。
それを知らずに、感覚を頼りにフォームや練習量を見直すと、かえって体に負担をかけてしまうことがあります。
そこで今回は、成長期に伸び悩む理由やケガの予防について、私の35年以上の研究と指導経験からお話しします。
判断のよりどころになるのは、お子さんの体の状態です。
この内容を知れば、痛みや違和感、疲れたときの動きを見て、練習量を見直せるようになります。そして、お子さんが、体の成長に見合った球を投げられるようにサポートできるようになります。
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球速が伸び悩む理由と、直す前に見ること
体が大きくなったのに球が来ない。
成長期には、実際にそういうことが起こります。困るのは、それを直すべきか待つべきかが、判断できないことです。
正しい知識がなければ、お子さんの力を伸ばすことができません。それだけでなく、ケガのリスクが高まる可能性があります。
ここからは、球速が伸び悩む理由と、体の中で起きていることをお話しします。
そのうえで、直すと決める前に見ておきたい、大切なポイントをお伝えします。
背が伸びているのに球速が伸び悩む理由
「前ほど球が来ない」という感覚は、思い込みではありません。
日本の少年野球選手235人を追いかけた研究があります(Tsutsui, 2024)。6歳から14歳まで、のべ557回の測定を行っています。
調査したのは次の3つです。
- 投げる球の速さ
- スイングの速さ
- 体のバランス
わかったのは、球の速さとスイングの速さは、12歳から13歳ごろから伸びがゆるやかになるということです。
体のバランス力にいたっては、同じ時期に一時的にガクンと下がってしまうことも明らかになりました。
ただ、球速が落ちたわけではないので、そこは間違えないでください。「これまでの勢いのように伸びなくなる」ということです。
成長期は、そういう変化が起きている時期なんです。また、この時期は、投げる動きそのものも変わっていきます。
アメリカの少年投手51人を、最大7年間追いかけた研究があります(Fleisig, 2018)。
投げるときの体の動きは、9歳から13歳の間で年ごとの変化が最も大きくなっていました。それには、踏み出す足の幅や、上半身と下半身のひねりの差なども含まれます。
腕も脚も去年より長くなっているのですから、動きが変わるのは自然なことです。
では、その動きの変化と球の伸び悩みが、直接どうつながっているのか?
お子さんも、「なんか感覚が違う」と感じていると思います。何とかしてあげたいですよね。
ただ、そこは専門家でなければ判断が難しいところです。経験や感覚ではなく、実際に動作を分析することで、動きの改善ポイントを知ることができます。
次は、成長期の体の中で何が起きているのかを見ていきましょう。
なお、体の急な成長に、脳や筋肉の動きが追いつかず、ぎこちなくなってしまう理由を関連記事で紹介しています。
関連記事:【知っていますか?】野球がうまくならない本当の理由…野球の練習“だけ”が危険なワケ

成長期は、体の変化に追いついていく途中
身長が伸びる時期は、骨が伸びます。
ただ、筋力が同時につくわけではありません。パワーが追いつくのは、まだあとです。
複数のスポーツを対象にした、海外の研究報告があります(Retzepis, 2025)。
身長が一番伸びる時期の前後で、筋力やパワーの伸びが一時的に足踏みすることが確認されています。
海外の研究者は、これを「思春期特有のぎこちなさ」と呼んでいます。日本では、「クラムジー」ということが多いです。
これは、手や脚が急に長くなった体を、本人がまだ乗りこなせていない状態です。
ここで、さきほどの日本の少年野球選手の事例と照らし合わせてみましょう。
球の速さの伸びがゆるやかになるのは、12歳から13歳ごろでした(Tsutsui, 2024)。体が大きくなる時期と、球の伸びが落ち着く時期が重なることがわかります。
骨が先に伸びて、筋力があとから追いつく。その間だけ、力の出し方が足踏みする。だから、「前ほど球が来ない」と感じてしまうわけです。
また、身長が急激に伸びる時期は、骨が急に成長する一方で、筋肉や靭帯の成長が追いついていません。そのため、体がケガをしやすい時期でもあるのです。
ですから、この時期に急いでフォームを直すかどうかは、慎重に考えるべきだと思います。
練習量を増やすことも同じです。体が変わっている最中に負荷を足すと、狙いと逆の結果になることがあります。
では、親御さんは何を見ていればいいのでしょうか?
ちなみに、身長の伸びが最も速い時期に練習量を増やすと、かえって逆効果になりやすいことを解説した関連記事も参考にしてください。
関連記事:【まだ信じますか?】たくさん練習すれば野球が上手くなる!それは成長期には通用しません

直す前に見ておきたい3つのこと
必要なのは、直すと決める前の観察です。
次の3つを、しばらく見てください。
①痛み
投げているとき、投げたあとに痛みがあるかどうかです。
お子さんは試合に出たくて、痛みを言わないことがあります。「どこか痛い?」ではなく「今日、体にいつもと違う感じや、張っているところはある?」と聞いてみてください。
②投球後の違和感
痛みとまではいかない、いつもと違う感じです。翌朝の腕の重さも入ります。
③疲れたときの動きの変化
球数が増えると、動きが変わることがあります。試合の後半や、練習の終わりごろを、最初の動きと見比べてください。
異常があれば、まず投球数と練習の負荷を見直しましょう。そのうえで、医療の専門家に相談してください。
成長期の体の評価を整理した専門家のレポートがあります。
暦の年齢ではなく、体の育ち具合に合わせて練習量を決めるという考え方が、とても大切です。
また、痛みを訴えたときに休ませるべきかを、感情ではなく科学的な指標で判断する方法をまとめた関連記事も確認してください。
関連記事:【最新研究】野球肘・成長痛の危険度を5分で判定する3つの科学的指標

今回のまとめ
今回は、球の速さなど、一時的に伸びがゆるやかになる時期があることを知りました。
今は、伸びた体に感覚が追いついていく途中です。
ですから、急がなくて大丈夫です。
今回お伝えした内容を参考にしてください。
判断に迷うときは、体の状態とフォームを合わせてチェックしますので、いつでもご連絡ください。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
次回も、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
1. The Effect of Peak Height Velocity on Strength and Power Development of Young Athletes: A Scoping Review(PMC12101259)
2. Developmental patterns of athletic performance and physical fitness in youth baseball players: A longitudinal analysis(DOI: 10.1080/02640414.2024.2416777)
3. Growth and Maturation Assessment in Youth Sport: Balancing Benefits and Risks(PMC13481284)
4. Effects of Sport Specialization on Pitching Biomechanics in Adolescent Baseball Pitchers(PMC12672295)
5. Characteristics of Relative Age Effects and Anthropometric Data in Japanese Recreational and Elite Male Junior Baseball Players(PMC6265376)
6. Changes in Youth Baseball Pitching Biomechanics: A 7-Year Longitudinal Study(DOI: 10.1177/0363546517732034)
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